2015.5.13
国会議員717人で唯一!反対はタブーの議案にひとり反対した理由【第37回山田太郎ボイス】
本日、緑の気候基金法について、参議院本会議で採決がありました。
この法案に対して、全国会議員の中で唯一私だけが、反対の立場を取りました。
皆さまからも理由についてのお問い合わせを頂いておりますので、
ここで、その経緯と理由をご説明させて頂きます(予算等の金額は概算)
■ 緑の気候基金法って何!?
まず、緑の気候基金についてご説明させて頂きます。この基金は、
発展途上国の温室効果ガス削減と気候変動への適応を支援する多国間の基金です。
今回のこの法案は、この基金に対して、基金総額102億ドルのうち、
15億ドルを拠出するというものです。
今回、衆参両院の717名のうち、唯一私だけが反対を致しました。
本来であれば反対するべきような法案ではないのですが、
(私もそう思っていました)が、なぜ反対をしたのかと言うことを
5つの観点からご報告致します。
■ 拠出金額がこんなに大きいのに、ほとんど議論されない国会の不思議
今回の拠出金額は総額15億ドル(1,800億円)とかなり大きな金額です。
今年度の外務省の予算が6,900億円(うち、ODAが4,200億円)ということを考えれば、
この数字の大きさがこれは明らかなのではないでしょうか。
ところが、国会ではこの件についてほとんど議論されていません。なんと、
参議院で議論されたのはわずか3時間です。皆さんから頂いている税金を
使うに当たって、額の多寡は関係ないのかも知れません。それにしても、
簡単には見過ごすことのできない金額だと思いますが、
皆さんはどうお考えでしょうか。
■ 使用用途は具体的に決まっていますか?外務省「決まっていません」
今回のレクチャーの中で、驚くべき回答がありました。それは、
この15億ドルの用途が、具体的にまだ決まっていないというのです。
今回の資金は、基金に提供するので、基金がその先の具体的な使い道を
考えるということなのです。その監視も、24名のうち1名の理事を出すので
安心だというのがそのロジックです
通常であれば、何に使うかのある程度の大枠が見えてから、それに対して
予算をつけるというのが普通なのではないでしょうか。きちんと見積をしなければ、
もしかしたら、日本の拠出金は15億ドルでは少ないかもしれません。
先に金額ありきでは、予算を消化するための基金になりかねません。
特に、今回のように総額が大きいものでは当然だと思っています。
■ 温室効果ガス排出量の多い国を巻き込まない不思議
実は、中国・インド・インドネシア・ブラジルの4ヶ国の温室効果ガスの
排出量は全世界の35%以上に相当しています。そして、この数字は
ロシアを除く先進国の合計額よりも大きいのです。
当然ですが、温室効果ガスの排出量を減らすためにはこういった
いわゆる新興国の自主的な努力と協力が不可欠です。しかしながら、
今回の基金の枠組みは新興国ではなく、それ以外の発展途上国に
向けられているもので、効果が最大限発揮されるかは疑問に思っています。
そして、新興国のこの基金に対するコミットメントもまだまだ不十分です。
ナウルやパラオといった、水没してしまうかもしれない国に対して、
過去に温室効果ガスを排出してきた先進国の責任として支援を行うことは重要です。
しかしながら、いくらそうした国々に対する支援を行ったところで、
温室効果ガスの排出量は根本的に削減出来ません。
今回の基金は、こういったものをごちゃまぜにして議論しているようですが、
私は、「新興国を巻きこんだ温室効果ガスの削減」と「現実的に温暖化に
よって被害を被っている国々への支援」は別々のスキームでおこなうべきだと考えています
■ 日本は既に多額の資金援助を行っている。そちらの検証が先!
日本は直近3年で公的資金130億ドル(1兆3,000億円相当)を既に支援しています。
まずは、その効果を先に検証するべきだというのが私の主張です。そのうえで、
資金面での不足が明らかなのであれば、その分を国際社会と協議し、
協力していくというのが正しい姿だと思います。
環境分野は、日本が世界に対してイニシアティブを発揮できる数少ない分野です。
過去の先例に従って、一定割合のお金だけを出せばいいというのでは無く、
優れた技術の供与や人材の派遣、必要なところに集中して資金を投下する手法など、
日本は本当に相手国にとって価値のあるサービスを提供できるはずです
(余談ですが、各国のODAの実態を見て、昔ほどではないですが、
資金援助はまだ不透明にお金が使われているという気がしています)
■ 国会無視で国際社会への先行アピールは、政府の常套手段?
実は今回の15億ドルの金額については、国会での議論をする前に、
昨年秋に安倍総理が国際社会に向けて表明しています。外交は政府の
専権事項ではありますが、このように通常と比べて遥かに大きな金額が
動く場合は、事前に国民や国会に対してきちんと説明をすべきだと思っています。
演説の中では「国会の承認をえられれば」という条件をつけていますが、
現在の与党多数の国会の状況では、それは、たんなる言い訳に過ぎません。
果たして、選挙の時、国民の皆さんはそこまで考えた上で、
与党に投票をしたのでしょうか。せめて事前の説明と議論は
あってしかるべきでしょう。
実は私は今回の件は3回目だと思っています。ISILによる日本人殺害の
一因にもなったとされるエジプトでの中東政策の合意文書にも
「国会での承認を前提」として3,000億円を提供していますし
(実はスピーチのなかでは、その前提すら言い忘れています)、
以前ODA委員会で私が指摘しましたが、9000億円のODAの
債務免除を国民に報告しない形でやっていた(指摘後は白書で
国会に報告されることになりました)ということもあります。
ODAについては、ODA委員として、また、世界のODAの現場を見てきた身として、
私自身は諸外国に対して影響力を発揮するという点で有効なツールである
と考えています。しかしながら、現在のこの国内状況の中で国外に対して
ポンポンお金をだしていいのかという意見が多いことも知っています。
そういった批判に答えるためにも、このODAの支出はきちんと精査して、
有効な形で提供する、有効でなければ提供しないということが
必要なのではないでしょうか。
本法案については、2月から何度も法案の提出者である外務省から
レクチャーを受けました。しかしながら、納得のいく説明を
もらうことは出来ませんでした。
本基金について、私自身は必要なお金であれば拠出をするべきだと考えています。
また、国際的な協調の枠組みであること、先進国として地球環境保護に対する
責任を果たすべきであることから、最後まで悩み抜きましたが、最終的に
納得のいく説明が得られなかったため、反対致しました。
また、通常であればこういった法案は党議拘束がかけられ、私自身の信条に
反する投票を行わなければならなかったことでしょう。元気会では、
議員一人一人が国民の代表であり、信念に基づき国会で投票することが出来ます。
こういった政党にいられることを本当にありがたく思います。
※文中で一部150億ドルと記載していた箇所を15億ドルに修正しました。
日本円にして約1800億円という金額については変更ありません。(5/15)