2020.11.9
「AMANO SCOPE―政治の世界に変革をもたらすデジタル化の波―」(後編)
先日、株式会社FAプロダクツ代表取締役会長の天野眞也さんのYouTube番組「AMANO SCOPE」に出演しました。動画が配信されましたので、是非ご覧ください。「政治の世界に変革をもたらすデジタル化の波」
放送に先立ち天野さんと行った事前打ち合わせの内容もすべて公開します。
■政治家からみたさまざまな産業
山田:産業としては、政治から見ると、それはたぶん大きいのは、自動車の日本におけるGDPというかシェアは高いから、これが本当に電気自動車になるだろうと(?)。世界に見た場合には電気自動車にしないともう売れないんですよ。前も言ったかもしれないけど、インドの山奥、アフリカの山奥で、ガソリンスタンド作れるかって言ったら作れない。電線なら張れるからね。
そうすると買う人いないんだもん。実際は世界的に見ても、ガソリン車が中心で走ってるのは日本だけになっちゃったから。中国、アメリカも。ヨーロッパはガソリン車が禁止に・・?
エネルギー効率から言ってもすごく損なんですよ。電気っていうのは、ベース電源が必ずあって、夜間とか余ってるから、蓄電池とかそういうものの応用によっては、事実上タダで仕入れられる。
天野:今安いですもんね、電気自動車はランニングが。
山田:ただ、日本の場合には規制産業になっていて、いわゆるエンジン車しか認めないみたいな施策をとったりしているから、エンジン車を持っているTOYOTA、日産が独占。エンジンは危険であると。確かに爆発させてるからね、危ないということで規制がかかってたんだけど、電気自動車が主流になってっちゃうと誰でも作れちゃうから。東芝も日立もテスラもへったくれもみんな作れちゃうから。
中心モジュールってないんですよ。モーターが主じゃないので、電気自動車は。バッテリー技術がこの間圧倒的にみなさんの専門家もしれないですけど、進んでますから300kmも平気だから。
天野:そうですね、今もう全然それくらい走っちゃいますね。
山田:そうなんですよ。あとは、政治の方の改革があって、今例えば電気の値段[2] はもっと下がっちゃうので、今あれでしょ、知ってると思うけど、100Vとかを勝手に提供するから高く付いちゃってるんだけど、6600Vを、そのままダイレクトに電圧器にかけちゃって、100Vに落とすのと買ってかんたんなんですよ。
それにプラス、蓄電池の移動っていうのができるようになれば、蓄電池を交換するサービスっていうのができてくるから。そうすると充電時間なんて関係ないんですよ。
天野:入れ替えてパッと。
山田:そうそう。ガソリン注入してピュピュピュと液体作り変えるみたいに、電池はどうしても電極を使って中で化学反応を起こして充電するためには時間がかかっちゃうんだけど、充電池入れ替えるなんていうのは価格が合っちゃえば超簡単だから。しかもその値段は、夜間の全く使われていない、しかも6600Vっていうタダ同然みたいな。100Vの家庭のワンマイルですごくお金がかかっちゃってるから。
天野:しかも電力なんて負荷とバランスを取らないといけないから、むしろそっちにお金がかかっちゃってますもんね。もう全部の車のバッテリーを充電するって決めちゃえば、別に昔のビールのリターナル瓶みたいな感じで。
山田:そう、それを夜やればいいんだよ。夜なんて電気を捨ててるから。
天野:そうですよね、その夜側の負荷をバッテリー充電に使っちゃって、ビール瓶を所有する感覚がないのと同じくらい、電池なんて入れ替えちゃえば。
山田:そう、一切化石燃料を使わなくなるから、それじゃなくても日本はご存知の通り石炭利用率がすごく高くて世界的に批判されているんですよ。自動車産業がどう生き残るかというのは大問題。
天野:大問題ですよね。この間、30炉くらい廃炉にされたんですよね。発電所を
山田:そうそう。エネルギーの今後のあれが減ってるのと、あとは資源も、いまは鉄を使わないから。鉄鉱石を全然輸入しない。
天野:ああ、もうあるからですか。
山田:そうそう、もう古いビルを壊したり、自動車をあれすると、向こう100年分くらいの鉄がある。
天野:もう鉄鉱石いらないと。
