2014.6.18

児童ポルノ禁止法の法務委員会における議事録(未定稿)

https://youtube.com/watch?v=kdBbHHDIeJM

186-参-法務委員会-024号 2014年06月17日(未定稿)

○委員長(荒木清寛君)

 ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、馬場成志君、森まさこさん及び行田邦子さんが委員を辞任され、その補欠として柳本卓治君、三木亨君及び山田太郎君が選任されました。

○委員長(荒木清寛君)

 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君外九名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(荒木清寛君)

 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

○委員長(荒木清寛君)

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○山田太郎君

 みんなの党の山田太郎でございます。本日はよろしくお願いします。
 本日は、この委員会、差し替えをさせていただきました。関係者の方々には大変御努力いただきまして、本当にありがとうございます。
 私自身、子供の性虐待の防止というのは、これは非常に今重要だということで、本法案の趣旨は分かるんでありますが、これまで議論の過程において、漫画とかアニメがその関連性において検討事項に入っているということについては大変おかしいというふうに、ずっと、実は私の当選の公約、それから議員になってから主張しておりまして、まさにこの問題、まずは漫画とアニメ、附則が落ちたということについてはほっとしております。ただ、この問題自身が抱えている問題、それから限界のようなものもあると思っておりますので、今日はその辺りしっかり質疑させていただきたいと思います。
 実は、本法の議論に当たって、私の方は、非常にいろんな方々から関心が高いということで、ツイッターですとかニコ生、その他ホームページで、どんなことを聞いてほしいかという意見を求めましたところ、ちょっとこれ手元にあるんですけど、千二百通ぐらい届きまして、特に若者の大変に関心の高い領域であるということだと思います。この声を踏まえまして、千二百個全部聞いていきたいんでありますが、時間の許す限り、今日は厳選した質疑させていただきたいと思います。その意味でも、是非、御答弁される方、簡潔にお答えいただければ、たくさんいろんな問題が質疑できると思いますので、御協力よろしくお願いしたいと思っております。
 さて、今回、まず児童ポルノの定義という辺りから行きたいと思いますが、資料を配付させていただいております。本法律で、十八歳未満の児童に対して、例えば、ちょっとなかなか一つずつ読んでいくと、余りこういう権威のある議会ではどうかなと思うような内容でありますが、確認していきますと、例えば性的な虐待が実際に行われているが、顔だけを写した動画でありますとか、あるいは、精液を顔に掛けられたが、服を着ている裸ではない写真ですとか、服を着ている状態ではありますが例えば動物の性器に無理やり触れられている写真ですとか、又は、服の上からロープでむちを打っている状態であるSMの写真、特にこれは性器の強調がない、それから、性的虐待中の音声ファイル、こういった例えば性的虐待の事実の記録物というものも存在しているかと思います。
 本法は、こういったものに対する禁止事項、当たるのか当たらないのか、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)

 山田太郎委員にお答えを申し上げます。大変重要な、しかし答えるのが難しい御質問からいただいたと思っております。
 まず、本法の第二条の一号から三号の児童ポルノのいずれかに該当するか否かということについては、先ほど来様々な答弁で申し上げておりますとおり、個別具体的な事例に応じた証拠関係に基づいて判断すべき事柄であるという原則を確認をしたいと思います。その上で、今御指摘のありましたところ何点か、法文に則して判断を少し申し上げたいと思います。
 まず、性的虐待が実際に行われているが、顔のみを写した動画ということでございますが、顔のみが描写をされていて、性的部位が描写されていない場合には、本法に基づく児童ポルノには該当しないということになります。二つ目の、衣服を付けた児童に精子が掛けられているということでございますが、これもこの一事だけをもって児童ポルノに該当するとは判断ができません。三番目、動物の性器を触っているという例でございますが、これは、法律の中には他人の性器等を触るという表現がございますが、これににわかに該当するということはありませんので、この一事をもってだけで児童ポルノに該当するとはなかなか判断しにくいということでございます。それから、服の上からロープで縛られているということで、性器等の強調がないということでございますけれども、これも同じように、この一事だけをもって児童ポルノに該当するとは判断がしにくいと。最後の、性的虐待中の音声ですけれども、これも、視覚により認識することができる方法により描写したものというのが児童ポルノの定義に入っておりますので、これもこのことだけをもって該当しないものと考えます。
 しかしながら、委員御承知のとおり、今申し上げた事例というのはそれぞれの事例を一つだけ切り出してどうですかという判断でございまして、これらが例えば重なり合って、そしてその動画であれば、動画全体の中に法律で規制対象になるような要素が含まれていれば、それは総合的かつ客観的な判断、評価として児童ポルノとみなし得る場合もあろうかと思います。
 また、本法に基づく児童ポルノではありませんが、ここで書かれている事例を私個人的に見まして、明らかに児童虐待に当たる証拠になり得る画像である場合もあるわけでございますから、その場合は、児童虐待も違法行為でございます、処罰もございます、その関係法令に基づいての必要な措置というものは考えられるというふうに思っております。

