「子ども食堂」のあり方について現場から思う事


 私の5月8日のTwitterでの「子ども食堂」に関する発言に対して、多くの批判や厳しい意見をいただいています。私はこれまで幾つもの「子ども食堂」に参加し現場を見てきました。その上で、子ども食堂の輪を全国に広げる事は必要だと考えています。もちろん全国で5千を越す子ども食堂の全てを見てきた訳ではありませんが、まだまだ多くの方が「子ども食堂」に対して、誤解や偏ったイメージを持っているのだと再認識しました。今回、改めて子ども食堂のあり方について思う事をまとめます。

 

■「貧困対策だけの場所」ではない!子ども食堂の目的と必要性

 現在の最新の調査では、こども食堂は全国で5,000箇所を超えています。[1]2019年からでも1,300箇所増加し、2020年2月以降のコロナ禍に限っても少なくとも184箇所の新設が確認されており、年々増加しています。[2]

 しかし、メディアの影響で「子ども食堂イコール貧困家庭で食事を食べられない子どもが行くところ」というイメージを持っている方が大変多くいます。それは大きな誤解です。子ども食堂は、地域の接点も減っている現代社会において、かつての“子ども会”のような雰囲気で多世代が交流する重要な拠点です。こども食堂は「貧困対策だけの場所」ではないですし「福祉支援をするところ」でもありません。子ども食堂の約8割は子育て支援や学習支援、高齢者福祉等の活動も一緒に行っており[3]地域交流の拠点と貧困対策の二つの側面をもっています。

出典)農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年

 

国では平成29年に子ども食堂運営者を対象にした大規模なアンケート調査と10の運営者には丁寧なヒアリング調査も実施しています。[4]アンケート調査では、運営者が「主な活動として意識していること」で最も多かった回答は「多様な子供たちの地域での居場所づくり」(78.8%)です。次に、「生活困窮過程の子どもの地域での居場所づくり」(60.6%)、「子育ちに住民がかかわる地域づくり」(58.8%)という順になっています。


出典)農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年

 

 ヒアリングでは、子ども食堂の発祥といわれている東京都大田区の「気まぐれ八百屋だんだん子ども食堂」代表の近藤さんも「1人暮らしの高齢者や子育てに悩みを持っている人等が多くいることを知り、地域の中で「みんなが集まれる居場所」を作りたいと考えるようになりました」と語っています。[5]子ども食堂は、今の地域の現状に「自分に何かできることはないか」と感じた人たちが、「食事をつくって一緒に食べることならできる」と始めたケースが圧倒的に多いとうのが現状です。

子ども食堂は貧困対策が唯一の目的だとのイメージやレッテルを貼り、それだけの役割に追い込んではなりません。このイメージの為にどれだけの「子ども食堂」がかえって困難を抱える子どもたちを救うことができずに悩んでいるか実情を知ることが大切です。

 地域の子どもと大人たちが共に食事をすることで交流や情報交換が増え、親同士が育児の相談をできる場になるなど地域のネットワークができて、地域住民たちが子どもの様々な実態を知る場にもなっています。様々な子どもが集まる事で虐待をされている子どもが行政とつながったり、孤立している子どもやいじめにあっている子、自殺を考えていた子どもの居場所にもなっているのです。

 

■レッテルがもたらす弊害

 しかし、メディアによって「子ども食堂イコール貧困対策」というイメージが広がり過ぎた為、来にくい子どもたちが多くなった、また、親が子どもの出入りを禁じる弊害が生まれたなどの強い指摘がされています。八百屋だんだんも「地域の中でみんなが集まれる居場所づくり」として始めたにもかかわらず、当初は、貧困対策としての視点からの報道が多かったといわれています。[6]

 例えば、子ども食堂の主催者が公民館や施設に申し込んだところ「貧困者が集まる場所と思われる」「貧困の子どもは地域で存在しない」と難色を示されるケースが多いとの報告もあります。あらゆる子どもが楽しむことのできる場所だと言っても、子ども食堂は貧困対策というイメージから抵抗を持たれるケースもあり、日本各地で開催が厳しいという事実も聞いています。貧困対策のイメージを遠ざける為に、場所の名前に敢えて「子ども食堂」と書かず、子どもの名称すら含めないところもあります。また、いわゆる高級住宅地域では子ども食堂の数は極端に少ないですが、年収が平均以上あるのが当たり前とされる地域こそ、本当に支援が必要な貧困世帯の実情が表面化せず隠れてしまい、困難を抱える子どもが孤立しやすいという問題もあります。

 

 前述の農水省の調査でも、「運営にあたり感じている課題」の1位は「来てほしい家庭の子供や親に来てもらうことが難しい」(42.3%)[7]という回答でした。私自身も実際の運営者から「貧困家庭の地域での情報感度が乏しく、本当に来て欲しい子にはなかなか来てもらえなかった」「休み中毎日開催したが、来てほしい子どもが全く来なかった」との声を聞いています。また、調査では約7割の子ども食堂運営者がなんらかの助成金を活用していますが、[8]「運営費の確保が難しい」(29.6%)や「運営スタッフの負担が大きい」(29.2%)という課題もあがっていることから、助成金などの地域格差を減らしていくことが必要です。

出典)農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年

出典)農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年

 

 しかし一方では、多くのNPOや子ども食堂運営者、企業などが連携する「広がれ、こども食堂の輪!全国ツアー」の力もあり、子ども食堂が「困難を抱える子どものための食堂」だけではなく、例えば高齢者の食事会に子どもが参加する場合もこども食堂として広がっているという現状もあります。

 

