2021.4.20
参議院本会議 〜デジタル改革関連法案〜(2021年4月14日)
(以下未定稿です)
〇山田太郎君 自由民主党の山田太郎です。
自由民主党・国民の声を代表し、ただいま議題となりましたデジタル改革関連法案について質問いたします。
菅総理の力強いデジタル庁設置の号令の下、政府、自治体のデジタル化が大きく推進し、民間のDXも加速しました。
生産性の向上、国際競争力の強化、デジタル化の目的については様々な意見があります。
しかし、私は、最も大切なのは国民目線で、誰もがデジタル化の恩恵を受けること、国民全員が利便性の向上を実感できることを第一の目的とし、誰にとっても幸せな社会をデジタル化で実現しなければならないと考えています。
デジタル社会は、ユーザーであった大勢のアマチュアが自らコンテンツを制作し、ネット上に投稿する、UGCの時代であるとも言えます。さらに、ネット上のプラットフォーム等を介し、自分で仕事の内容を選び、それを好きな時間に行うといった働き方が広まっており、フリーランスの時代であるとも言えます。
ただし、このような変化によって、一部のプロや権利者のための法律であった著作権法、雇用契約を中心とした労働法制、競争法としての下請法などにゆがみが生じ、時代に合わせたそれらの見直しが喫緊の課題です。
また、デジタル社会は、国民の声が政治に直接届くデジタル民主主義の時代でもあります。
実際、このデジタル化の恩恵により、私自身、さきの参議院選挙で、組織もなく、支援団体もなく、資金援助もなく、ネットのみで五十四万票を預かりました。
選挙以外でも、ネット署名やSNSによって届けられた声が政治を動かし始めています。
参議院自民党が立ち上げた不安に寄り添う政治のあり方勉強会では、昨年十二月、SNSを活用したコロナ禍での生活不安アンケートを行いました。八日間で五千人を超える方々からいただいた一万四千件もの意見を提言に反映させ、菅総理に申し入れました。それが孤立孤独担当大臣の設置につながったことは大きな成果です。
さらに、現在、自民党の有志で進めているチルドレンファーストの子どもの行政のあり方勉強会、こども庁創設に向けてでも、本年二月にSNSを活用したアンケートを実施し、二週間で一万七千人を超える方々から五万件近くもの意見をいただきました。意見の八割が女性、また半数以上が二十代、三十代という結果となり、画期的な政策アンケートになったと思っております。この結果を踏まえて、子供に関する問題の一元的な窓口と問題解決の司令塔が必要だという観点から、こども庁創設に向けた緊急提言をまとめ、四月一日、菅総理に提出いたしました。これらは、国民の声が政治に直接届けられた結果です。
このようなデジタル化による新しい社会、新しい時代について、菅総理はどのようにお考えでしょうか。総理の御見解をいただきたいと思います。
国民全員がデジタル化による利便性を実感できるためには、平時の便利、有事の安心を旨として、国民目線での行政効率化と新しい価値の創造が必要です。そのためには、デジタルガバメント、電子政府のみの議論ではなく、医療や介護、教育や防災といった国民への恩恵が大きい準公共分野等へのデジタル化も重要です。
医療や介護では、カルテや処方箋データを活用するPHR、パーソナル・ヘルス・レコード共通プラットフォームが実現できれば、個人個人に合わせた健康増進プログラムや介護プログラムなどを進めることもできます。さらに、新しい治療法の確立や新薬の開発につながれば、人の命をより救うことにもなります。また、既往歴やウエアラブルなどのデータを活用し、診療、事務処理なども可能となり、医者が患者と向き合う余裕が生まれ、三時間待ちの三分診療といった課題も解決できるものと考えます。
教育では、GIGAスクール構想で一人一台端末が配られていますが、それだけでは教育のデジタル化とは言えません。デジタル化は、黒板に知識を書いて全員に同じことを教える従来の教育から、生徒の希望や能力に応じた新しい教育に変えるチャンスでもあります。教育のデジタル化で、学びたい子供の好奇心を強め、一方、学びが苦手な子供は、分かりやすく、繰り返し何度でも学ぶことができるようにする。そのためには、教師の役割も変えていく必要があります。生徒に寄り添って、優れたコンテンツを選び、学習計画を立て、進度を確認し、グループ活動を活性化させるファシリテーターのような役割が求められます。
防災では、迫りくる首都直下型や南海トラフ等の大型地震、毎年のように起こる水害等への対応が不可欠です。しかし、日本では、防災のために共有されるべき基本情報が定められておらず、災害が発生すると電話やファクスを用いてマンパワーで情報を収集しているというのが現状です。ルールを定め、デジタル化によって災害時における情報の即時共有を可能とすることにより、一人一人の状況に応じた避難指示の発令、避難所の状況に応じた医薬品、物資の供給といった、命を最も大切にした防災が実現できます。そのための防災情報のプラットフォームの構築と、それをつかさどるデジタル防災情報の専任部署の設置は、待ったなしだと考えます。