○山田太郎君

 先ほど真山議員の方からもありましたが、その他にも、例えばモザイクを掛けて、一種裸の部分が隠れているというんですかね、性的部位が隠れている部分については微妙だなんていう発言も、答弁もありました。
 実は、この法律、本来、児童を性虐待から守るというはずの法律でありながら、実際には、例えばですよ、このように虐待が明らかに行われているという場合においても取り締まれないケースが実はかなりある。
 何でこんなふうになっちゃっているのかなというふうに考えたんですが、この法律が、実は、子供を性的虐待から守ろうとする個人法益なのか、それとも性の社会的風潮に秩序を持たせようとする社会法益なのか、どうも議論がぐちゃぐちゃになってしまっているんではないか。入口としては子供を守るということだったんだけれども、出口としては、つまり取り締まる対象物が児童ポルノになってしまっていると。つまり、裸かどうかということが非常に論点の中心になってしまっていて、衆議院段階からも、私、質疑を拝見させていただきましたが、ずっとそういった議論が続いてしまっていると思うんですね。
 本当に子供の性虐待を守ろうということであれば、そういった記録物が頒布されないよう、あるいは単純所持も含めて取り締まっていこうということであれば、この法律には大きな問題をまだまだ抱えているというふうに思いますが、発議者の方はいかが考えますでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)

 委員の御主張は、私もかなり共感をする部分がございます。
 ただ、この法律自体は、法律の名前にありますとおり、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰、また児童の保護に関する法律でございまして、それを超える児童に対する虐待あるいは人権侵害等については他の関連法案で対処している部分も多かろうというふうに考えておりまして、委員、御指摘するまでもございませんけれども、本法の目的が第一条で書かれておりますし、また、先ほど来答弁で出させていただいております第三条の二の総則において、一番最後の部分を見ていただきたいんですけれども、児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為をしてはならないと。それが客観的に証明し得る児童ポルノという形で出ているものについて、その提供罪や所持罪を処罰化したものという整理をしております。
 委員の考え方については、私ども全く異論はないところでございます。

○山田太郎君

 もう一つ、ちょっと細かいんですけれども、コスプレーヤーの方から結構今回質問が多くて、非常に心配であると。先ほど着エロなんという話も佐々木議員の方からもあったんですけれども、例えば自画撮りでこの三号ポルノの要件に該当するような写真をホームページでアップした場合に、例えば頒布罪としてこの法律で取り締まられる可能性があるのかどうか、この辺り、これは法務省になると思います。お答えください。

○衆議院議員(階猛君)

 これは、先ほどから御答弁がありますように、証拠に照らして個別に判断しなければ該当するかどうかというのは申し上げにくいんです。
 ただ、一般論として申し上げれば、いわゆるコスプレ写真であるか否かにかかわらず、この二条三項三号の要件を満たす写真等々をネット上にアップロードしていく、こういう行為は、被写体となっている児童本人がこれを行う場合も含めて、児童ポルノの提供罪あるいは公然陳列罪が成立し得る場合があるというふうに考えております。

