2025.7.14

中国の表現規制の実情

中国で、BL小説を投稿した女子大生等が一斉摘発されたとの報道がなされましたが、これまでの中国の状況からすると起きるべくして起きてしまったことと言えます。以下、これまでの中国の実情について、説明します。

日本では、表現の自由が保障される前提として、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」との憲法上の規定があります。どのような思想・良心を抱こうが自由であり、国家が制限・禁止してはなりません。

しかし、中国では、国家にとって不都合・有害な情報を国民に知らせないよう国内のネットを世界から隔離し、思想統制を行っています。そのため、中国のインターネット自由度は世界最下位です。

中国の国家的インターネット検閲システムは金盾(グレートファイアーウォール)と呼ばれ、Facebook・YouTube・X(旧Twitter)・LINEといったSNSを軒並みブロックしているほか、政治的問題、政府に不都合な報道、反体制派からの情報発信、政治的啓発等を遮断しています。加えて、VPNの使用には巨額の罰金が科されることになっています。そして、SNS・VPNの禁止を徹底するため、通行人のスマホを検査するということも行われています。

また、中国文化部は、2015年に、「未成年者を犯罪に誘い、暴力や欲情、テロ活動を誇張する内容が含まれる」という理由で、「デスノート(Death Note)」「東京グール」「進撃の巨人」「ソードアート・オンライン」など日本のアニメ38作品を配信禁止にしています。そして、同時期に8つのマンガ関連サイトが閉鎖されています。

それだけでなく、2021年からは、映画・テレビ・ゲーム・配信アニメについて、それぞれ国家による検閲が行われています。

中国では、国家にとって不都合・有害な情報を国民に知らせない取組みが徹底され、表現の自由、インターネットの自由、通信の秘密がありませんが、そのために起きたのが“「社会的価値観」を守るための創作表現者の摘発・逮捕”です。

私は、表現の自由が重要である、社会的法益を守るための表現規制はすべきでないと主張してきましたが、その根底には、思想・良心の自由という人間にとってもっとも大切なものは何としても守らなくてはならいという想いがあります。

日本が中国のようにならないよう、個人の権利利益を侵害しない限り、不快な表現・気に食わない表現も含め、表現の自由を守っていきたいと考えています。

注:
以下画像は、私がこれまでYouTube番組や各種講演等で中国の実情について説明に使ってきた資料を至急、加筆・修正しました。