旭川市14歳少女いじめ事件、調査しています!直接文科省と警察庁に問う !


写真)文科省、警察庁、厚労省とのレクの様子

 

 週刊誌の報道によって大きな注目を集めている「北海道旭川市14歳少女いじめ凍死事件」。本件については、私も強い問題意識を持ち注視し、文科省には逐一進捗の報告を求めています。現時点での文科省からの報告といじめ防止対策推進法の課題、私が今後改善を求めていくことについてお伝えします。
 

■ 文科省からの報告(2021年7月9日時点)

 まず、北海道旭川市14歳少女いじめ凍死事件に関する文科省からの最新の報告は次の通りです。

Q:文部科学省は、現時点で事実関係をどこまで把握しているのか?

本件をいじめ防止対策推進法の重大事態(※1)として認定し、第三者調査委員会を立ち上げ事実確認をしている最中であり、その調査結果を待っている。学校や教育委員会の指導や情報公開やについて不備があったかどうかも含めて調査中であり、報道のすべての真偽は現時点では不明であり把握していない。 

旭川市教育委員会(以下市教)や調査委員会は遺族の方と情報交換がスムーズにできていると聞いている。

出典)文部科学省

Q:調査委員会の設置も含めて市教の初動が遅かったのは何故か?

・基礎自治体はとにかく重大事態に慣れておらず、事態が発生したときにどうしていいか分からずノウハウがない。今回のそのパターンだった。北海道には人材の派遣やサポートをするように文科省からもアドバイスしている。

・旭川市に限らず、法律もガイドラインもあるものの調査委員会の設置が遅いというのは事実である。設置に対する構成員(専門家)の確保、予算不足の理由も大きい。

Q:調査の最終報告はいつでるのか?

・現在集まっている資料の量だけでも膨大で、現時点でとりまとめの時期については不透明。文科省からは旭川市教委に対して「本来であれば年末までに。できるだけスピードアップをして、喫緊にとりまとめるように」とアドバイスしたが、遺族から「拙速ではなく丁寧な調査を求める」という依頼もあったため、スピードありきではなくしっかりとした調査を進めているところ。

・また、旭川市だけではなく道教育委員会にも「これだけ世間の注目が集まっているため、ある一定の報告がまとまれば中間報告を出してはどうか」ということもアドバイスをしている。

Q:調査委員会のメンバー選定が遺族に寄り添った形で適切になされているか?

・委員構成、推薦団体については以下資料参照

・今回の選定にあたっては、遺族に伺いを立て遺族が「メンバーから外してほしい」と申し出があった方は外している。ガイドラインの基準からみれば今回は模範的な構成であると言える。

 

 

Q:4月、萩生田大臣からは「一義的には現場や自治体が調査することだが、状況によっては私も含めた政務三役など、文科省が人員派遣をすることも考えられる」(要旨)という答弁がありましたが、現状のそのような検討はしているのか?

・市教など現場が欲しいのはネットワークだということだったので、生徒指導のプロを県から派遣するように伝え派遣している。

・遺族ともめている、調査が進まない等の問題があれば出ていかなくてはいけないと思っているが、現在は政務三役が行く予定はない。現状も国を超えたアドバイスをしているので、このまま粛々と進めてもらう。                               

■ いじめ対策の構造的な問題点

  私がいじめ対策において今後検討をすべきであると考える問題は4つあります。

① 旭川市の調査委員会で報告書のとりまとめの期限が定められていないこと

 文科省曰く、通常重大事態の場合は調査委員会のとりまとめまでに1年以上かかることがざらだと言います。しかし、調査の期限が定められていないというのは大変問題であると思います。今回の旭川の調査委員会でも報告書のとりまとめの時期は未定とのことですが、重大事態だからこそ、迅速かつ丁寧な調査が必要なはずです。

② 重大事態の場合の警察の関与が極めて少ないことについて

​いじめには法律上3つの種類があります。

1,いじめ防止対策推進法上の「いじめ」 
2,民事上の損害賠償責任が成立する「いじめ」
3,犯罪に該当する「いじめ」

いじめが成立する範囲としては、「1>2>3」の順になります。
いじめ防止対策推進法上の「いじめ」いじめが成立する要件は以下の2つです。

(a)小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在籍する児童生徒に対して、一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える「行為」

(b)当該行為の対象となった児童生徒が「心身の苦痛を感じているもの」

 例えば、「仲間はずれ」「無視」「陰口」など、心理的・精神的ないじめを直ちに犯罪と判断するのは非常に困難です。そのため、議員立法で制定された「いじめ防止対策推進法」が被害者に対して「心身の苦痛」を与える行為をいじめと定義し、心理的・精神的に影響を与える行為を法律上もいじめとして扱うことにしたのは、意義があるといえます。

この中で、いじめ防止対策推進法28条1項1号の以下に該当する場合は、「重大事態」として位置づけられます。

一いじめにより児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき
二いじめにより児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき

 一般論として、いじめ防止対策推進法では、いじめの疑いがある自殺、自殺未遂、不登校などがあった場合は、重大事態になります。しかし、「重大事態」に該当するような、「生命・心身・財産に重大な被害を生じさせるほどのいじめ」が、学校で生じたからと言って、強制的な権限を持った警察ではなく、教育機関によって調査することについてどのような根拠があるのか、ほとんど議論されていません。

