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ChiBiz Inside no.002

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●世界最大の偽物市場から学ぶべきこと
●中国ビジネスは、この一言でダメになる

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【中国見聞記】世界最大の偽物市場から学ぶべきこと

先週、世界最大といわれる深センの携帯電話街「華強北路」に行ってみた。あるわあるわ、見渡す限り携帯電話や家電の店舗が軒を連ねており、平日の夕方にも関わらず人でごった返している。

通りは、深セン繁華街の華強北路両側に面していて綺麗に舗装されていた。中国の主要都市では、地下鉄工事が盛んに行われていて、至るところで道路が掘り返されている。何と今年中に地下鉄を11本程開通させるのだとか。こちらでは、開通の速度に地図の更新が間に合わないという珍しい事態が発生している。Google mapさえも追いつけない。そんなわけで、地元の人同士が「もう開通した」「いや開通していない」と言い争っていたりする。それほど中国の変化は激しいのである。

人の変化も激しい。最近気づいたのだが、唾を吐く人は極端に減り、ちゃんと行列に並ぶ人がすごく増えた。4~5年前とは大違いである。深センでは、ユニバーシアードの開催が予定されているので、当局が厳しく市民を指導、監視しているらしい。

ただ、偽物の横行ぶりは健在である。携帯電話街でも、本物に混じって多量の偽物が売られている。いや偽物に混じって少量の本物が売られている、と言った方が正しいだろう。NokiaならぬNokai、SonyのようだがSomy、iphoneではなくephone・・・。そんなわけで、現地の人たちはこの街を深センの「偽的東西(ジャーダトンシー)=偽物市場」と呼ぶ。

面白いのは、偽物は偽物として売られていることだ。現地の人に偽物を本物と偽って売ると、後で仕返しされるからだとか。偽物市場にも掟や秩序はあるらしい。そして、同じようなソニー・エリクソン(風?)の携帯電話が50元(約600円)から5000元(約6万円)で売られている。私にはどれも同じに見えて違いが分からない。そこで中国のパートナーに相談してみると、「使えるなら安い方がいいんじゃない?正規品を買ってもどうせ1年でバージョンアップするんだし」とのことだった。日本だと偽物を使うことにある種の後ろめたさを感じるけど、こちらではそれは全くないようだ。実際、中国の法律では、偽物を製造、販売した人はもちろん有罪だが、利用者はお咎めなしなのだという。

偽物を求めるのは現地の人ばかりではない。目立つのはアフリカ人の姿だ。聞くと、ここで携帯電話を仕入れて持ち帰り、母国で売るのだそうだ。母国ではブランド名にくわしい人は皆無だから、安ければ本物でも偽物でも全くかまわないのだという。こうした需要がある限り、偽物はなくならないのだろう。

ただ、そんな偽物も安さだけで競っているわけではなさそうだ。実際、うなるような工夫が盛り込まれていたりする。ブランド名やデザインは「パクり」でも、中身は立派にオリジナルだったりするのだ。私が一番欲しかったのは、プロジェクター付きの携帯電話。ちゃんと使えるものならぜひ買ってみたい。ほかに、ペンシル型携帯や髭剃り付携帯などというものまである。まさしくイノベーションだ。

そうであれば、デザインやブランド名を似せたりせずに、堂々と自社ブランドで売ればいいのにと、ふと思う。つまり、中国は「真似方」を間違っているのではないかと。

そもそも進んだ製品や売れている商品をお手本にし、それを模倣することは、長い歴史を通じて世界中で営々と続けられてきたことだ。日本市場でも、ある製品がヒットすれば、すぐに似たような製品が登場する。中国のようにブランド名もデザインも「もろパクり」ということはさすがにないけれど。

こんなジョークがある。「中国は日本の真似ばかりする。これまで不法に真似てきた技術を全て返してもらおう」と日本人が言うと、中国人曰く「では、漢字を全て中国に返してもらおう」と。

要するに、いくら「けしからん」と言っても偽物の問題は解決しないということだ。模倣行為を非難するより現実的に、真似られないモノを開発するか、真似られる前に投資資金を回収するスキームを考えるべきだと思う。

その方法の一つとして、中国企業と提携して日本側が先に開発費用をもらってしまうという仕組みがある。このスキームが成立すれば、提携先の中国企業は何とかして真似られないよう、真似られる前に投資を回収するよう努力するだろう。実際に、そのような投資スキームを採用する企業も現れ始めた。欧米系の企業に多いようだ。ところが多くの日本企業は、「市場開拓は自力で」という自前主義が強く、このような仕組みをなかなか導入しようとはしない。