以上のような医療、介護、教育、そして防災のデジタル化について、総理はどのような見解をお持ちでしょうか、お聞かせください。
今、政府、自治体のクラウド利用の議論が行われています。一方、国民の情報や基盤データを海外企業に預けてしまってよいのかという懸念の声があります。コストパフォーマンスや実績から、海外企業のクラウドを採用すべきだという声もありますが、政府専用のデータセンターを国内に整備し、そこに情報を置くべきとの意見もあります。海外では、国主導で内製化している事例もあります。
そこで、平井大臣に、国の情報システムにおける国産クラウドの採用と政府データセンターの国内整備の可能性について御見解をいただきたいと思います。
さらに、デジタル分野の人材育成も必要です。新たなSTEM教育も重要ですが、これまで理系、技術系の優秀な人材を輩出してきた日本固有の制度、高専、高等専門学校にも注目すべきです。高専卒業生には、準学士ではなくバチェラーという海外で通じる学位を与えるなどして、国内外での地位を向上させ、AIやディープラーニングなどで最先端を走る海外の大学、研究機関でも活躍できる環境を整えることも大切だと思っております。
そこで、萩生田文科大臣に、高専生の地位向上についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
医療・介護DXによるQOLの飛躍的向上、教育のDXによる個別最適な学びの実現、防災DXによる人命救助等、デジタル化は多くの光をもたらしますが、しかし、進め方を誤れば影を広げることにもなります。
デジタル格差への憂慮、個人情報の漏えいや目的外利用への危惧、監視社会に対する不安、デジタルプラットフォーマーの情報の独占、寡占への懸念。強いものだけがデジタル化の恩恵を得る社会にしてはなりません。
そして、誰一人残さないという考え方の下、デジタル対応が困難な人へのアウトリーチやユニバーサルデザインということを進めることが不可欠です。また、デジタル政策を進める政府への信頼を高めるためには、エストニアのように、自分のデータを管理することができ、他人にどう使われたかを自ら確認することができる仕組みも検討すべきです。
まず、このような危惧や不安の払拭の方法についての見解を菅総理にお伺いします。
さらに、その上で、セキュリティーやデータルールの整備の問題について伺います。
総合的なトラストサービスによるセキュリティー対策をどのような基準で行うのか。eIDASといった欧州規格、米国のNIST基準いずれに乗るのか、それとも日本独自の基準でいくのか判断するべきときです。ここを誤れば、日本のデジタル化は世界から周回遅れとなるおそれがあります。逆に、しっかりと対応できれば、日本主導でグローバルスタンダードをつくることもできます。
一方で、個人情報や著作権データに関する法律がデジタル技術の社会実装を阻害してきたことへの対処も必要です。
例えば、ファイル共有ソフトの開発者が著作権侵害幇助で逮捕、起訴されたウィニー事件、画像をリツイートした人が著作者人格権違反と判断されたスズラン写真事件、いずれも我が国のデジタル技術の社会実装に逆行するものであります。また、個人情報や著作権のルールへの抵触を懸念し、日本はAI開発が遅れたといった指摘もあります。
そこで、これらの問題を踏まえ、デジタル化推進に当たって日本がイニシアチブを取り、グローバルスタンダードをつくっていく上での懸念や不安の払拭、特に著作権や個人情報をめぐるルール整備について、平井大臣、萩生田大臣に見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(菅義偉君) 山田太郎議員にお答えをいたします。
新しいデジタル社会の出現についてお尋ねがありました。
御指摘のように、デジタル化によるネットワークやデータの利活用を進めることで、暮らしや働き方を始め文化、経済、そして政治に至るまで、あらゆる分野において創造的で活力ある発展が可能となる、このように考えます。
政府としては、そういった社会変革などを踏まえながら、誰もがデジタル化の恩恵を最大限受けることができる世界に遜色のないデジタル社会を実現してまいります。
準公共分野のデジタル化についてお尋ねがありました。
御指摘のような医療、介護、教育、防災などは生活に密接に関連した重要分野であり、デジタル化によるサービスの多様化及び質の向上が進むように、政府としても積極的に取り組む必要があると考えております。
