2014.11.4

TVタックルでオタクが狙い撃ちされた!?(20141104)

■”進撃の巨人”も問題アニメ
児童ポルノ禁止法や青少年健全育成基本法など、表現を規制する法律や論調が、メディアで紹介される機会も増えてきたと思います。先日テレビ朝日で放送された「TVタックル」では、「ロリコン・暴力 アニメ規制は必要か?」というテーマの元、いわゆるオタクと呼ばれる人たちや、そのオタクたちの象徴でもあるアニメ・マンガを取り上げ、それについて論客が議論するといった内容でした。

率直な感想としては、「議論ですらないひどい内容」の一言です。

番組の冒頭から、7月に岡山の倉敷市で発生した、女児の誘拐監禁事件(犯人の部屋にアニメのポスターがあったと話題になりました)を取り上げ、番組の構成からして議論というよりも、真っ向からアニメやマンガ、ひいてはそれらを趣味とするオタクたちの人格そのものを否定するような内容でした。もちろん、その痛ましい事件については二度と起こしてはならないと思いますが、因果関係がないままにオタクが悪いと決めつけて放送することは問題だと思います。

対象としてあげられたアニメやマンガも様々ありましたが、中でも「進撃の巨人」や「魔法少女リリカルなのは」が「(性的・暴力的に)過激な内容である」という発言には驚きました。性的な表現があるかどうかは議論の余地があるとしても、もしこれらのアニメが「過激である」ということを理由に規制されるのであれば、ドラマや時代劇などでの犯罪や殺人のシーンは全て規制の対象なのでは?と思ってしまいます。

■マンガだけがなぜ不当に差別されるのか
議論の焦点も「見ている対象者(子ども・大人)」と「見られる対象物(アニメ・マンガ)」が錯綜していました。そもそもこれまで行われてきた、青少年健全を目的とした「表現規制」の論点というのは、「青少年=子ども」が見るべきではない内容という部分であったにも関わらず、あたかも大人になってからもアニメやマンガを見ている事自体が悪であるという議論や、見られる対象が「美少女」であることが全て性的で犯罪的である、という議論の展開には疑問しか出てきません。

前述しましたが、「暴力的な表現」や「性的な表現」ということが規制の理由となるのであれば、刑事ドラマや映画、小説も全て批判の対象となるはずです。しかし何故「アニメ・マンガ」だけがこのように批判されるのでしょうか。明確な論証は出てきませんでした。

番組の後半では、オタクたちに対して直接的に批判や否定、嫌悪感を示すような内容でした。これは議論ではなく単なる人格の否定であり、差別と同様です。

「TVタックル」が公平な討論番組かどうかは別としても、議論自体の論点や根拠が曖昧なままで、論客たちが理解できない文化や人々を一方的に否定し差別的な扱いを多くの人たちがみるテレビでするというのは、規制が必要か否かという問題以前です。「アニメ・マンガ」は犯罪行為の要因となり得るから規制する。それらに興味を持った大人は異常である。という明確な根拠を持たない考え自体が差別的であり、問題なのではないでしょうか。

■気持ち悪いものは法律で否定するべきなのか
「TVタックル」のようなTV番組でこうした内容が発信されることで、あたかも「表現規制こそ正である」と言ったような世の論調が生まれてしまうことが一番恐ろしいことです。こうした「アニメやマンガ」などに対して”差別的”な考えを持った人が居ること自体は致し方ない部分だとしても、これを政治が強制力をもって「法律」という形で実現させてしまうことは、それこそ大きな「暴力」になってしまうのではないかと考えます。

物事を否定し、規制すること自体は簡単な事です。大切なことは、犯罪行為が起きないような環境をどのように育んでいくかということであり、それこそが真に議論されるべき部分であると私は考えます。