○山田太郎君

 まさにそうなんですね。この法律は、被害者である子供を守るはずが自ら加害者になってしまうケースもあるということで、やはり個人法益なのか社会法益なのか、本来、法律の立て付けをきちっと議論してスタートするべき部分もあったんじゃないかなというふうに実は思っています。
 次に、いわゆる興奮の姿態という辺りも少し質疑させていただきたいんですが、衆議院の議論の段階で、國重委員に対する政府参考人の答弁としまして、現行法の二条三項二号及び三号にいいます性欲を興奮させ又は刺激するものといいますのは、これは一般人を基準に判断するべきものと解されていると承知しますという御答弁がありました。
 一般的に三歳の児童に対して性的興奮するということは実は考えにくいわけでありまして、仮に、三歳の子が例えば犯されていて、一般人が普通にそれを見て、私は目を覆いたくなることはありますけれども、決して興奮することはないんでありますけれども、そうなってくると、例えば三歳の児童は本法律の対象外となってしまうのかどうか、この辺り、お答えいただけますでしょうか。

○衆議院議員(階猛君)

 お答えいたします。
 個別の事案に関して収集された証拠に基づいて判断されるべき事柄ではありますけれども、一般論としてお答え申し上げますと、児童の裸体等が人の性欲を興奮させ又は刺激するかどうかについては、個別具体的な事案に応じて、性器等が描写されているか否か、動画等の場合に、児童の裸体等の描写が全体に占める割合、児童の裸体等の描写方法と諸般の事情を総合的に検討して判断すべきものであります。三歳だからという児童の年齢のみをもって判断すべきものではないということであります。

○山田太郎君

 三歳だからということを主張しているんではなくて、一般人というのは何なのかということを是非御答弁いただきたいんですね。
 まさに、一般人は、その対象物を見た場合に、一般人が性的興奮をするものであるというんですが、その一般人というのがよく分からなくて、誰か一人でも興奮したらこれは児童ポルノになってしまうのかどうか、そういったことも含めてもう一度御答弁いただけますでしょうか。

○衆議院議員(階猛君)

 一般人という人というのはどういう人を指すのかということを問題にされるのかもしれませんけれども、そこはなかなかこういう人が一般人だということは言えないわけでありまして、外形で見ていくしかないと。つまり、その問題となっている児童ポルノとされるものの外形で見ていくしかないということで、先ほど申し上げたような、性器等が描写されているか否か、動画等の場合に、児童の裸体等の描写が全体に占める割合がどうなっているか、それから、児童の裸体等の描写方法、こういったものを総合的に検討して判断するしかないのではないかと考えます。

○山田太郎君

 今回、冤罪というか犯罪の対象が広がるかどうかということは、まさに、この性的に興奮するというものに対する定義がちょっとこんなに曖昧でありますと非常に不安も残るところであります。
 ちょっと先に行きたいと思いますが、これ、もう一つ、そういったこと、何で起こるかというと、やっぱり名称等の問題、この法律の目的性というのをもう一度考え直す必要があるんではないかなと。
 例えばインターポールですね、国際警察機構も、児童ポルノという呼称を使って、児童に対する性的搾取や虐待ということが実は矮小化されてしまっていると、児童ポルノとか幼児ポルノという用語は犯罪者が使用するものであって、警察、司法機関、公共機関、メディアが使用する正当な用語であってはならない、こういうことを国際的に言っているわけであります。
 まさに、児童の性的虐待を示す素材というふうにすれば、虐待がされているというものに対して取締りを行うということに変わるわけでありますから、余り、ポルノであるとかないとか、裸が見えているとか見えていないとか、そういったことでもって虐待が定義されるというのはおかしいと思うんですね。
 そういった意味で、この辺り、名称を変えるべきだ、実はこういった投書もありまして、各議員の先生方の方にも行っていると思いますが、これも一万三千名ぐらいの実は投書が集まって、非常に、名称を変えて、しっかり子供の性虐待を守るという形に名称を変えたらどうかと、こんな議論があるわけでありますが、この辺、発議者の方、名称変更をするということはいかがでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)

