2021.1.27
ロシア国内での日本アニメ(「デスノート」等)の放映禁止について:外務省からの回答
2021年1月21日、
「ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの裁判所は20日、「デスノート」や「いぬやしき」など日本の複数の人気アニメについて、暴力や死など過激なシーンの描写が視聴する未成年者らの成長に悪影響を与えるとして、露国内での放映や配布を禁じる決定を出した。」
との報道がなされました(産経新聞)。
山田太郎事務所では本件について外務省に問合せをしておりましたが、本日(2021年1月27日)、ご回答をいただきましたのでご報告します。
Q1
上記産経新聞の記事の内容は事実か。
A1
⑴ 現時点でサンクトペテルブルク市コルピノ地区裁判所による判決文が公開されていないためロシア国内の報道に基づく回答になりますが、1月20日付けサンクトペテルブルク発イタルタス通信によれば、同日、サンクトペテルブルク市コルピノ地区裁判所は、「デスノート」及び「いぬやしき」を掲載しているポータルサイト「JUT.SU(https://jut.su/)」へのアクセスをブロックする判決を出しました。
⑵ また、同日付けイタルタス通信は、原告であるサンクトペテルブルク検察当局が訴えを起こした理由について、検察当局の発言として、当該アニメには未成年者の心の健康、道徳的・精神的育成を害する破壊的な影響を及ぼす情報が含まれているにもかかわらず、当該サイトが全ての年齢層を対象としていること、また、検察当局は、あるサイトが児童には適さない情報を含んでいる場合、当該サイトの所有者に対し、裁判に至る前にしかるべき年齢制限に関する情報を掲載するよう要請するが、当該サイトの所有者が国外にいるため、そのような要請手続が行えず、当該サイトへのアクセスをブロックしなければならないと述べた旨報じています。
①デスノート(出典:日本テレビHP)
②いぬやしき(出典:いぬやしき公式サイト)
Q2
今回禁止されたアニメの全タイトルは。
A2
1月20日付けサンクトペテルブルク発イタルタス通信によれば、同日、サンクトペテルブルク市コルピノ地区裁判所がアクセスをブロックしたポータルサイトに掲載されているアニメは、「デスノート」、「いぬやしき」(以上、ポータルサイト「JUT.SU」)、「東京喰種トーキョーグール」及び「エルフェンリート」(以上、ポータルサイト「Yummy Anime」)の4作品です。
③東京喰種トーキョーグール(出典:東京喰種トーキョーグール公式サイト)
④エルフェンリート(出典:GYAO!ストアHP)
Q3
これまでに裁判所の決定でロシア国内ですでに放映禁止となったアニメがあるか(あればその全タイトル)
A3
在ロシア日本国大使館が調査した限り、そのような裁判所の決定はありませんでした。
Q4
現在、今回のアニメとは別に、裁判所に放映禁止が申し立てられているアニメがあるか(あればその全タイトル)
A4
在ロシア日本国大使館が調査した限りでは、2月、サンクトペテルブルク市コルピノ地区裁判所が「ナルト」及び「異種族レビュアーズ」について今回と同様の審理を行う予定です。
⑤ナルト(出典:テレビ東京HP)
⑥異種族レビュアーズ(出典:異種族レビュアーズ公式サイト)
Q5
今回禁止されたのはアニメの放映・配布とあるが、禁止されたタイトルについては成人の一切ロシア国内では視聴・購入できなくなるのか
A5
1月20日付けサンクトペテルブルク発イタルタス通信によれば、同日、サンクトペテルブルク市コルピノ地区裁判所は上記の4つのアニメ作品を掲載しているポータルサイトへのアクセスをブロックする判決を出しました。また、同日付けラジオ局「Govorit Moskva」によれば、サンクトペテルブルク裁判所合同報道官は、「デスノート」自体が禁止されたわけではない旨発言しており、当該アニメ作品自体のロシア国内での視聴が禁止されたわけではありません。
Q6
今回のサンクトペテルブルクの裁判所の決定は確定的なものか、それとも上級審でさらに判断が行われて結論が覆る可能性があるのか
A6
上級審への提訴は可能です。また、今後の見通しについては予断することはできません。
Q7
上記産経新聞の記事では、「露検察当局が複数のアニメの配布を禁止すべきだとする請求を裁判所に行っていた」とあるが、今回のロシア裁判所の決定は、どのような法律上の根拠によるものか。
A7
インターネット上の裁判ポータル(https://www.sudportal.ru/page/spsudtv)によれば、裁判中に、2010年12月29日付け「児童の健康及び発達に害を及ぼす情報からの保護に関する」連邦法No.436が引用されました。
Q8
今回のサンクトペテルブルクの裁判所の決定に対して、何か日本国として抗議などを行ったのか、または、行う予定があるか。
A8
裁判所の決定に対して日本政府は抗議していません。現時点で今回の判決文は公開されていないところ、今後について予断することは差し控えます。
Q9
国連の取り組みや日本国が批准している条約に基づく取組みで、未成年者の保護その他の目的のために、暴力や死など過激なシーンの描写を禁止すべきといったものがあるか。
A9
⑴ 児童の保護等を目的とした暴力や死など過激なシーンの描写を明示的に禁止している国連の取組や人権条約については承知しておりません。
⑵ その上で申し上げますと、我が国が批准している児童の権利条約第17条は、「締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認め、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料、特に児童の社会面、精神面及び道徳面の福祉並びに心身の健康の促進を目的とした情報及び資料を利用することができることを確保する。このため、締約国は、(中略)第13条及び次条の規定に留意して、児童の福祉に有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを奨励する。」と規定しております。(参考:第13条は、表現の自由に関する規定、第18条は、児童の養育・養護に関する規定)
⑶ 「子ども・若者を取り巻く有害環境等への対応」につきましては、内閣府が子供・若者育成支援施策の中で取り組んでいると承知しております。
以上
トップ画像:デスノート(出典:日本テレビHP)