このため、デジタル庁がこうした分野においても情報システム整備を統括することを通じて、個人の生涯にわたる健康情報などの管理や学習データの活用、災害時の医療に係る情報の提供など、国民の皆さんにデジタル化のメリットを実感いただけるよう、取組を進めてまいります。
デジタル化がもたらす危惧や不安の払拭についてお尋ねがありました。
今回の法案では、誰一人取り残さない、この考えの下に、情報の格差を着実に是正する措置を講じることといたしております。また、法案では、政府の基本方針に個人情報の保護を盛り込むことを規定しております。
具体的には、身近な場所で身近な人から機械やサービスの利用方法を学べる環境づくりや、行政機関等が保有する個人情報を本人が訂正や利用停止を請求できる仕組みを通じて危惧や不安が払拭されるよう、政府として取り組んでまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣平井卓也君登壇、拍手〕
〇国務大臣(平井卓也君) 山田太郎議員の質問にお答え申し上げます。
国の情報システムにおける国産クラウドの採用と政府のデータセンターの国内整備の可能性についてのお尋ねがありました。
現在、政府情報システムの共通的な基盤機能を提供するガバメントクラウドの検討を進めているところです。
このガバメントクラウドについては、複数のクラウドサービス事業者が提供する複数のサービスモデルを組み合わせて相互に接続して構築する予定であります。クラウドサービスの選定基準としては、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度であるISMAPに登録されたサービスから調達することを原則とし、不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて、最新かつ最高レベルの情報セキュリティーが確保できること、データセンターを国内に置くことを含め、契約から開発、運用、廃棄に至るまで、国によってしっかり、しっかりと統制できることなどを検討しております。これらの要件を満たす事業者から、国内企業か外国企業、外国企業であるかによらず選定されることとなると考えます。
また、政府のデータセンターについて、各府省がそれぞれ独自のシステムを整備、運用している現状から脱し、グリーン社会の実現、事業継続計画、セキュリティーの確保の観点から、段階的に全体最適化を図ることを現在検討しておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣萩生田光一君登壇、拍手〕
〇国務大臣(萩生田光一君) 山田議員にお答えいたします。
まず、高専生の地位の向上についてお尋ねがありました。
高等専門学校は我が国独自の教育制度として、五年一貫の実践的技術者育成を行っており、その卒業生は産業界から高く評価をされています。近年ではその技術力や創造力を生かし、自ら起業する学生も出てきております。
さらに、高専教育は海外でも高い評価を得ており、国立高等専門学校機構ではこの高専教育の海外展開を進めています。既にモンゴル、タイ、ベトナムで導入が始まっており、今後、これらの取組が海外での高専生の更なる地位の向上につながるものと考えています。
なお、高専卒業生への学位の授与については、学位の国際通用性等を踏まえた慎重な検討が必要と考えていますが、現状でも本科卒業後に専攻科を修了した者は大学改革支援・学位授与機構から学士の学位を取得することが可能です。また、本科卒業後に大学に編入学し、学士の学位を取得することも可能です。
文科省としては、今後とも高等専門学校の高度化、国際化に向けた取組を支援することとともに、高専生が世界に通じる人材であることを積極的に発信するなど、地位の向上に努めてまいりたいと思います。
次に、デジタル化の推進に当たっての著作権をめぐるルールの整備についてお尋ねがありました。
デジタル時代に対応して、著作権制度や政策の在り方を見直すことは重要であり、これまでもデジタル化、ネットワーク化の進展等の社会状況の変化に的確に対応するため、著作権法の改正を行ってまいりました。
具体的には、イノベーションの創出等を促進するための柔軟な権利制限規定の創設やリーチサイトの対策、侵害コンテンツのダウンロード違法化など、デジタル時代に対応したコンテンツの利活用の促進と著作物の保護のバランスの取れたルール整備を行っています。
また、今国会には、図書館関係の権利制限規定の見直しや、放送番組のインターネット同時配信等の権利処理の円滑化を内容とする著作権法改正案を提出をしたところです。
今後、技術の進展に伴う著作権をめぐる国際的な動向を踏まえ、デジタル化、ネットワーク化による環境の変化に対応できる制度を構築することが重要であると認識しております。
引き続き、デジタル時代に対応した著作権の在り方について積極的に検討してまいります。(拍手)