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ChiBiz Inside no.022

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>>INDEX

●中国人に売るためには
●上海で不動産を借りるには

>>CONTENTS

中国人に売るためには

「磁気ネックレスが飛ぶように売れちゃって」
中国人観光客が日本のツアーに来て、移動のバスの中で日本の商品を次々に買っていく。なんと、この1回のツアーで100万円も儲かったとのこと。健康にいいという磁気ネックレスが1個1万円。これが中国人にとって高いのか安いのか分からないが、誰かが買い始めるとどんどん売れていく。

買い尽くす中国人。中国人御用達の銀聯カードは、銀座のどこの店でも使えるようになった。まさに、経済力みなぎる中国人が日本でお土産をなんでも買っていく光景だ。

不動産が売れた。別荘が売れた。車が売れた。しかも新車の高級車。週刊誌はこう書く。中国人に日本の土地をどんどん買われていくのは日本の防衛上の問題だと。いずれにせよ中国のバイイング・パワーはすさまじい。

めったに海外に出られない中国人観光客は、どんな天候でもスケジュールを変えることがない。だから、地方の観光土産店や旅館は中国人観光客を重宝しているという。「雨の日でも、雪の日でも必ず来ていただけますから」とは、富士山五合目の観光土産店の店主のコメント。日本人相手であれば、雨風の日は閑古鳥が鳴く。でも、中国人は必ず来る。天気はともかく、「富士山に来た」という事実に満足するのだという。そして、富士山土産をどっさり買っていく。

そんな話を聞いて考えた。私は度々、中国人を日本に迎え入れている。そんな彼らに色々売ってみようかと。どれだけたくさん売れるのだろう。そんな期待に胸を膨らませながら色々なモノを売ってみた。

東京で下町の店を貸し切って、中国人観光客向けに取りそろえたのは、「日本風のものが喜ばれる」ということで、着物、簪、櫛、扇子、日本人形。中国のお茶よりも日本のお茶の方がおいしいという話も聞いていたので、高級な日本茶。南部鉄瓶は有名らしいからこれも取りそろえる、など様々。店は、なんだか成田空港のスーベニアショップの様相となってきた。これで、一攫千金。どんどん売れたらいい利益になるなと、ほくそ笑むのであった。

いよいよ中国人観光客の入場。今回の客人は、中国中堅企業の社長さん達20名ほどの日本研修旅行の一団である。軽くお茶を振る舞い、さて様々に並ぶ日本のお土産を売り込むのだが、これが全然売れない。色々手に取ってみているのだが、なかなか買おうとしない。結局売れたのは、南部鉄瓶4つだけ。やっぱり南部鉄瓶は強い。でも、どうしてその他のモノは売れ残ってしまったのだろう。磁気マグネットは飛ぶように売れると話を聞いていたのだが。何がいけなかったのか。

中国人バイヤーのプロに聞いてみた。要点をまとめると、以下のようなことらしい。

単純に並べて売れるものは、空気清浄機などの日本製小型家電など。鉄瓶は富裕層にコレクターが多いから売れる。男性が相手であれば、「夜元気になる」系のサプリメントは、サンプル渡して効果があったらすぐに売れる。前の日にサンプルを渡せば、次の日、箱ごとたくさん買っていく。

どうやら、からだにいいモノ、おいしいものなど、すぐに体感できるものの方が重宝されるようだ。

そして、売る時に「おー!」って思わせる仕掛けがあると売れる傾向がある。陶器だと、作家もので、将来値が上がる可能性があるみたいに思わせるとか。ストーリーが大切だ。

日本のお茶は確かに人気があるけど、お茶パックで売る方がいい。以前、日本茶を上海伊勢丹で売ったとき、「パックで売っているものはないの」と何人もの中国人に聞かれた。洗いながら茶葉を捨てるのが面倒ということだ。パッケージを日本の和紙とかを使ったものにしてあげるとギフト商材になるからさらにいい。お抹茶も、ちゃんと中国人に受ける商材に仕立てればギフトとしても家使いとしても売れる。

