子育て支援が日本を救う!!子ども支援の「予算」「人員」を増やしつつ「政策効果」の検証を!


5月17日、私(山田太郎)が事務局を務める第14回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。

写真)冒頭の挨拶をする私(山田太郎)。子ども関連政策全体とその予算を把握している省庁の部署は存在しません。事務局では、子どもの課題を網羅的に把握し、それらの施策と予算、根拠法を調べまとめあげています。私からは、これらをきちんと取りまとめ調査・検証していく必要があることも報告しました。

 

 

今回の勉強会では、柴田悠准教授(京都大学大学院人間・環境学研究科総合人間学部)をお迎えし、「子ども支援の「予算」「人員」を増やしつつ「政策効果」の検証を」と題しご講演いただきました。

柴田先生の著書「子育て支援が日本を救う」の中では、大変重要な指摘がされており「こども庁」創設に向けた議論の過程でも参考にしていました。

写真)柴田先生の著書「子育て支援が日本を救う」

実は子ども支援政策の中で、支出規模が最大なのは「就学前教育・保育」(保育所・幼稚園等への支出)で、子ども支援支出の約4割を占めています。 中でも「保育所への支出」は、女性就業化や 2019 年 10 月からの保育無償化に伴って拡大傾向にあります。

写真)柴田先生

 

さて、支出が拡大傾向にある「保育」に関してですが、その「短期効果」と「中期効果」が研究によって明らかになっています。先生からは以下の最新研究の紹介をしていただきました。

まず「短期効果」については、母親の学歴と子どもの発達には因果関係がある[i]ことがわかっているそうです。下図のように、大卒以上の母親の下で育った子どもは、高卒未満の母親の下で育った子どもよりも言語発達が高い傾向にあります。また、攻撃性・多動性に関しても大卒以上の母親の子どもの方が低くなっています。

図)柴田先生提供資料

一方、子どもが2 歳半の時に保育所に通っていると、 子どもの言語発達向上だけでなく、攻撃性・多動性の減少が見られました。また、親の育児ストレス・不適切養育行動の減少も研究結果に表れています。これらの研究結果は、子育てによる親のストレス減少が育児幸福感を高め、しつけの質の向上につながっていることを示しています。つまり、無通園よりも保育所通園のほうが、特に社会経済的に不利な家庭で育つ子どもの発達を促す効果があることが研究としてわかったということです。

 

図)柴田先生提供資料

 

次に保育の「中期」効果として、赤林英夫・慶応大教授らが全都道府県の時系列データで行った因果推論[1]によれば、1957~83年の保育所通園率と幼稚園通園率の上昇は、その後の高校進学率と大学進学率の上昇に寄与していることが分かっています。さらに、保育所通園率の方が高等教育の進学率により大きく寄与していることが分かっています。

この原因について、三村国雄・一橋大講師が全国の親子の追跡データで行った因果推論によると、教育保育の「質」によるものではなく、通園の「量」(時間・期間)が起因しているそうです。

 

このように、政策の効果を検証することで新たな因果関係や相関関係が明らかになることがあります。そして、効果が明らかになれば、政策立案の参考になるうえ、効果に基づいた財源を主張することができます。ご案内の通り、日本の子ども支援に対する予算は十分とは言えません。内閣府の調査によると、2020年における日本の子ども支援政策全体の支出額は、対GDP比1.9%で、OECD平均の2.1%に届いておりません。しかし、少子化は刻一刻と深刻化しています。また、子どもの自殺率は2010年から年々増え続けており、子どもにとって決して生きやすい社会とは言えません。一方で、こうした問題を解決するための福祉や教育には、どうしても予算が必要であります。子ども庁創設を提唱した提言書では、「対GDP比3%台半ばにまで引き上げる」との旨を書きました。実現のためには、政策の費用対効果を知り、十分な予算を確保のためのエビデンスを提示する必要があります。

図)柴田先生提供資料

 

しかし、日本では政策効果を測定するためのデータが十分とは言えません。先ほど紹介した「保育」の効果研究においてもデータが少なく、保育の「長期」的な効果(成人以降にもたらす影響)はまだ検証段階であります。加えて、柴田先生からは「日本では圧倒的にデータが不足しており、研究が遅れている」とのご指摘がありました。

 

「こども庁」では、全ての子どもが安全に育ち、健康的に能力を発揮できる社会を目指しています。そのためには、データやエビデンスをもとに、これまで見えてこなかった事実を政策に反映し、費用対効果を考えた財源を確保する必要があります。子どもに関するデータの充実をはかるべく、引き続き関係各所と連携しながら準備を進めてまいります。

 

写真)出席議員によって活発な意見交換がなされた。松島みどり衆議院議員

写真)柴山昌彦衆議院議員

写真)上月良祐参議院議員

写真)宮路拓馬総務大臣政務官

写真)呼びかけ人として閉会の挨拶をする加藤鮎子衆議院議員

 

 

[i] 山口慎太郎・東京大教授らが全国の親子の追跡データで行った因果推論から

[2]三村国雄、2017、「就学前における教育・保育施設の選択が就学後の児童の学校適応・問題行動に与える影響――大 規模縦断調査を用いた分析」『厚生の指標』64(11): 1-7。 http://hws-kyokai.or.jp/paper/120-2016-02-15-03-07-32/2076-201709-1.html