 御質問にお答えをいたします。
 名称変更の要望等につきましては、今回の実務者に参加した五名、ここに今答弁者として立っておりますが、この五名にも各種団体から送付をされておりましたため、実務者協議の場でも議論になりました。児童ポルノという呼称よりも、性的虐待あるいは性的搾取が記録されているものを取り締まる法律だという趣旨を明確にすべきではないかという御意見については、余り異論が出なかったところでございます。
 他方で、今回、改正案を諮っております、この児童買春、児童ポルノ禁止法が制定されましてから既に十五年が経過をしておりまして、この児童ポルノという用語に対していろんな御意見があることは事実でございますが、既に社会の中に児童ポルノが何を指すかということについては、一般国民の皆様の理解について定着性が見られるのではないかという認識に至ったものでございます。
 すなわち、この児童ポルノというものが児童に対する性的虐待を記録したものであるという認識が社会に浸透しておりまして、そういった観点から、今回、児童ポルノという呼称を直ちに変更すべきであるとは考えないという合意に至りまして、そのまま法律の名前は維持させていただいたところでございます。

○山田太郎君

 私自身は、この法律がきちっと、変な方向に行かないように名称と目的も合致するようなものにしてもらいたいなと。そうであれば、例えば漫画とアニメの議論なんかも附則で検討するというようなナンセンスな話にはならなかったはず。虐待があるかどうかということに対して説いていけば、ポルノの定義に終始することはなかったんではないかなというふうに思っております。
 さて、ちょっと次にも行きたいと思いますが、警察庁にお伺いしたいと思います。単純所持の問題であります。
 所持していることが明らかであっても、性的目的があるかどうか、合理的な理由があるかないか分からない段階で、本法に違反するかの捜査を実際行うケースというのはあるのかどうか、この辺り、明確にお答えください。

○政府参考人(辻義之君)

 お答えいたします。
 刑事訴訟法第百八十九条第二項は、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」と規定しておりまして、御指摘のような場合には、そのような目的があるのかどうかということにつきましてまさに捜査をしていくということになると承知をいたしているところでございます。

○山田太郎君

 じゃ、次に、事前の破棄命令の辺りも少しお伺いしていきたいんですが、京都や栃木県の青少年健全育成条例というのがあるのは御存じかもしれませんが、児童ポルノの単純所持については、行政による事前の破棄命令というものが実は存在しているんですね。本法による例えば冤罪ですとか萎縮効果を防ぐために、今回の改正案の中で事前破棄命令についての検討はされなかったのかどうか、この辺りも発議者の方にお伺いしたいと思います。

○衆議院議員(椎名毅君)

 お答えをいたします。
 委員御指摘のとおり、いわゆる京都府方式、いわゆる栃木方式という形で、児童ポルノに相当する文書について単純所持を規制する際に、事前の廃棄、行政による事前の廃棄を命令するというものを介在させる例がございます。栃木県では、県の公安委員会によって、子供ポルノの廃棄命令を出し、それに違反した場合に処罰をするという構成になっております。
 これについても実務者協議の中で検討はいたしました。しかし、諸外国における単純所持規制の中で、事前の廃棄命令を科さずに直罰としている例が多いこと、もう一点が、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持規制に関しても、仮に事前の廃棄命令を介在させたとしても実効性の点で問題があるということから、今回はこの件について採用するということにはならなかったものでございます。

○山田太郎君

 海外でないといっても、国内の条例には幾つかあるわけですから、本当はしっかりこの法案の中でももうちょっと審査していただければよかったなと、こういうふうにも思っております。
 さて、次も質問が非常に多かった中から取り上げていきたいと思いますが、PCフォルダの中にあるいわゆる単純所持という辺りも伺っていきたいと思います。
 パソコンの中に保有する画像ファイルに、個別のケースで伺いたいと思うんですが、性的目的の単純所持が、施行後、成人ポルノ画像が例えば大量に集められたそのフォルダ内に一部児童ポルノに該当するファイルが含まれていた場合、この児童ポルノ禁止法で処罰される可能性があるのかどうか。
 先ほど、実際に、目的が、その量等も鑑みるということだったんですが、逆に一個、二個存在しているんであればいいのか悪いのか、そんなようなところも含めて御答弁いただけますでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)