山田:そうそう、そうすると何をするかって言うと、鉄って高炉と転炉っていうのがあるんだけど、鉄鉱石から高炉で作るのがすごい技術。ものすごいエネルギーが必要。だけど、くず鉄から鉄を作るのは簡単。
天野:チョコレートと一緒で溶かして型に入れるだけだから。
山田:そうそう。チョコレートをぐちゃぐちゃってやって作るのは大したこと無い。
全然、電炉と高炉の技術は違っていて、今でも高炉の技術っていうのはスーパーカップしかないんですよ。
日本はお得意技だったんだけど、それはいらないっていうんで、新日鉄かなんかが高炉を閉めたんだよね。世界的には考えられない動きであって。
でもなんでそういうことが起こっているかというと、もうほぼリサイクルでいけちゃうと、100年。それくらい使っちゃったんだよ、これまでに。
だけど、これからどんどん建ててる時代ではないので、あと、まだ世の中で知らされてないけど、政治の世界で大問題になってるのは、これは言っちゃっていいか分からないんだけど、空室率がすごくなってきたらしい。不動産が厳しい。ビルが新規で建てて採算が合うかどうかっていうのは、このまま値崩れるだろうっていうのは言われていて、政治的には一つの課題になってきている。
天野:たしかに、もう絶対なるとしか思えないですもんね。何の違和感もないですね。
山田:そう。何度も言ってるんだけど、アセットを持つっていうのは得策ではなくて、そういう意味では。アセットそのものの価格がどんどん下がっちゃうから。持ったら損しちゃうので。
天野:借りたほうがいいですね!
山田:そう、借りたほうがいい。あとは、幅広く、貸して提供するとか。そういうのはいいんだけど。という時代にも入ってきましたよっていう中で、何をするのって言う。
天野:なるほど、これめちゃくちゃおもしろいですね。神回ができますね。大変ですね、メーカーは。
特に車にぶら下がってる、Tier2とかTier3くらいとかはもう死んじゃいますね。
山田:そうだと思いますよ。
天野:生き残る戦略がかけないです。
山田:ものづくりが物を作らないっていう戦略をたてないと行けない。良いんですよそれで。ものをできるだけ作らないで消費者余剰を最大限にして、原価を感じさせず、、
天野:今のこのまとめが最高ですね。
山田:だから、ずっと言ってるあれは変わらないんだけど、スペックはOptimizeで、アセットはminimizeで、スループットはmaximizeですよと。
デジタルを使ってそういうものを提供すると。そういう会社になるのが良いんじゃないかなと。つまり、みなさんにとってみると、スループットと少なくともアセットを、アセットをminimizeにして、スループットをmaximizeにする能力を持ってるから。でしょ。
Optimizeっていうのは、設計開発とかものづくりのことも関係してくるんだけど、それはどういう車を?提供するかという。少なくともその2つは最大の力を持ってますから。
天野:そうですね、たしかに。
■政治がやるべきこととは?
山田:政府は2つやらないといけないんだけど、1つはデジタル行政というか、行政のサービスレベルを上げるって話。これはよくやってるんだよね。判子をなくすとかなんとか。
問題はプラットフォームの提供を政府がやるかどうかっていうのがあって。
今ドイツはやってるわけですよ。IoTっていう形で。つまり中小企業を含めて海外とかにものを出すにしても、仕様を共通にして、プラットフォーム上に商品だとか企画を提供すれば、一緒だから出せますと。
で、日本でやるかどうかなんです。ものづくりとかの議論はないんだけど正直ここは。
でも医療とか介護とか教育とか防災とか、政府に近いところは企画してるわけ。
例えば医療だったりすると、医療のプラットフォームを作って、カルテだとかレセプトだとか、そういうものをデジタル化して、ウェアラブルで見れるようにしようと、さっき言った3分診療を変えて、とかそういう話。
教育のほうだと、デジタル教科書とかはICTの世界だから、そうじゃなくて例えば、将来何をしたいのってことを子供たちが選択したら、それに対して教材だったりそういうものが提供されて、先生の役割は国語算数理科社会を教えるのではなくて、それぞれの生徒に対するファシリテーター、みたいになって。
