2014.11.1

あなたの発言が法律で禁止されるかも?ヘイトスピーチについて(前編)(20141030)

■ヘイトスピーチ問題
日本でも最近聞かれるようになったヘイトスピーチという言葉。皆さんは御存知でしょうか。ヘイトスピーチとは、英語で「hate speech」、つまり憎悪的な発言や表現を指します。政界では、自民党の議員が中心となり、ヘイトスピーチの法規制を進めようとしています。

今回はこのヘイトスピーチについて、前編では「ヘイトスピーチについての解説」
後編では「ヘイトスピーチに関する私の見解」をご紹介致します。

■ヘイトスピーチとヘイトクライム
「ヘイトスピーチ」とは、持って生まれたものや変えられないもの(性別や国籍など先天的なもの)や、宗教や思想などの属性を有する集団に対して、「憎悪的・侮辱的・差別的」な表現をすることです。ヘイトスピーチの対象には、「性別」「職業」といったものから、「人種や皮膚の色」「宗教」「国籍」「民族」といったものまで様々あります。

一般的に、対象がより先天的で、集団が小さいものになるほど「より悪い」ヘイトスピーチになると私は考えています。私が少し気にしている「体型」などもヘイトスピーチの対象になりえますが、自分の摂生でコントロールできるものなので「より悪い」ヘイトスピーチとは言えないと思います。

上記のヘイトスピーチが「表現」であるのに対して、より直接的に器物を損壊したり、危害を加えたりなど「犯罪行為」になったものが「ヘイトクライム」と呼ばれます。

■法が規制するヘイトスピーチ
ヘイトクライムの場合は犯罪行為ですので、当然現行法で規制されます(器物損壊罪・外国国章損壊罪など)。ヘイトスピーチの場合でも、特定の個人や法人に対するものであれば、その利益を守るためにある程度の法律が確立しており、現行法での規制の対象となります(侮辱罪・名誉棄損罪など)。

逆に、特定の個人や法人ではなく、特定の「属性」(国籍や宗教など)に対するヘイトスピーチというのは、「社会秩序」的な側面が強く、現行では規制する法律はありません。(在特会による街宣活動など)
※在特会(在日特権を許さない市民の会)とは、在日中国・韓国・朝鮮人が所有しているとされる「在日特権」を無くし、普通の外国人と同等の待遇に戻すことを綱領として設立された市民団体。

■ヘイトスピーチの論点
ヘイトスピーチを考える上で重要な事がいくつかあります。例えば「社会法益(社会秩序の維持)」と「個人法益(自由社会の重視)」のどちらを重視するのか。受動的に受け取る情報なのか、能動的に受け取る情報なのか。(電車で目にするような広告から閉鎖的な掲示板など、どこからどこまでが対象になるのか)

デモや街宣パレードなどの「行為」そのものを禁止するのか、そのデモで行うスピーチなどの「内容」を禁止するのか。などです。

法律でヘイトスピーチを規制する場合、このような論点を明確にし、明文化する必要があります。

■海外のヘイトスピーチ問題
ヘイトスピーチの問題は日本だけではなく、むしろ海外の方が盛んに議論されています。
ドイツやフランスなどには「大陸法」と呼ばれる、ヘイトスピーチに対する厳しい法律が存在し、年間数百件単位でこの法律が適用される事例があります。これは、背景にユダヤ人差別などの問題があるためです。(例として、ドイツではホロコースト=ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の事実を否定することが、法律で禁止されています)

一方で、同じヨーロッパでもイギリスは少し慎重な姿勢を取っており、該当する法律はありますが、年間の適用は数件となっています。

逆にアメリカでは、表現の自由がアメリカ合衆国憲法修正条項で規定されているため、どのような表現を行っても法律での規制というものはありません。その代わりに、社会的な制裁をもって秩序を維持するという仕組みになっています。

海外では元々存在している民族問題や宗教問題、9.11の同時多発テロに端を発するイスラムへの嫌悪感など、日本よりもヘイトスピーチの問題にナーバスになっているのが現状です。

ここまでヘイトスピーチ問題の概要をお伝えしてきました。ドイツやフランスのように日本でヘイトスピーチの法規制が進んだ場合、どのような社会になるでしょうか。逆にアメリカのように全く法規制しない場合はどうなるでしょうか。

次回後編では、ヘイトスピーチに関する「私」の考えと結論をご紹介いたします。