 お答え申し上げます。
 委員の御質問の趣旨は、PCのフォルダの中にたくさんの画像が入っていて、そのうち一点、二点が児童ポルノに該当するものだった場合どうかというお話だというふうに思います。
 これも、済みません、一般論として申し上げるしかないわけでございますけれども、基本的には、多数の画像の中の一つ、二つにすぎない画像について、その所持している方が自己の性的好奇心を満たす目的を持って所持していることが当局によって客観的に証拠関係から推認されるという状況でないと、処罰はされないという整理でよろしいかと思います。

○山田太郎君

 今の場合は非常に難しいと思っておりまして、持つ側が、十八歳未満なのかどうかというのを意識しなければ、成人のものを見ていたり、たまたま児童のものを見ていたりということでありますが、もしかしたら総体においては性的興奮の目的を満たすということになりかねないと思うんですが、その点いかがでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)

 それも個別具体的なケースだと思いますが、これ実際に衆議院の答弁でも私言及しておりますけれども、いわゆる外見上一体何歳なのか判別をすることが困難な女性なり男性なりというのは、委員も御承知のとおり存在するかと思います。よって、例えば触れ込みが二十歳であっても実年齢は十代であるということもありますし、逆に触れ込みが十代であるけれども実年齢は二十歳以上ということも十分あり得るわけでございまして、その辺につきましては、私の理解では、実際にそれが事件化された場合に、捜査当局の方におきまして慎重に科学的にその年齢等を判断できる専門家の意見も踏まえながら判断をしていくというふうに当局からは伺っておりますし、また、もちろん所持している本人の供述だけでは判断できないわけですから、客観的にそれらが自己の性的好奇心を満たす目的で自己の意思に基づいて所持したものであり、かつ、それらの画像等が総体として、先ほど来御議論がありました一般通常人の感覚からいって性欲を興奮したり刺激するものであるかどうか、そういったものの総合的判断によって判断されるべきものと考えております。

○山田太郎君

 今、遠山議員の方からお話しした内容の中にちょっと重要な問題が隠れておりまして、いわゆる対象物が、まさに年齢が分からない場合であったとしてもそう見える場合に関しては逮捕され、起訴される可能性があるのかどうかということに逆に言及されましたので、ちょっとその辺りも確認させていただきたいと思いますが、それはいかがなんでしょうか。

○衆議院議員(遠山清彦君)

 基本的には、被写体の児童が十代で身元が特定されていることが要件ではないということでございますけれども、画像から十八歳未満であると証拠上認められている場合等で、かつ、児童ポルノ該当性についての要件を含む所定の要件を満たす場合には、この児童ポルノ禁止法違反の罪で起訴されることもあり得ると、こういうことでございます。

○山田太郎君

 結構そのことは何か怖いなというふうにも思っておりまして、対象者が分からない、実際にはいわゆる児童なのか児童じゃないのか、ぎりぎりの線に置いたとしても、捜査、起訴され、裁判になってそこで証明をされていく、実際にはその少女が最終的には誰だか分からなくても問題になるということはちょっと大きな問題も抱えているのかなというふうに思っております。
 もう一つ、質問ですごく多かった議論の中に、PC上で削除したと、ただごみ箱に入れているだけでは駄目で、ごみ箱からちゃんと削除したということでないと、要は捨てたと、一年以内にやってくださいというような条文があるようですけれども、ただ、これはレクの中でお伺いしたんですが、ごみ箱から削除された状態でも削除ファイル復元ツール等をインストールしている場合には削除とみなされないというような話もありましたが、この点いかがでしょうか。

○衆議院議員(椎名毅君)