こうした自前主義の企業が失敗すると、ときとして「それはあの国がおかしいからだ」と言い訳したりする。それはお門違いというものだろう。なぜなら中国企業ですら自社製品の模造品に手を焼いているからだ。その現実を受け入れ、それをどう克服するべきかを考えたうえで、最適な進出法を考えるべきなのだと思う。★
(山田太郎)

【失敗の教訓】中国ビジネスは、この一言でダメになる

中国でビジネスをする際、日本では当たり前の営業トークなのだが、言うとうまくいかなくなる一言というのがあるようだ。これは私が体験した実話で、その場合、それは「どのような製品にいたしましょうか、お客様の好みや状況はどのようなものですか」というものだった。

こう尋ねるのは、顧客志向の日本企業にとっては普通のこと。相手の要件がしっかり決まらないと受注どころか見積もできない機械メーカやエンジニアリングメーカからすれば、当たり前の質問である。

しかし、こう聞かれると中国企業の担当者はきっとこう返すだろう。「まず、一番小さいのを持ってきてください。試してみますから。なんなら中ぐら
いのものでも。とにかく、何でもいいので早く持ってきてください」すると日本企業はこう答える。「お客様、当社には様々な種類の機械がありまして、お客様の用途に応じて見積をさせていただいております。用途や仕様を決めていただけないと製品をご提供することが難しいのですが」

そこで中国企業は本音を漏らし始める。「何も決まっていないし、こちらも詳しくは分からないのです。だから製品を提供してください。すぐ検討しますから。できたら無償で貸し出しをしてもらえませんか」そう言われた日本企業は不信感を募らせる。「この客は買う気がないな。ひょっとすると、借りてタダでコピーする気かも。なるほど、これが中国のやり方か」

そうは露骨に言えないので、とりあえずこう答えておく。「日本に持ち帰って本社と検討してきます」それを最後に、日本側からの連絡はなくなる。

1週間くらい経つと、中国企業から催促が来る。「ずっとお待ちしているのですが。検討はしていただけましたか」けれども、日本側ははかばかしい返事をしない。さらに2週間経過したころ、中国側から次の連絡が入る。「別の会社からとりあえず1台、1億円で機械を購入しました。これから、全社で20台をその会社から調達することも決めました。本当は、御社の機械が一番良いと考えていたのですが、売っていただけないものと思いまして、諦めて他社のものにしました」

そこで「本当に買う気があったのか」と気づいてもあとの祭り。この中国企業は最初から買う気満々、やる気満々だったのだ。しかし日本企業はどうも相手が中国企業だと、不必要な腹の探り合いをしたり、最初から相手を疑う姿勢をみせたりしてしまいがちだ。それが中国企業の買う気を失わせてしまう。

日本企業が仕様を基本とする完全個別受注型のビジネスに慣れ過ぎてしまっているということもあるのかもしれない。本社に間違った見積を出さないよう慎重になり過ぎるあまり、「相手に売る」という一番大切なことがおろそかになってしまう。同じような過ちが、中国企業を相手にする商談では何度ともなく繰り返されていると聞く。

そもそも仕様を固めようという姿勢が間違っていたりする。それを聞き出そうにも、相手には応えるだけの専門知識も経験もなかったりするからだ。中国には、日本企業も脱帽する、極めて高い技術と開発能力を備えた企業がいくつもある。その一方で、R&Dの機能をまったく備えず、その分野でビジネスをしていながら「エンジニアリングとは何ぞや」ということをほとんど理解していない企業も数多くあるのだ。大手中国企業でも「図面から加工はできても仕様から図面は起こせない」という企業はザラにある。

最近、北京と上海間を結ぶ中国新幹線の話題に注目が集まっている。中国が新幹線の特許をアメリカで特許申請するとのことだ。しかし、私は知っている。自国のエンジニアリングをもっとも信用していないのは中国人自身だったりすることを。

先日、私が「日本人一番乗りで北京・上海新幹線に乗車したい」と言ったら、本気で中国人パートナーに止められた。「何と愚かなこと、今、あなたに死なれたら困ります」と。「車両は海外の技術を使っていたとしても、中国人が作った線路を走るのですよ。危ないではないですか。私は半年間、絶対乗りません」とのこと。それぐらい自国のエンジニアリングに関しては、信頼していなかったりするのだ。だから私ごときが、中国の2つの有力大学で設計開発等の担当教官をやっていられるのかもしれないが。

次回は、こんな状況の国で、いかに商売を展開すべきかについて論じてみたい。★
(山田太郎)