つまりは、ただ並べて置いても売れるという日本商材はある程度決まっていて、大多数のものは何かしら工夫をして販売しないと売れないということらしい。

値札を工夫してみたら、かえって売れなくなったという話も聞いた。

中国人はとにかく値切る。「半値8掛け2割引き」という感じに値切り倒してくる。日本の商品が高いという思いがあるのだろうか。ではということで、最初から安くしているとアピールするために、定価を書いた札に×を付けて、3割引き、4割引きの値段を明記。これで、十分安いしお値打ちものとして売れるだろうと期待した。

ところが売れない。中国人の価値観では「自ら値引きするものは、きっと売れ残りの悪いモノではないか」と疑ってしまうようだ。上手く売るには、まず定価を提示して、相手に値切られたら「あなただけに特別な価格でお売りします」とばかりに、値切りに応じるのがいいようだ。まさに「For You」で個人的に特別扱いされたという優越感を喜ぶ中国人が多いという。だから、面倒でも、値切られるように定価と売価をコントロールして対応する必要がある。

商材をさらしておけばなんでも売れるわけではない。磁気ネックレスが売れたとか、南部鉄瓶が売れたとかいう話は、たくさんの失敗のなかの数少ない成功例と考えた方がよさそうだ。最近、中国人に色々な商材を売ろうと、中国のネット販売サイトに日本の商材を掲載するサービスが目立つ。「30万人が見ている」「100万人が毎日購買している」といった広告文句が踊る。

しかし、著名中国販売サイトを使ってみたものの「まったく売れなかった」「多額の手数料を払い在庫も没収されてえらい目にあった」といった類の話も多い。よく考えてみれば、当然である。日本では、どんな素晴らしいネット販売サイトに掲載しても、きちっとしたマーケティング、セリングをしなければ商品は売れない。中国だって同じなのである。

中国人の心をつかみ、商材に合わせたストーリーを作って売り込んでいく。試して売れなければ「何故売れなかったのか」と反省し、顧客の声を素直に聞き、さらに改善して売っていく。このきめの細かい繰り返しがなければ、売れない。それは中国人でも日本人でも変わらないということだ。★
(山田太郎)

上海で不動産を借りるには

「これ新築物件ですよね?」

「こんな良いデモノはないですよ」とばかりに上海の不動産業者にそそのかされ、勇んで見に行った物件は、新築との触れ込みであったが、水道からは錆びた赤い水がでてきた。壁からは化学性の異臭が激しく発せられている。おそらくアセトアルデヒドの臭いだと思うが、そこに長くはいられない状況だ。

サッシは大丈夫のようで、隙間風が吹いてくるということはなさそうだ。では水圧はどうか。特にトイレの水圧が問題で、ちゃんと紙が流れるかどうかをチェックしなくてはならない。建物の設計施工自体が信用できない状況で、きちんと自分で細部を確認しなくては、とても怖くて借りることができないのだ。一度、賃貸契約をしてしまうと、契約期間中、契約解除ができない場合が多い。

中国の賃貸物件は、スケルトン、つまり内装は自分でやる状況で借りる仕組みになっているので、これから内装についても自ら準備をしなくてはならない。ものぐさな私にとってはとにかく面倒くさい。

「やはり、サービス・アパートメントの方がいいのではないでしょうか」
物件を見て怪訝な顔をしている私に不動産業者がアドバイスしてきた。

「サービス・アパートメント」と「賃貸マンション」では、家賃に大きな違いがある。サービス・アパートメントは、全て内装や家具が取りそろえてあり、必要最低限のモノさえ買いそろえれば明日から生活できるというアパート。賃貸マンションは、内装
から始める必要がある。上海の相場では、サービス・アパートメントは、100平方メートル(1~2LDK)ぐらいで1万5千元ぐらい。一方、賃貸マンションは、同じ広さで1万元ぐらいだ。団地になると50平方メートルぐらいで3000元程度のものもある。

ちなみに、日本と違い保証人の制度はない。敷金(保証金)は家賃の2カ月、礼金(大家手数料)はなく、退去時に原則として敷金の返金がある。不動産手数料は、現地中国系の相場は、家賃の約40%程度で、日系や外資系は家賃の1カ月分相当だ。契約は毎年更新としている場合が多い。