 お答えいたします。
 まず、定義から入りますけれども、冒頭、所持をするということがどういうことを意味するのかということですけれども、自己の事実上の支配下に置くことをいうということです。この所持罪にいうこの所持に該当するかどうかについては、まさにこの自己の事実上の支配下に置いているかどうかという観点から、証拠関係で認定できるかどうかについて判断いたします。
 この点、まず、ごみ箱に入れるだけという意味であれば、この行為だけをもって所持していないとは断言できないということです。今御指摘の点、ごみ箱から削除した上でファイル共有ソフト等を入れている場合という話でしたけれども、ごみ箱から削除した場合については、原則として、特段の事情のない限りその当該ファイルを自己の事実上の支配下に置いているとは認められないというふうに考えます。
 では、おっしゃるこのファイル共有ソフト等を持っている場合が特段の事情に当たるのかどうかというところでありますけれども、復元できるような特殊ソフトを保有した上で、これによって復元する意思を明確にしているというような事情があれば特段の事情に該当する可能性があるものと考えます。

○山田太郎君

 今のもなかなか証明しにくい問題で、非常に法律上曖昧なところもあるなと思っています。
 さて、ISP、インターネットのいわゆる捜査協力義務のような話にも移っていきたいと思いますが、十六条の三におけるインターネットの利用に係る事業者には捜査機関への協力やファイルの削除についての努力義務を課されております。
 そこで、楽天市場とかヤフーショッピングさんに代表されるようなオンラインショッピングサービスを提供する会社にも、本法による捜査機関への協力義務が負われるのかどうか、この辺りを教えてください。

○衆議院議員(椎名毅君)

 ありがとうございます。お答えいたします。
 条文上、この十六条の三を見ると、主体はインターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務を提供する事業者というふうに定められておりますので、この条項が適用されるか否かについては、当該事業者が提供している電気通信役務がインターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信、閲覧に必要なものかどうかというところについて判断されるものというふうに理解をしております。
 御指摘の楽天市場その他のオンラインショッピングサービスについては、一般に、当該事業者が提供する電気通信役務がインターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信、閲覧に必要なものに該当するというふうに考えられ、十六条の三の事業者に含まれるものというふうに理解をしております。

○山田太郎君

 もう一つ、これも事前にレクでお伺いしていたんですが、ドロップボックスとかエバーノートに代表されるようなオンラインストレージサービスで、かつ日本にサーバーがあるような場合なんですが、アップロードされたファイルをインターネット上で広く公開ができる機能を持っているサービス、これが本法の対象になるということをお伺いしています。
 ファイル削除及び捜査機関への協力についての協力義務、この辺り、それからもう一つ、まさにプロバイダーやサーバー管理者にこの削除義務を課すのであれば、こういったオンラインストレージサービスを運用する会社にもサーバー上のファイルを随時監視し、削除を行う必要が出てくるのかどうか、この辺りをお答えいただけますでしょうか。

○衆議院議員(椎名毅君)

 ありがとうございます。御質問にお答えをいたします。
 まず、オンラインストレージサービスに関してですけれども、まず、御指摘のとおり、提供する電気通信役務がインターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信、閲覧に必要なものに該当するということで、一般論としては十六条の三の事業者に含まれるというふうに理解をしております。
 他方で、事業者が国内の事業者かそれとも海外の事業者かという点で申し上げますと、基本的に、本法十六条の三はあくまでも努力義務を規定したものにすぎず刑罰法規ではないので、これは行政法規だというふうに理解をしますが、そうだとすると、一般的に、我が国の行政法規の効力の及ぶ範囲というのは日本国内に限られるものというふうに理解をしています。そういった観点からすると、ドロップボックス、それからエバーノートといった御指摘の海外の事業者により運用されるオンラインストレージサービス業者に関しては本法の事業者に該当をしないというふうに理解をしております。
 その上で、国内の事業者に関してですけれども、やるべきことという意味で申し上げますと、このオンラインストレージサービス事業者に課される、あくまでも努力義務ですけれども、この努力義務の内容という意味で申し上げますと、当該事業者が管理権限に基づく画像等の情報送信防止措置を実施し得る立場にあるかないかというところで区別がされるものというふうに考えておりますけれども、もし仮にこれに当たる場合には、当該管理権限の範囲内で情報送信防止措置を講じるように努力をしていただくことになろうかというふうに理解をしております。