あと、教材は勝手に世界史は動画が教えてくれると。それでいいんだもん。できない子は何回も見るとか。個性をもし伸ばそうと教育方針に変えていくのであれば何回も見る必要もないわけで。
それをプラットフォームがやるっていう。
ものづくりにおいて、日本はもうIoTのものづくりのプラットフォームを、本当は提供するか、なんだよね。
天野:たしかに。それは提供したほうが良い気はしますね。
山田:ただ、そうなんだけど、そのためには、ドイツと日本の大きな違いはやっぱり、ドイツは中堅・中小企業が強くて、直接海外に輸出したいっていう思いが強いんだけど、日本のものづくりの中堅・中小企業って、そういう発想がないんだよね。
天野:ないですね。下請け、ですもんね。
山田:それは、特に海外に対して弱くて、2つ合ったと思うんだけど、国内はたくさん競争状態があるから、いくつも親会社がいます、選べると。海外に関しては、いわゆる、消費者経由またはメーカー経由しかできない。ドイツは陸続きだからもともと外に。みんなが全員中小企業だと思ってるから、ドイツは。シーメンスは「うちは中堅企業です」とかいって、大企業だとは言わない。
天野:そうなんですか笑
山田:そう。シーメンスの社長が、うちらは中堅企業ですって。
グローバル大企業っていう発想はないんですよ、彼らに。ちまいものを、ちまちまちまちま。
日本も同じだよね。東芝だってでかい面してるけど、実際は各事業部分けたら、100億200億平気でやってるわけで。そういうのの塊なんだよね。ブランド名だけど。
ただ何が違うかって言うと、海外出たときはTOSHIBAとかSONYでやってるわけですよ。その辺の差が大きいかもしれない。
ものづくりっていうのは実際は、大規模の企業というのは2つしか意味がなくて、1つは共同して強い力で輸出できる。売る力があるからっていう話と、もう1つは資本っていうか、お金だよね。お金調達できるかっていうこと。それがそれぞれできれば、それぞれはちっちゃいんですよ。東芝グループの傘に入ってる必要はないわけ。変に吸い上げられるし。そういうことなんですよね。ただ、そういう大きな傘があるから、それをみんな使って、そこに対してものを納めてれば一定のものがこれまで買ってくれたっていうことで、下請け構造が固まっていっちゃったんだよね。
でも、親が売る力がなくなっちゃったんだよね、実は。販路が分からなくなっちゃった。それは、今まではアメリカとかヨーロッパだとかの特定の先進国に売ってればよかったんだけど、いわゆるエマージング・マーケットに対する売り方っていうのが分からなくなっちゃった。それはなぜかと言うと、そのスペックについて考えると言うよりも、より技術力が高いものが売れるんだという信仰が強かったから。高いものしか作らないんだよね最後。より毎年高価にしていくという。
例えば、品質も上げつつコストを下げてマスマーケティングに対して、日本人よりも買う力が無いところに対して、投げていくという発想がないから。前から課題になっているところ。そうすると市場を失ってしまっているっていうこと。
だから本当に、日本の売っているマーケットって小さくて、国内がそもそも簡単なものを作る能力がなくなっちゃってるでしょ。
天野:そうですね。
山田:簡単な炊飯器じゃなくて、高級なAI付きの炊飯器を作ってるけどさ、スイッチだけポンと入れておけばご飯ができるなんていうのは、OEMなんですよ、それは。だけど、シェアが高いんだよそれは。要らないんだ、あんなもの。試しに前は買ってみるけど、あんまりどうかなって話になっちゃうので。そうすると結構ボリュームゾーンで出ているところを日本は作れないんだよね。そのうちニッチになっちゃったんだよね。
すごい小さい、すごい技術力の高いところと、あと技術力の集大成っていうのは素材だったりするから、そこは不動のものなんだけど、あとは、組立周辺ていうのは全部なくなっちゃう。
天野:そうですね。実際問題ご飯が炊けるか炊けないかっていうのは大きい違い、鍋で炊くのはすごい大変なので。でも炊けるんだったら、そこから先の消費者余剰は小さいですよね。
山田:そう。だから、生産技術で勝負すればよかったんですよ。つまり、日本は先進国で作るに当たってはどこよりも安く作れる。同じスペックだったら。そうしたら、絶対日本の技術が使われるんですよ、ずっと。そうだけど、そこはやめちゃった。そこは中国に移動した。儲からないと思っちゃったんです。
