ChiBiz Inside no.030


日本製品の信頼度

いま、かつてないほど中国では「反日」感情が高まっている。今回は「尖閣諸島」を巡ってのいざこざだ。通りに面する日本料理店が襲撃され、日本車がその象徴として壊される。

現地の日本人は、反日暴動に巻き込まれないよう地元警察から指示を受けている。毎回、どこで暴動があるかといった事前情報をもらうのである。そして警察は、暴動を放置しておく場所と厳しく取り締まる場所のメリハリをつけて警備をしているようだ。反日暴動の参加者も武装警察とできるだけぶつからないように、警察の意図を組みながら計画的に行動しているらしい。

こうしたカラクリからか、表からみれば秩序よく暴動が行われているようにみえるので「政府が暴動を首謀しているのではないか」と、しばしば海外メディアからは疑われてしまう。しかし、これは、単に暴動するメンバーと武装警察の暗黙の了解といったところなのだろう。

今回、現地では激しい「日本製品の不買運動」も起こっている。その一方で「文明国がやることではない」と不買運動に反対するメディアや活動家もいる。これまでの中国とは違い、意見が多様化している点は注目に値するだろう。

日本製品ということに関していえば、「中国で日本車が売れないのは中国人の反日感情の現れである」とよく言われることがある。アニメや日本食は中国人には大人気でも、日本車は産業立国「日本」の象徴であり、それだけは乗りたくないという中国人が多いのではとの推測である。

確かに、中国以外のアジア諸国と比較すると、中国では確かに街に走っている日本車は少ないように思う。インドネシアもタイ、マレーシアも日本車だらけ、ミャンマーやモンゴルで走る車はほとんどが日本の中古車だ。

一方、中国ではフォルクスワーゲンなどの欧州車や第一汽車などの中国の国産車が多い。現代自動車と比較しても、日本車の比率は低いようにみえる。けれども、本当に中国人は日本が嫌いだから日本車が売れないのだろうか。

博報堂が2011年に実施した調査によれば、世界各地での評価同様、日本製品は中国の主要都市でも「高品質」との評価を受けている。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2012/02/20120210GlobalHABIT.pdf
ところが、私がみた別の調査では、日本車に対して中国で売れない理由として、「日本車に対して安全性に疑問を抱いている中国人が多い」という理由を挙げていた。

つまりは「高品質だけれども安全性には疑問を感じる」ということか。それって矛盾してないか、ということで中国の知人に聞いてみると、「日本車は高品質で燃費もいい。しかし、燃費がいいのは安全を犠牲にしているからではないか」との意見が返ってきた。「日本車は、ボディーの鉄板も薄くて危険、欧州車の方が安全だ」という声も多い。日本車は「安全性」に問題があり、欧州車は、燃費は悪いが「安全」だというイメージが浸透しているようだ。

こんな意見もある。
「アメリカなどで派手な日本車のリコール騒動が続発していると聞いた。日本車を全車回収するといった騒ぎになっているとか。このような報道やうわさが日本車の安全性への信頼を傷つけているのでは」。福島原発の事故も一因という指摘もあった。「まさか技術の高い日本が」という驚きが「やはり日本はおかしくなってきているのでは」との推測を呼んでいるというのである。

こうした風評ということに関して、ある中国人ジャーナリストが示した見解がちょっとした話題になっている。

韓国の大統領が竹島に上陸したというニュースに関連して、「韓国でも日本に対するボイコット運動が盛んだ」との報道があった。「だから韓国では日本車が走っていないのだ」と。これに対して先の中国人ジャーナリストが、このように反論したのである。

『中国では「韓国で日本車は全く走っていない。日本製品は韓国には全くない」と主張している人がいる。しかし、それは事実ではい。むしろ事実は逆だ。韓国の道路はトヨタのレクサスや日産のインフィニティ、ホンダなどの日本車であふれ返っている。一方、日本で韓国車を見かけることはない。しかし、決して日本人は韓国車の不買運動をやっている訳ではないのだ』

多くの中国人は、日本や韓国に行ったことがない。だから、中国では、どんな報道がされるかで世論が大きく動いてしまう。かつては、共産党や政府に近い筋の報道が表の報道として強い影響力を持っていた。しかし徐々に、「政府報道は信じられない」と思う人が増えたのか、口コミ情報が重要視されるようになってきた。ネットの普及でそれが加速し、いまや政府も抑えきれない程の力になっている。

その一方で、正しい報道や事実を伝えようとするジャーナリストも表で発言するようになってきた。こうしたことで、情報の質も上がってきつつあると感じる。

そうなっていけば、やがて悪しき風評はなくなり、日本車は売れるようになるのだろうか。日本人の多くは、「日本製品は高品質で安全だから、世界に受け入れられるはず」といまだに信じている。だが、本当にそうなのだろうか。

確かに、中国人が抱く日本製品に対するイメージのなかには、首をかしげたくなるものもある。だが、そんな風評のなかにも、いくばくかの真実が含まれていると思えないでもない。ここは謙虚にわが身を振り返ってみることも必要なのではないかと思うのである。★
(山田太郎)

〓お詫びと訂正〓
『ChiBiz Inside no.028』の「潜入!中国の自動車工場」の記事の中(実際に取引している金額)で誤りがありました。以下の通り訂正し、ご迷惑をおかけした関係者の方々、読者の皆様に深くお詫び申し上げます。
誤)1000~1200万元(約100~120万円)
正)10~12万元(約100~120万円)