○山田太郎君

 削除の努力義務を課すということは、中のクラウド等にたまっているデータを実は検閲、閲覧をするということにもなります。そういう意味で、本法が、例えばインターネット通信に対する通信の秘密を制約するもしかしたら最初の立法になるかもしれないという重要な問題も抱えているかと思っています。
 まさに、この電気通信事業者に対して通信記録に関する情報を提出させるというようなこと、その努力義務は、電気事業法の第四条、又はそもそも憲法の二十一条の通信の秘密を侵すことにならないのかどうか。重要な問題ですので、法務大臣、お答えいただけますでしょうか。

○衆議院議員(階猛君)

 議員立法で今審議中のものに法務大臣がお答えするのは適切かどうかということがございますが、私は、今までの御議論を聞いておりまして、この十六条の三の趣旨は、椎名衆議院議員が答弁されましたように、努力義務を負わせているものである、捜査機関の捜査権限を拡大する趣旨ではないというふうに、今の御議論を聞いて、また条文を読んでそのように理解しておりますので、捜査機関の捜査権限を拡大して、今の御不安がそういうところにあるのだとすれば、必ずしもそういうことではないのではないかというのが私の今までの議論を聞いての感想でございます。

○山田太郎君

 本件に絡んで警察庁の方にもお伺いしたいと思っています。
 プライバシーが詰まったストレージをもしかしたら令状なく警察が丸ごと見る、そういうのは下手をすると捜査権の濫用に当たるのではないかという危惧もあるかと思っています。そういった意味で、仮に、児童ポルノの捜査の過程で他の犯罪に結び付くものが見付かった場合、容疑を切り替えて捜査を進める可能性はあるのかどうか、それは別件捜査につながらないのかどうか、お答えください。

○政府参考人(辻義之君)

 お答えいたします。
 犯罪捜査の過程で新たな犯罪があるというふうに思料されました場合には、刑事訴訟法の手続にのっとりまして適切に対応させていただきたいというふうに考えております。

○山田太郎君

 実は、そういった意味で、児童ポルノの規制をするに当たっての努力義務そのものが、いろんな情報を見られてしまうのではないかというような有権者からの非常に不安があります。これを行き過ぎた形にならないように、どうしたら逆に通信の秘密というものを守っていけるのか、信用できるお互い社会にできるのか、そういったことを是非考えていく必要が残っている法律ではないかなと、こういうふうにも思っております。
 さて、もう一つ先に進んでいきたいと思いますが、漫画、アニメに対する規制につながる可能性があるかどうかということについても少し確認をしたいと思っております。
 社会保障審議会、犯罪被害者等施策推進会議というのがこの中で定義付けられております。それぞれの会議体において、漫画、アニメ等が、性的被害との因果関係、相関関係について研究が行われる可能性があるのかどうか、さらに、付け加えて質問させていただきますと、政府全体としても、漫画、アニメと性被害の調査研究について今までに実際に行ったことがあるのかどうか、また今後行う予定があるのかどうか、内閣府、厚労省、それぞれお答えいただけますでしょうか。

○副大臣(岡田広君)

 お答えいたします。
 犯罪被害者等の施策推進会議は、平成十六年十二月に成立いたしました犯罪被害者等基本法に基づき内閣府に特別の機関として置かれた会議であり、犯罪被害者等のための施策の実務を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視することとされております。被害に遭わないための取組については、基本的には同会議の検証対象とはならないものと考えております。

○副大臣(佐藤茂樹君)

 山田委員の御質問にお答えいたします。
 今般の改正案では、社会保障審議会は、被害児童の保護施策について定期的に検証及び評価を行うものとされておりまして、今御指摘の漫画、アニメの検証、評価については、この規定上、社会保障審議会の事務として想定されていないと考えております。

