2016.5.15
ヘイトスピーチ規制法案への反対理由について
本日、与党提出のヘイトスピーチ規制法案(正式名称:本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案)について、参議院本会議で反対票を投じました。
反対した理由
- 本件の法律やヘイトスピーチについては、個人法益と社会法益の部分に分けて考える必要があります。個人法益であるヘイトクレイムについては、現行法でも侮辱剤や傷害罪、名誉毀損、器物損壊等にあたり、当然、許されるものでは無いと思っています。また、ヘイトクライム以外のヘイトスピーチも全て許される訳ではなく、一部は規制されるべきものもあると考えています。(例えば「○○人死ね」などと連呼する威圧的なデモ等)
- ただし、社会法益は社会秩序の維持を目的としていてい、それを法律で規制することは、あくまでも最終手段であるべきです。表現の自由の観点からも、文化や風習、社会的制裁などでまずは対応するべきだと考えています。なぜならば、社会法益を法律で規制することは、他の人の権利を奪うことにもなりますし、そもそもそれが、良いこと・悪いことなのか、全てを国家が決めるのかという議論が残ります。
- また、今回の法律では、「ヘイトスピーチ」についての定義が依然としてあいまいです。この法律では、私には何がヘイトスピーチであるかが分かりません。この法案が通ることで、様々な表現活動が萎縮する可能性があります。特に法案2条のヘイトスピーチの定義において、差別的言動の”言動”の範囲には出版までも含まれます。(法制局に確認済)デモとは異なり書籍までも規制を求めていることは過剰と言わざるを得ません。
- ヘイトスピーチの具体的規制方法について、表現の自由について重視をしている英米法において、具体的に法律で規制するのか、表現の自由を守りつつ社会的な制裁などで対応するかなど、方法は別れています。一方、歴史的に人種差別に敏感な大陸法は、ヘイトスピーチについて、人種差別とは何か議論を積み重ね厳しい法律を作っています。他国に比較しても日本での議論は未だ足りないと言わざるをえません。
- 人種差別はあってはなりません。しかし、まずは、「何を”人種差別”と定義するのか」について、議論する必要があります。何が人種差別であるかということの定義が出来れば、今回のヘイトスピーチについての議論も進むのではないでしょうか。