こども庁は“届かない子どもたちの声を聴く”省庁に!社会的養護経験者の視点から【後編】


4月26日、私(山田太郎)が事務局を務める第12回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。

前回のブログに引き続き、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの西崎萌さんからご説明があった「子どもの権利基盤のこども庁に向けて」について紹介します。

写真)西崎萌さん

西崎さんからは、日本における子どもの意見を聞く体制についてご指摘がありました。2019年 国連子どもの権利委員会から日本へ勧告があったように、日本では未だに子どもの権利条約が社会に浸透していません。そして、同委員会からは「緊急の措置が取られるべき6つの分野」 についても勧告がありました。6つある中でも、西崎さんは「子どもの意見が尊重」されていないこと強く訴えています。

図)西崎萌さん提供資料

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが実施した調査によると、大人の「子どもの権利」の認知度は、たったの28.6%でした。また、子どもからの認知度は39.6%と低い数字となっています。

図)西崎萌さん提供資料

 

このように、日本では子どもの権利条約に関する認知度が低いです。子どもの権利条約に書かれている「子どもの意見の尊重(意見表明・参加)」を実現するには、子どもが意見を言いやすい環境を整える必要があります。

 

そのためには、大人も子どもも「子どもの意見の尊重(意見表明・参加)」について知る必要があり、「意見を聞かれる権利」を法律や規則・体制に明記して欲しい、と提言いただきました。私も、当事者である子どもの声を聞くことは、非常に大事だと私も考えております。子どもの声が尊重される国をつくれるよう、今回の提言をしっかりと受けとめていくつもりです。

 

次に、児童養護施設で育った当事者である中村みどりさん(Children’s Views & Voices 副代表)と川瀬信一さん(公立中学校教員・(一社)子どもの声からはじめよう代表理事)にご講演をいただきました。

お二人からは社会的養護経験者の視点から、こども庁にはどのような機能が必要なのか、という点についてお話しを伺いました。

 

写真)川瀬信一さん(左)、中村みどりさん(右)

 

施設や里親家庭を要する子ども・若者が直面している課題は、次にあげる3つの場面において発生しています。

  • 虐待からの保護及び措置決定
  • 施設・里親家庭における生活
  • 施設・里親家庭を離れてから

図)川瀬信一さん提供資料

 

まず①の保護・措置決定場面では、子どもの声の軽視が課題となっています。実際に、子どもの声の軽視が原因で起きた事件として、野田市に住む小学4年生の栗原心愛ちゃんが亡くなった事件や、広島県の10代の子どもが一時保護中に亡くなった事例などが挙げられます。心愛ちゃんからのSOSを見た時は心をえぐられる思いでした。そして、子どもの声を聞き、それを反映できる国にしようと強く思いました。

写真)栗原心愛ちゃんからのSOS(川瀬信一さん提供資料)

 

加えて、地域によって施設の処遇に差があることも課題です。2019年の厚生労働省子ども家庭局子ども福祉課調べによると、一時保護所の平均入所率が100%を超える施設は12箇所以上存在します。

これに対し川瀬さんから「虐待を受けていると考えられる子どもの家庭については、安全性を絶対評価をすべきですが、あまりにも件数が多く、相対評価になってしまっているのが現状であり、課題だと認識している」と説明がありました。

写真)川瀬信一さん

 

②の施設や里親家庭での生活においても、子どもの声を聞いてもらえていない現状です。中村みどりさんが、施設や里親家庭で育つ子どもを対象に実施したアンケート調査では、「話を聞いてくれるおとなは、”いない”」「自分の意見を最後まで聴いてもらえない。」「言ったことを信じてくれるならいいけど」などの発言から見られるように、子どもの小さい声がおざなりにされている実態が分かります。

図)中村みどりさん提供資料

 

③の施設や里親家庭を離れる場面では、「18歳で自立を求められるが、自立後に頼れる居場所や人がいない」といったご指摘が川瀬さんからありました。児童福祉法では、社会的養護下での養育措置は原則18歳までとなっており、高校を卒業したら児童養護施設や里親家庭を出て自立しなければいけません。しかし、親がいることが前提として成り立っている社会では、家を借りるにも、携帯電話を契約するにも、一人では契約できないことがあります。

写真)中村みどりさん

 

また、病気になったり、仕事を失っても帰る場所や、頼れる人がいません。実際に、施設を卒業をした8割が月収20万円以下の生活を送っています。そしてコロナ禍の現在、毎日孤独で不安な日々を送っているとの声が川瀬さんのもとに届くそうです。そのため、施設や里親のもとで育った子どもたちが大人になってからも、困ったときに頼れる居場所(自分の話を聴いてもらえる場所)を作って欲しい、との提言がありました。

図)川瀬信一さん提供資料

 

ここまで紹介してきたように、子どもの小さい声は無視されてしまっています。子どもの人生の主導権は、当事者である子どもが持つべきであり、子どもには参加する権利(自分の意見を表明する権利)があります。子どもの声が無視されるようなことがあってはいけません。

 

無視されがちな子どもの声を拾うために、川瀬さんから「アドボカシー制度」の導入について提言がありました。アドボカシー制度とは、「アドボケイト」と呼ばれる第三者機関の大人が子どもの声を聞き、代わりに声を上げる制度のことです。例えば、虐待をされた子どもが保護された場合、家族の元に返すのか、保護を続けるのかなどを判断しなければいけません。

 

その際、親権停止など法的な問題が発生しますが、法律の理解が難しい子どもにとって自分の考えを主張するのは難しいです。アドボケイトは、徹底的に子どもに寄り添い、親ではなく子どもの意見を尊重し、法的な主張も行う弁護士のような存在です。諸外国では、社会的養護の対象となる子どもたちに対してのアドボカシー制度は積極的に取り組まれていますが、日本では限られた自治体が試行的に始めている段階にとどまっています。

図)川瀬信一さん提供資料

 

こども庁の大きな柱の1つは「子どもの命と尊厳を守る」ことです。「子どもの命と尊厳を守る」ために、当事者である子どもの声が無視されるようなことはあってはなりません。こども庁では、子どもの権利条約の理念と規定を踏まえ、引き続き全身全霊努力して参ります。