2015.6.29
何をすべきなのか!?TPPの締結後の著作権の非親告罪【第52回山田太郎ボイス】
そもそも日本の著作権法そのものに欠陥あり!?TPPによる著作権非親告罪化は、日本の著作権の考え方を根本から覆す大問題です。
著作権非親告罪化に潜む本当の問題は?
TPPで著作権が非親告罪化されると、著作者の訴えなしに侵害者を起訴することができるようになるため、多くの犯罪者を生み出す可能性があります。たとえば、「会社で雑誌の自社に関する記事をコピーして配る」「業務のため参考HPをプリントアウトする」という日常的に行っている行為でも、第三者の告発によって捜査されることになります。
本来、このように雑誌をコピーして配布することは、親告罪であろうと非親告罪であろうと「犯罪」ですが、今のところ、日本の著作権法は親告罪であるため、著作権者の訴えがなければ罪にはなりません。
しかし、著作権が非親告罪になると、国民が普通に暮らしていて現実的に守れないような行為までもが逮捕される対象になってしまいます。つまり、今、考えるべき本当の問題は「非親告罪になってしまった場合に、日本の著作権が厳しすぎる」というところにあるのです。
著作権法の根本的な見直しが必要!
現行の著作権法の草稿執筆者である、加戸守行先生はその著書の中で、著作権については私権であり、その侵害について、被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が乗り出す必要が無いと述べています。著作権の非親告罪化は、この原理原則を大きくかえることになります。
これまでは、著作権侵害は原則不可とした上で、一部例外をポジティブリストで表現していました。ポジティブリストはネガティブリストと比べて厳しいですが、親告罪を前提としていたため、うまく運用できていました。このまま著作権法が非親告罪化されると、厳しいポジティブリストの規定だけが残ってしまいます。
「ポジティブリスト」は、していいことを限定し、それ以外は全て禁ずるという厳しいものです。反対に「ネガティブリスト」は、してはいけないことを限定し、それ以外全てを許可するという、比較的優しいものです。
ある著作権に詳しい法律家は、日本の場合、ほとんどのケースで著作権法違反の対象となってしまうと述べています。そのため、親告罪、非親告罪関係なしに、著作権法をしっかり見直すべきであるという議論があります。非親告罪化に伴い、著作権法が改正されることを踏まえると、この議論をしっかり行うべきでしょう。
仮に、著作権法改正の際、特許法改正のときと同様に、123条の第1項にある「公訴がなければ告訴を提起することができない」という条項を削除するだけに終わってしまうと、厳しすぎる著作権法が適用されるという大変な事態になると予想されます。
今後日本がとるべき対策は?
アメリカの著作権法107条では、著作物の使用目的、性質、量、価値の4つの判断基準をもとに、その著作権の使用がフェアユースとなるか否かを判断します。この規定はその後に続く「排他的権利の制限(著作権者の権利を制限する項目)」に先だってあることから、アメリカではいかにフェアユースが重視されているかを見ることが出来ます
フェアユースというのは、「一定の条件を満たせば、著作権者の許可がなくても、著作物を再利用できるとした著作権法の原理」のことで、裁判や判例を積み重ね、実態に合わせた形で運用することをいいます。
日本も、アメリカのように、著作権使用の範囲について、もっと幅広く考慮されるべきではないでしょうか。フェアユースを取り入れた大幅な著作権法の見直しを考えていく必要があるでしょう。この著作権法の改正はTPPの批准とあわせて来年6月をメドに行わなければなりません。
また、私自身も、引き続きTPPの非親告罪化については反対していきますが、もし、これが認められるということになれば、国内での法制定が最大の山場になると感じています。実態にあった、著作権法の抜本的な見直しを訴えて行きたいと思います。
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●山田太郎略歴(https://taroyamada.jp/?page_id=13)
慶應義塾大学経済学部、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程。
外資系コンサルティング会社などを経てネックステック社を創業、
同社を実質3年半で東証マザーズに上場。その後、参議院議員就任。
東大・東工大・早大などでも教鞭をとり、著書も多数。
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