医療的ケア児支援法成立、「小1の壁」を解消し、教育機会を平等に!


6月11日、たんの吸引や人工呼吸器など、医療的ケアが日常的に必要な子どもが保育園に通ったり、教育を受けたりできるようにする「医療的ケア児支援法案」が可決されました。この法案は、超党派の「永田町子ども未来会議」が議員立法としてまとめたもので、条文には当事者らの思いも反映されています。

私も医療的ケア児の成長と学びを確保し、その家族の支援を実現する必要があるという強い問題意識から「Children Firstの行政のあり方勉強会」で議論を重ね、緊急提言や第二次提言でも「こども庁」で「医療的ケア児の学びの保障と家族支援」を推進すべきだとして政府に求めてきた経緯があります。

今回のブログでは、法律の背景と措置について紹介します。

 

■医療的ケア児を育てる家族に立ちはだかる「小1の壁」

 医療的ケア児とは日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療 行為)を受けることが不可欠である児童( 18歳以上 の高校生等を含む。)のことを指します。少子化で子どもの数が減っているにもかかわらず、医療的ケア児の数は2万人を超え増加の一途をたどっています。(図1)

今回の「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」は、医療的ケア児が心身の状況に合わせて健やかな成長ができるように支援を図るとともに、その家族の離職を防止する、という目的があります。

図1)国立成育医療センターもみじの家ハウスマネージャーの内多勝康先生提供資料

 

私の知っている医療的ケア児を育てるお母さんは、お子さんに対して数時間に1度たんを吸引しなくてはいけなかったり、1日に6,7回胃ろうから食事をあげる必要があり、ほとんど徹夜でケアをしていました。

就学前は、十分といえませんが、市区町村やNPO等が運営する障がい児保育や病児保育の体制が整いつつあり、医療的ケア児を育てながらも仕事に復帰するという保護者が増えてきています。問題は子どもが小学校に就学する時に生じる「小1の壁」です。

 医療的ケアが必要な子どもは学校看護師がマニュアルを整えるまで保護者が学校に付き添いケアを実施する必要があるため、保護者が仕事をしている場合は、子どもは学校に通えません。通常学校側はその子どもが安定して学校に通えるか見極めることを前提とするため、入学から1年以上かかることも多くあります。保護者が病気などの際は、付き添いができないため通学できません。また、特別支援学校の訪問教育を選択した場合は週3回、先生が自宅に訪れ2時間程度教えるのみの授業しか実施されません。現状では、医療的ケアが必要な子どもの教育機会がきちんと確保されていない現状です。

Children Firstの行政のあり方勉強会では、人口呼吸器を装着する医療的ケア児である小学校6年生の“ももかちゃん”から「毎日友達と会いたいです。みんなと勉強がしたいです。国会議員のみなさん、どうか私を毎日学校に行かせてください。」という切実な訴えもありました。

写真)ももかちゃんからのビデオメッセージ(国立成育医療センターもみじの家ハウスマネージャーの内多勝康先生提供資料)

 

■医療的ケア児支援法で何が変わる?

今回成立した医療的ケア児支援法の基本理念は下記です。

 1、医療的ケア児の日常生活・社会生活を社会全体で支援

 2、個々の医療的ケア児の状況に応じ、切れ目なく行われる支援

→医療的ケア児が医療的ケア児でない児童等と共に教育を受けられるように最大限に配慮しつつ適切に行われる教育に係る支援等

 3、医療的ケア児でなくなった後にも配慮した支援

 4、医療的ケア児と保護者の意思を最大限に尊重した施策

 5、居住地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられる施策

 

そして、国・地方公共団体の責務として

・医療的ケア児が在籍する保育所、学校等に対する支援

・医療的ケア児及び家族の日常生活における支援

・支援を行う人材の確保 等  の措置が明確化されました。

 

また、保育所の設置者、学校の設置者等の責務として、

・保育所における医療的ケアその他の支援

 →看護師等またはたん吸引等が可能な保育士の配置

・学校における医療的ケアその他の支援

 →看護師等の配置  の措置が明確化されました。

 

加えて、法案には、家族の相談にのる「医療的ケア児支援センター」を都道府県ごとに設置することも盛り込まれています。これは、医療的ケア児を育てる保護者たちの孤立を防ぐことにもつながるでしょう。

 

 この法律は大変意義のあるもので、可決したことを嬉しく思います。しかし、医療的ケア児を取り巻く課題は、まさに医療・福祉・療育・教育のはざまに挟まれており、その解決のためにはこれらを連携させる必要があります。どんな状況下の子どもであれ、子ども一人一人に寄り添ったサービスが迅速且つ一元的に提供出来るよう、まさに「こども庁」のようなプラットフォーム機能をもつ省庁が必要であると考えます。今後、こども庁創設の議論と合わせて、医療的ケア児の支援が推進されるよう全力を尽くします。