「サービス・アパートメント」の方は、オーナーがいて投資物件として購入したものが多いので、オーナーの管理レベルが物件の品質に大きくものをいう。家具付きであっても、家電製品が古く、コストを抑えるために全て中国製で、使い勝手が悪いケースもある。

結局、最初は日系の不動産会社にご紹介いただいた高額な「サービス・アパートメント」を借りることにした。現地に慣れて自分に適したスタイルに行き着くまでには、何度か引っ越しを繰り返すしかないだろう。

オフィスを探す

今度はオフィス。「住居と違い、ここには力を入れるぞ!」とばかりに、上海の物件をさんざん探す。
「思ったより狭いですね。案内の面積表示は正しいですか」
疑問に思って不動産業者に尋ねると、なんと室外の公共スペースまで含めた広さで契約しなくてはならないのだという。実際のオフィススペースは、表示の70%ぐらいしかない。

狭くても、かなり高額だ。
「やっぱり、上海なら南京路でしょう」ということで人民広場地域を探したのだが、この地域のオフィスの賃料は、1平方メートル当たり150~200元。もう少し高いグレードになると300元ぐらいになる。准海路や新天地になると標準で200元以上もする。浦東地区は、上海の金融地区で森ビルの上海ヒルズもあり300元以上の物件が多い。手頃なのは虹橋空港に向かって静安寺エリア、虹橋エリアで、日本人も多く標準タイプで150元~200元程度である。南京路は東京で言えばさしずめ銀座のような一等地。准海路や新天地は、渋谷、新宿といったところ。浦東地区の金融地区はさしずめ大手町。静安寺エリア、虹橋エリアは、下町、又は少し郊外といったところになる。

さらに高いのが店舗だ。地域や空き具合によって大きく賃料が異なるが、先ほどの人民広場では1平方メートル当たり2000元でも借りられないところが多い。一方少し引っ込んだ路地だと同じエリアでも1200元以下の所もある。南京路のエリアになると、長い間、順番を待って店舗に入る場合もある。こうしたケースでは、賃料は完全な売り手市場になる。あまりに賃料が高いので、結局採算が合わず出ていく店舗が珍しくない。だから、南京路地区の店舗の変化は非常に激しい。毎回、上海に行くたびに多くの店が変わっているのに気づく。

ところで、日本人は、本当に上海の南京路が好きだ。私の所にも南京路に店舗を出したいという相談がひっきりなしに来る。南京路は日本人の間でも有名で「ここなら人が集まるから間違いないだろう」と思ってしまうらしい。しかし、日本で例えれば銀座。銀座のど真ん中にいきなり店舗を構えて本当に成功するかは、冷静に考えればすぐに分かる。家賃も高いし、店舗同士の客の取り合いの競争も激しいのだ。

ちなみに、中国での登記には、日本と違って厳格なルールが存在する。中国で法人登記をするためには、1年以上の不動産の賃貸借契約書が必要になるのである。中国では住居を会社の登記場所にできないので、オフィスでの登記が必要となるのだ。小売業を行う場合には、店舗を借りて店舗を登記先にしなくてはならない。一つの物件に一つの法人しか登記できないので、会社を複数登記する場合は、その数だけ物件を借りなくてはならない。

そこで進出当初は、「レンタル・オフィス」がお薦めということになる。レンタル・オフィスは、部屋ごとに登記が可能なのだ。

私の場合は、会社登記に間に合わず、結局は「レンタル・オフィス」になってしまったが、このオフィス登記が私の中国進出の第一歩となった。★
(山田太郎)

〓お詫びと訂正〓
前回の『ChiBiz Inside no.021』の「中国人経営者がトヨタより訪問したい日本の企
業」の記事の中で誤りがありました。以下の通り訂正し、ご迷惑をおかけした関係者
の方々、読者の皆様に深くお詫び申し上げます。
誤)「金剛組(580年続く日本最古の会社)」
正)「金剛組(578年から1400年以上続く日本最古の会社)」