■制度の限界を超える、子ども食堂

 しかし、こども食堂は、子どもに行政的な「措置」を行う場ではありません。つまり「来てほしい子が来ない」という運営側の課題認識の背景には、気なる家庭の子どもの顔が浮かんでおり、その子どもが来ない、ということを心配しているわけです。いわゆる要支援家庭といわれる危険な赤信号が灯っている子に、行政が届かない支援を届けることは、立派な貧困対策です。一方で、貧困家庭でなくとも居場所がなかったり、課題を抱えている黄信号の子に、新しい居場所のきっかけを与えたり、参加や体験の場を提供することも、同様に予防的側面が強い立派な貧困対策です。

 子ども食堂は国が運営すべきだ、国や行政が直接子ども食堂を運営すべきだというような意見もありますが、行政の支援というのは、その財源が国民の税金である以上、世帯年収というような客観的基準を設けざるを得ません。対象者を属性や年齢で分類したり、その上で年収でも分類して該当する人にサービスを提供したりします。基準を無視して支援を行っていては、行政は信頼を失い制度は崩壊してしまいます。

 しかし、世帯年収はその基準を上回っていたとしても、例えば「両親が共働きで毎日家で一人でご飯を食べている子」や「手料理を作ってもらったことがない子」「家族団らんを味わったことがない子」は子ども食堂での手料理や体験、居場所を必要としています。子ども食堂に来ているからには、来たい理由があるのだと思います。そのように子どもを選別せず、「すべての子」に開かれているところに、行政の支援ではできない民間の自発的活動であるこども食堂の強みがあるのです。民間の人たちが、「子どもたちの地域拠点を作りたい、おなか一般食べさせたい」という純粋な思いで行政や制度を意識せずに初めたからこそ、これまでの行政では実現できなかった居場所づくりがこれほど全国で広がりを見せているのだと思います。

 そして、教員やスクールカウンセラーなどが子どもの居場所づくりのために子ども食堂を利用するよう促したり、逆に子ども食堂から行政に繋げているという相互の役割分担を踏まえた連携も非常に重要だと思います。

 

■国の「子ども食堂」の支援の在り方と貧困対策
 

 子ども食堂は国が運営すべきだ、というような意見の方もみられますが、国が運営しては民間の子ども食堂だからできる、貧困の予防対策は到底できません。そして、地域の交流拠点としての役割を果たすことも行政では限界があります。行政は民間と協力しながらも、財政や運営が厳しい子ども食堂をどの様に支援していくか検討を急ぐ必要があります。今は、内閣府の「子供の未来応援基金」や厚労省の「子どもの生活・学習支援事業」から子ども食堂に助成されていますが、もちろん十分とは言えません。

 私が事務局次長を務める自民党の「孤独・孤立対策特命委員会」でも、政府に対して「支援にあたる方々や団体の支援」の必要性として、子ども食堂を行うNPO等の活動へのきめ細やかな支援を求める提言をまとめあげました。

 現在の日本は、母子家庭の58%が年間就労収入200万円未満、子どもの相対的貧困は7人に1人です。相対的とはいえ親子二人世帯で月額14万という水準の子供が7人に1人というのは事実です。自治体に責任をなすりつけるのではなく、国が子どもの貧困解消に責任を持つべきだという私の意見は当初から変わりません。今は、苦労しながら現場で必死に運営されている「子ども食堂」の為にどのように支援をしていくべきか考えながら議論を進めていきます。

 私も意見交換をさせていただいたことがある末冨芳教授(内閣府子供の貧困対策委員)がおっしゃっているように、国が取り組む貧困対策は、「つながりを大切にすべての子どもの幸せを大切にすること」、「貧困世帯だけを対象とした選別主義によって貧困の当事者が利用をためらわないようにすること」、そして、「家庭の『貧』(低所得)を改善するだけでなく、どんな子どもたちでも抱えうる『困』(困りごと)も支援の対象とすること」、つまり「すべての子どもを大切にする視点」のもとで進めてまいります。

 

(出典)

[1] NPO法人全国子ども食堂支援センターむすびえ「こども食堂全国箇所数調査2020結果のポイント」
https://musubie.org/news/2898/

[2] NPO法人全国子ども食堂支援センターむすびえ「こども食堂全国箇所数調査2020結果のポイント」https://musubie.org/news/2898/

[3] 農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-40.pdf

[4] 農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-40.pdf

[5] 農林水産省「子供食堂ヒアリング結果(10の取り組み事例の詳細)」『気まぐれ八百屋だんだん子ども食堂』平成29年
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-29.pdf

[6] 湯浅誠「名づけ親が言う「こども食堂」が「こどもの食堂」ではない」Yahoo!ニュース,https://news.yahoo.co.jp/byline/yuasamakoto/20160724-00060184/ (最終アクセス2021年5月9日)

[7] 農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-40.pdf

[8] 農林水産省「子供食堂向けアンケート調査」平成29年https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-40.pdf

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■山田太郎略歴
参議院議員(2期目)。表現の自由を守るために国会内外で活動を行う。表現の自由を守る会代表。

◇経営者として
 ・ネクステック株式会社 代表取締役社長(CEO・創業社長)
 ・パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション米国本社副社長(米国NASDAQ上場企業)等

◇教育者として
 ・東京大学 大学院工学系研究科 非常勤講師
 ・早稲田MBAスクール客員准教授(早稲田大学 大学院商学研究科ビジネス専攻)
 ・東京工業大学 大学院社会理工学院研究科 特任教授 等

◇政治家として
 ・参議院議員(2期目)
 ・内閣委員会 委員
 ・政府開発援助等に関する特別委員会 委員
 ・国民生活・経済に関する調査会 理事
 ・議院運営委員会 委員
 ・議院運営委員会委員図書館運営小委員会 委員

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