ChiBiz Inside no.013


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●信じられない詐欺の信じられない結末
●ここまでやる中国人クレーマー

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信じられない詐欺の信じられない結末

「やられた!」
商品が出荷されたにも関わらず、こちらの口座に入金されることはなかった。確かに、目の前には銀行印のある「振込受付書」がある。けれど、振り込まれていない。つまりは、銀行振込を使った巧妙な詐欺だったのだ。

最初は小ロットの取引だった。「振込受付書」をファクスで受け取った後、こちら側から商品を送付する。その代金は、数日遅れではあったがきちっと入金されていた。その後、再発注の依頼が入る。今度は、取引の規模が膨らんで、発注量は前回の10倍だ。そして、前回と同じように銀行印のある「振込受付書」がファクスで送られてきた。それを確認し、同じように商品を送る。しかし、待てど暮らせど入金がない。何かの手違いかと先方に電話を入れたら、もうその住所に先方の姿はない。既に行方をくらましてしまった後だった。

中国では、銀行の振込みがあってもこちら側の銀行口座に入金されるまでにかなりの時間がかかることが珍しくない。同一銀行でも1日以上、他行からの振込みであれば、数日かかることもある。しかも、日本では信じられないが、銀行で振込み手続きが終了してからでも、先方の都合で振込みの取り消しができるのだ。この場合、最初の銀行印が押された「振込受付書」は発行されても、その取り消しが行われた連絡まではこちら側には入らない。

やはり、どんなに先方が急いでいるといっても、入金を確認した後でなければ出荷をしてはならないのだ。

中国にも小切手がある。「匯票」と「支票」だ。「匯票」は全国通用の小切手で「支票」は地域限定の小切手である。体裁はそれぞれ日本の小切手にそっくり。小切手を決済する銀行支店名や期日などが書かれている。特にこの「支票」で詐欺が起こる確率が高い。「支票」は、有効期限が10日前後のもので上海の銀行発行のものは上海地域でしか現金化できない。このため、営業部員は相手先から預かった「支票」を売り上げとしてそのまま会社に持ち込むのではなく、換金可能な地域に作った個人口座で一旦現金化し、その現金を会社に振り込む仕組みになっていることが多い。その際、個人口座に現金を入れたままにして、会社から指摘されなければそのままネコババしてしまう。そんなケースも後を絶たない。

ちなみに「匯票」は全国で通用するのでそのまま会社に持ち込まれる。だから社員が現金に触れることはない。そしてこの小切手の有効期限は1カ月である。

かくして私が顧問をしている企業も、この小切手回収で社員に横領され地元の公安(警察)に告発したことがある。事件の立件まで3カ月もかかった。つまり、被害届を出してから公安に立件してもらうまでに、それだけの時間がかかるということだ。そんな調子なので、横領した社員はさっさと逃亡、証拠もままならず事件解決や代金回収は暗礁に乗り上げてしまった。

それだけではない。日本では考えられないことだが、なんと公安から「捜査費用請求書」なるものが会社に届いたのだ。この会社は、現地で税金を納めている会社だ。それでも、捜査の実費は訴えた会社が負担することになるのだという。

さらに驚くべきことが起こった。実費として請求された約3万元のうち、5千元の発票は偽物だったのだ。もちろん弁護士を通じて公安当局には2万5千元しか支払わなかったが。

まったく油断ができない。それが中国ビジネスの現場なのである。★
(山田太郎)

ここまでやる中国人クレーマー

B to Cの商売を中国で展開する場合、クレーマーの存在が気になる日本企業は多いだろう。製品やサービスにイチャモンを付け、企業から賠償金を巻き上げる。そんな事件が頻発する状況を中国では「王海現象」と呼ぶ。

「王海」さんは1995年、各地のデパートやモノ売場で様々な偽物を購入し、賠償金をせしめた実在の人物だ。青島にいた王海さんは、書店で見つけた本に「経営者が提供した製品、サービスに詐欺行為があった場合、消費者は2倍の賠償金を要求することができる」という「消費者権益保護法」49条の条文を見つけた。そこで早速、天津や北京のデパートで偽のブランド品を買いあさり、デパート側に価格の2倍の賠償を請求する訴えを起こしたのだ。

次の年、王海さんは、ソニーのコードレス電話を5台購入、ソニーに確認し密輸品であることが分かると提訴した。王海さんは、またしても勝訴した。その後、上海ではこの王海さんをまねて「偽物撲滅集団」として多くの人が偽物探しを繰り広げた。この結果、1カ月の間に100件以上の訴訟が起きたという。

この流れは、どんどんエスカレートしていく。テレビの店頭に出されたPOPにうたわれている機能を備えていない製品が並んでいたことをいいことに、それらの製品をすべて買い取り訴訟に臨む第二の「王海さん」、デパートのトイレに入って使用料を取られ、営業許可書の営業範囲にトイレ経営が入っていないことを訴えた第三の「王海さん」、保温下着の景品にもクレームをつけ…。このように様々な「王海さん」が現れ、それは一つの社会現象になった。

中国のマスコミ各社は、王海さんを「偽物退治の英雄者」として称えた。一方、「賠償狙いの悪徳消費者」と批判する声もあった。すっかり有名人になった王海さんは、当時、訪中していたクリントン大統領と対談し、中国の偽装品撲滅について語ったりもしていた。

その後、上海市高級人民法院は「賠償金目当てに購入する消費者は、『消費者権益保護法』の「消費者」には当たらない」との判決を出す。ここから王海さん現象は、一気に沈静化していった。

それでもいまだに、クレーム対応が難しい課題であり続けていることに変わりはない。特に、日本企業がそこにからんでいるとやっかいだ。下手に日本人が対応すると、クレームが対日批判と相まってエスカレートしてしまうことがある。日本人は表に出ず、直接行わず現地スタッフや代理店が直接対応した方がいいだろう。

中国の消費者に関する法律は、先の保護法以外に、製品品質法、製品表記記述規定、製品品質検査、製品品質鑑定管理法など様々なものがある。これらの対応をきめ細かく行うためには、「消費者協会」との密な連携を保つことも重要だろう。★
(山田太郎)