○山田太郎君

 これ、内閣府の方なのか官房の方なのか分からないですけれども、政府全体として、漫画とアニメの性被害の調査について今までに行った事実があるのか、今後も行う予定があるのか、この辺り、内閣府だと思いますが、お答えください。

○副大臣(岡田広君)

 お答えいたします。
 児童ポルノの蔓延防止を食い止め、排除を進めていくため、現行法に基づいた総合的な対策として、昨年の五月に第二次児童ポルノ排除総合対策を策定し、国民、事業者、関係団体等の連携の下、各府省において施策を推進しているところでありますけれども、この第二次児童ポルノ排除総合対策に係る関係省庁の施策として、山田委員御指摘のような調査研究が実施されたとは承知をしておりません。
 また、現時点において、関係省庁において御指摘の調査研究を実施する予定があるとは承知しておりません。
 以上です。

○山田太郎君

 次に、まさにこの本法の本来の目的である児童虐待というのをどう防止していかなきゃいけないかという方向性について、最後になるかもしれませんが、質疑していきたいと思います。
 実は、現行の法体系では児童の虐待を防止するというのがなかなか法律として作られていないんではないかと。今日、今さんざん質疑してきましたが、児童ポルノ禁止法においてもいろんなケースではみ出ちゃっているというか対応できない。それから、児童虐待の防止法という法律がありますが、これも実際には性虐待について取り締まる規定はありません。親が虐待をした場合に、例えばそれを保護しなければいけない団体が怠慢をこいた場合に罰則があるという取付けでありまして、実際に児童の、特に性虐待の防止ということについてはありません。それから、児童福祉法も組織法でありまして、この中にも罰則規定がありません。
 そういった意味で、実は我が国は、この児童ポルノのたとえ禁止法を改正したとしても、なかなかまだまだ児童の性的虐待を取り締まるということができないと思っています。ここで是非関連法案を一度整理していただいて、あくまでも児童の虐待を取り締まるべき法律を整理した方がいいんではないか。先ほど内閣の方も、大臣、ポルノ対策会議というようなことを岡田さんの方からも御指摘あったようですけれども、全体として、国は、もうちょっと、児童ポルノというポルノの定義にかまけているんではなくて、あるいは取り締まるということを一生懸命我々もやるんではなくて、あくまでも性虐待あるいは虐待行為に対して取り締まっていくということをしっかり考えるべきだというふうに思っておりますが、まず、関係省庁としては厚労省、いかがお考えでしょうか。

○副大臣(佐藤茂樹君)

 山田委員御指摘のとおり、幾つかの法案がございまして、具体的に確認で申し上げますと、児童ポルノ禁止法というのは、児童買春、児童ポルノに係る行為により心身に有害な影響を受けた児童の保護等について規定をしております。他方で、児童虐待防止法は、性的虐待を含め保護者による虐待の防止及び被害児童の保護等について規定しているわけでございます。
 その上で、児童相談所、今全国に二百七か所ありますけれども、ここで、児童福祉法に基づき、児童ポルノの事案、虐待事案のケースに限らず、児童の福祉の観点から性的被害を受けた児童に対して必要な支援を行っております。
 具体的には三つぐらい施策を行っておりまして、一つは児童心理司によるカウンセリング、児童福祉司による指導、援助、こういうものを行っております。二つ目には、緊急的な保護を必要とする場合は一時保護。三つ目には、子供の生活の立て直しが必要な場合には児童福祉施設への入所措置などの支援を行っているわけでありまして、今後とも、厚生労働省としては、どのような事案であっても被害児童の適切な保護、支援の確保にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

○委員長(荒木清寛君)

 山田君、時間が来ておりますのでおまとめください。

○山田太郎君

 じゃ、最後にまとめたいと思います。
 まさに児童の被害の防止をするための法律にするべきでありまして、当たり前のことながら、性虐待された児童を保護すると同時に、特に表現の自由、この児童ポルノという定義をめぐっていわゆる拡大解釈され、やっぱり特に若者が萎縮等をしないように、是非最後までこの法律をしっかり審議していきたいというふうに思っております。本日は質疑、これで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。