本来的には「生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある」ほどの行為は、学校の調査ではなく、犯罪や触法行為として警察の捜査や調査の対象になり得る行為であり、警察の関与が必要だと思います。

 

この点について文科省と警察庁にも確認をしています。

例えば、警察庁が把握している令和2年の「いじめに起因する検挙の人数」は計199名(小学生51名、中学生103名、高校生45名(特別支援学生含む))です。つまり、このデータはいじめに警察が関与した件数で、ひいては重大事態であるはずです。

しかし、文部科学省で把握しているデータは、令和元年にいじめが原因で自殺をした生徒は10名です。

 統計情報であるはずが、どの年においても警察庁と文科省の持っているデータにこれだけの差があるのです。学校側が情報を得る先は遺族のため、仮に遺族が自殺を伏せてほしいという意向であれば、文科省としては情報を得ることはできません。捜査権限を持っていない学校の限界です。しかし、統計情報である以上事実を正しく処理するべきであり、事実が把握できなければ適切な対策の検討すらできません。

 この点については、こども庁が調査や統計情報の収集、分析についての権限を持ち、EIPP (Evidence Informed Policy and Practice:エビデンスに基づく政策立案と実践の展開に基づいた政策立案)で推進すべきであると考え、そのような議論を進めています。

図)自殺の状況について(文科省より)

 

③ 市区町村の人員・予算・認識不足について

 今回の旭川市教育委員会の事例でもそうですが、基礎自治体は重大事態が発生したときに対処できる人材がいない、調査委員会の設置に際しても構成員となる弁護士や精神科医等への日当を負担できないなど、人材の確保、予算の問題が大変大きな要因となっています。

 また、学校の現場でいじめ防止対策推進法の理解が進んでおらず、重大事態のことを把握していないこともあります。文科省が調査しているいじめの1000人当たりの認知件数に関しても、都道府県別でみると最低値と最高値に約10倍の差があります。子どものいじめはどの地域でも必ず発生します。しかし、都道府県でこれだけ差がでているということは、学校での教師の意識の違いが大きいといえます。

さらに言えば、重大事態を認定する場合、いじめと確定していなくても、いじめの疑いのある段階で重大事態と判断すべきケースが多いですが、現場の教師ではそれがなかなか判断できません。旭川のいじめの事件は、まさに、こうした初歩的な問題をクリアできていません。

図)都道府県別のいじめの1000人あたりの認知件数(令和元年)

④ 「適切な指導」の判断基準が不明確

 旭川のいじめ事件でも、教師の対応について様々な報道がなされており、その対応や指導が適切であったかどうかも問われるわけですが、「教師の指導が適切だったかどうか」の判断基準が不明確です。これは、こども庁創設に向けた勉強会でお子様を教師の不適切な指導によって亡くされた大貫隆志さんからも指摘がありました。現状の日本の制度では指導によって亡くなったり、不登校になった場合は、その原因を調査してもらえません。なぜならば、教師の不適切な言動はいじめの定義から漏れているからです。そもそも文科省は「不適切な指導による死」の概念を認めていません。

7月7日に、提要の改訂に関する協力者会議が始まりましたが、教師のどのような指導が不適切なものになりえるか。その不適切さゆえに、児童生徒が自殺をしたり、不登校になったという想定がありません。指導における適切さの基準について、政治主導で話し合いの場を作っていく必要があると考えます。
 

■ 政治としてすべきこと
   
    前述した4つの課題については、構造的な問題も大きいと言えます。こども庁構想の議論と合わせて長期的な視点で改善に向け取り組んで参ります。まずは、いじめ防止対策推進法が適切に運用されるよう、文科省に対し今一度全国に通達・発出することを求めていきます。

また、文科省の方では毎週いずれかの都道府県に赴き、教師や教育委員会を対象としたいじめ対策についての研修を行っていますが、地域でこれだけ意識の差がある状況では、ランダムに行っていては効果が最大限にでているとは考えにくい状況です。

例えば、今回このような事件があったのであれば、旭川市や札幌市などに、すぐにいじめの調査に関する研修会やシンポジウムを開くなどの対応が必要だと思います。文科省にはそのような積極的な行動を求めていきます。

縦割りによる情報共有不足や連携の問題学校や教育委員会の評価機関の必要性地方自治体と国の役割分担については、こども庁構想のほうでも議論が先行していますので、いじめ防止対策推進法がしっかりと機能するようより一層働きかけてまいります。

 

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■山田太郎略歴
参議院議員(2期目)。表現の自由を守るために国会内外で活動を行う。表現の自由を守る会代表。

◇経営者として
 ・ネクステック株式会社 代表取締役社長(CEO・創業社長)
 ・パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション米国本社副社長(米国NASDAQ上場企業)等

◇教育者として
 ・東京大学 大学院工学系研究科 非常勤講師
 ・早稲田MBAスクール客員准教授(早稲田大学 大学院商学研究科ビジネス専攻)
 ・東京工業大学 大学院社会理工学院研究科 特任教授 等

◇政治家として
 ・参議院議員(2期目)
 ・内閣委員会 委員
 ・政府開発援助等に関する特別委員会 委員
 ・国民生活・経済に関する調査会 理事
 ・議院運営委員会 委員
 ・議院運営委員会委員図書館運営小委員会 委員