2020.9.4
国会図書館デジタル化の実情!非公開エリア含めた視察レポート(中編)
前回のブログ「デジタル化能力5%弱?!国会図書館デジタル化実現へ大きく前進!」では、国立国会図書館のデジタル化の現状と課題、予算化に向けた動きについてお伝えしました。今回は先月行った、国会図書館の視察の様子をお伝えします。普段は見るこのできない場所をたくさん見てきましたので、非公開エリアも含めて皆さんにお伝えしたいと思います。
国会図書館のスキャナーの実情を視察
まずは、視察の目的でもある、デジタル化のためのスキャン技術を見学しました。現在、国会図書館で所有するスキャナーは2台。一つは平面型スキャナーで上部に2台のデジタルカメラのようなものがあり、両側から撮影することで、厚い本でも陰にならず撮影できるそうです。この機械はフランス製で、1台600~700万円。1冊200ページの本の場合、平均15分でスキャンができるそうです。これまでの古いスキャナーとは異なり、リアルタイムでページの様子をみたり位置の調整をすることができ、効率良く作業ができるとのこと。ただ、ページを自動でめくる機能はなく、人が1枚ずつめくってスキャンしています。
もう1台は、斜めに本を置いて、本を押し付ける圧力を自動で調整しながら撮影できるタイプです。しかし、こちらもページをめくる作業は自動ではないそうです。国会図書館では基本的にレーザーディスクなどの取り扱いが難しいもののスキャンを行い、その他は外注しています。外注先ではもっと古いスキャナーを使っているところが多いとのこと。
写真)自動で圧力を調整しながらスキャンするタイプのスキャナー
私も、「もっと効率的なスキャナーはないのか」と思っていたところ、Twitterで、1時間あたり3000ページのスキャンが自動でできるスキャナーの存在を教えてもらいました。この情報について早速国会図書館に確認したところ、すでに2017年に導入を検討し、その時は採用を見送ったとのことです。価格が2000万円と高額なこと、面積が小さな本はスキャンができないこと、結局人の監視が必要なことなどが主な理由だそうです。
国会図書館の地下8階に潜入
次に移動したのは新館地下8階。地下1階から地下8階まではすべて書庫として使われています。地下8階から見上げるとこんな感じです。地下でも光がうまく取り込まれるような設計で、1日中地下で働く職員の方も、地下にいることを感じにくくなっています。私も地下8階にいるという感覚は全くしませんでした。ちなみに、本館の方はコンクリート打ちっぱなしのモダンな設計だと思っていましたが、前川國男氏の建築だそうです。
1959年発売の「少年サンデー」初版も美しく保存!
そして、私が16年前に寄稿していた雑誌『日経ものづくり』も見せてもらいました。これだけ古い雑誌もすべて綺麗な状態で保存されていました。蔵書を貸し出す際は、このベルトコンベアーに乗せて地上に運ばれます。
次に見せていただいたのは、漫画の書庫。なんと大変貴重な1959年発売の「少年サンデー」初版を手に取って見せていただきました。当時は30円で発売されていたんですね。長嶋茂雄さんなどの野球選手や相撲が載っていて今とはずいぶん違うものでした。破損している箇所は丁寧に補修がされていて驚きました。
江戸時代の破損が激しい書物も職人技で修復
最後に、資料保存課を見学させてもらいました。ここでは16人の方が破損した蔵書の補修、書庫環境の整備を行っています。紙に付着して本を破損させてしまう虫を定期的に調査したりもしているそう。
今回見せていただいたのはごく一部ですが、繊維が劣化してバラバラになった書物や、江戸時代以前の虫食いが酷い地図など、1点1点手作業で修復される技術はまさに職人技でした。
職員の方は「修復に使用する糊も100%でんぷんで手作りし、今後100年でも状態を保って保存できるように修復している。」とおっしゃっていました。
写真)繊維が劣化してバラバラになった書物
写真)江戸時代の巻物。表紙の裂のほつれを糊でとめているところ
写真)ぼろぼろで触れられなかった宮島誠一郎の手紙。裏から和紙で裏打ちをして、業者が触れるようになってからデジタル化をする予定とのこと。(手前側)
写真)紙を好んで害を与える虫たち。一番困るのはシバンムシの幼虫だそう。必ず殺虫処置をしてから書庫にいれるなど、細心の注意が払われていました。
視察を終えて
私も立法調査業務で毎日のように利用する国会図書館ですが、初めて知る部分が多くありました。コロナ禍でデジタル化資料へのニーズが一層高まっていますが、国会図書館のデジタル化は早急に進めなくてはいけない課題であるとより強く実感しました。また、今回デジタル化の予算がつけば、その予算を障がい者雇用に充てることができないかも検討していきたいと思います。