マーケットがいわゆる、BRICsっていうのが出てくる前に撤退しちゃったからですよ。
1997年くらいの、通貨危機の時にやめちゃったんですよ。
それで、中国と韓国がそこに対して入っていっちゃって、韓国なんて特に、自分たちよりも国力が低いところにものを売ってるんですよ。日本はそれができない。でもそれは考え方を変えて、生産技術はあるんだから、生産技術でもって良いものをどこよりも安く作れるんですよ。そこを試す手はあると思うよ、と思ってるんだけどね。
天野:僕も、自動化のフォックスコンみたいなものを作ったらどこよりも良いと思う。自動化EMSみたいなものがあれば。
山田:そう。そうすると、そういうノウハウだったりがデジタルでもって提供してる。言い方が悪いけど、設備はどこでも良いかもしれない。あるいは最も安く調達、作れますと。
あとは、最も付加価値の高い生産技術・生産能力のコントロールで品質の高いものを作れて、消費者余剰は感じられるかもしれないけど、コストが一定、あるいは安く作れる と。
天野:まさに僕、Team Cross FAはそこを狙いたいなと思っているんですけど。
山田:できるできる。そういうことなんだよ。それがものづくりの新たなSociety5.0時代に向けての有り様ではないですかね。テクノロジー信仰っていうのは、ある意味で捨てないと。捨てるというか違うから。デジタル上のテクノロジー信仰っていうのは、インタンジブルな世界なので、見えない、ものがない世界だから。
日本の情報化の今でもだめな点は、あるものを数えるっていうのは(ERPもそうだけど)、在庫管理とか大好きだから。在庫はいくら増えたって形がないから。正しけりゃいいだけだから。売れるものだったら、在庫なんて数える必要ない、売れちゃうんだから。売れるもの作れよって話なんだよ、在庫数えてる間に。売り切っちゃえばいい。売りきれなかったら、やめて次を作ればいい。それもはぎじょう?にしてどんどんやればいいのにさ。とにかく管理したいんだよね。
だから、スループットよりも、生産性、効率って話にどんどんなっていっちゃう。
■打ち合わせを終えて
山田:これさ、録画しておけばよかったじゃん。
天野:録音はしてあります!
山田:音録ってあるんだったらそれ全部起こしてよ。使ってもらって結構だから。
天野:ありがとうございます、全部起こします。ちなみに、こういうディスカッションをする時に、山田さんがその時にひらめいた、ひらめきを、拾って、事業化するっていうのを、僕のライフワークにしています。
山田:よかったでしょそれで、ここまで来たし。
天野:本当にそうなんですよ、飯野ともよく言ってますけど、山田さんの話してることってホント未来だよねって。
山田:いやいや、そんな予想家じゃないけど。
天野:それをちゃんとキャッチアップして、リアルにしていくと、本当に儲かるので。(笑)
ルワンダとか、コロナ禍終わったら、また世界一周行きましょうよ。この先の5年をまた見に行かせてください。
山田:おれルワンダ行ったこと無いんだけどね。こういう規制とかない国がどんどん進んじゃうかも。
天野:そうですね、逆に、法規制との戦いが全くなさそうですもんね。ルワンダとか。
山田さんと見に行った、タイもベトナムもミャンマーも、今全部現地法人ありますから、うち。
山田:(笑)たいしたもんだよ。恐れ入りました。
天野:山田さんの言動をキャッチアップして、リアル化すれば儲かるっていう。
山田:僕自身が失敗しちゃてるからね。債務超過で。早すぎちゃったんだよね、投資するの。中国投資?が早すぎちゃった。あとね、2~3年遅かったら、すごい金持ちになってたんだけど。2007、8年じゃだめだったんだよなぁ。
天野:山田さんはやっぱり、早すぎるんです。
たぶんそれを、僕が拾い集めてリアル化するくらいが、ちょうど良い世の中のスピードなんじゃないかと思って。
山田:政治もね、デジタルでSociety5.0とかまだ早いんだよ。
天野:(笑)ちょっと早いですか。
山田:全然早いんだよ。5年か10年くらい早いの。何言ってるか分かんない人多いんじゃないかな。(笑)
当日の撮影楽しみにしています。