2024.10.22
国連による日本のアニメ産業についての指摘について
この記事にある国連の報告書は、昨年8月に行われた調査に基づくものです。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00159/100200278
私も尽力しつつフリーランス新法を国会で成立させました。新法が来月2024年11月から施行されますが、まず現場で新法をしっかりと遵守させ、現場の改善を行うことが最も大切です。そうすれば、国連による日本のアニメ産業についての指摘は重要な部分について妥当しないことになります。
あたかも何も対策や対処をしていないかの情報によって日本のアニメが世界の市場から排除されるようなことがあれば、日本のアニメ産業の危機となるだけでなく、アニメーターの待遇改善と真逆の方向に進んでしまいます。それらを今、国連や国際世論にもしっかりと主張していくことも重要です。
改めて説明していきます。この記事にある「国連が5月28日発表した調査報告書」は、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が、昨年2023年7月から8月にかけて日本で行った調査をもとに作成されたものです。アニメ産業に関する具体的な指摘は、以下のとおり。
「日本のアニメーション市場は大幅な収益増を記録し、2兆7400億円(約200億ドル)に達している。しかし、この成長にもかかわらず、アニメーターの初任給はわずか150万円(約1万ドル)である。この格差は特に懸念すべきものであり、2023年には、この業界で雇用されている人の約30.8%がフリーランスまたは個人事業主として働いていたと報告されているが、彼らは現行の労働法による保護を受けていないとされている。これにより、過剰な長時間労働が可能になり、不当な下請け関係が永続化する。しかし、アニメーション制作会社とその下請け会社には何の罰則もない。さらに、クリエイターは知的財産権を十分に保護しない契約に署名することが多く、搾取されやすい環境を生み出している。深刻な労働力不足と相まって、アニメ制作委員会を含むこの業界の企業は、これらの問題に対処し、アニメーターの労働環境を改善し、この業界の崩壊を防ぐために力を発揮することが不可欠である」(DeepLによる翻訳)
前回2019年の参院選で、私は「クリエイターの低賃金・長時間労働待遇の見直し」を公約として掲げ、当選後はアニメーター等の待遇改善のために様々な取り組みをしてきました。これらの問題の大きな原因はクリエイターの多くがフリーランスであり、資本金1000万円以下の発注者と取引をする場合は、労働法でも下請法でも守られないという点。そのため、私は下請法の資本金要件の見直しに向けて関係各所(政府や党内外、産業界)に働きかけてきましたが、その一つの成果として昨年2023年成立したのがフリーランス新法です。
新法は、下請法と違い取引類型に制限がなく幅広くフリーランスが保護され、発注者に対して、取引条件の明示義務と支払期日の設定義務を課すとともに、7つの行為を禁止しています。
類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めることは「買いたたき」として禁止される行為であり、違反には罰則もあります。そのため、不当な低賃金に対する歯止めになります。また、取引条件として納期が明示されること、「短納期発注を行う場合に、特定受託事業者に発生する費用増を考慮せずに通常支払われる対価より低い報酬の額を定めること。」が買いたたきとして禁止される行為とされていること等から、過剰な長時間労働への一定の歯止めにもなります。さらに、「買いたたきの禁止」と「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」によって、クリエイター達の知的財産権も保護されることになります(図参照)。
フリーランス新法が来月2024年11月1日から施行され現場でしっかりと遵守されれば、上記の国連による日本のアニメ産業についての指摘は重要な部分において妥当しないことになります。 まずはフリーランス新法がしっかりと遵守される努力をしなければなりませんが、それを前提に、上記の指摘が妥当しなくなっている部分があることを国連にしっかりと反論することも必要です。
過去の情報・真実とは言えない情報によって日本のアニメが世界の市場から排除されるようなことがあれば、日本のアニメ産業の危機となるだけでなく、アニメーターの待遇改善とは真逆の方向に進んでしまいます。国連の報告書は極めて大きな影響力をもっていますが、情報が誤っている場合や過去のものとなってしまっている場合もあります。
そのような現在の真実ではない国連の報告書によって日本のアニメやマンガ、ゲームが不当に扱われることは絶対にあってはなりません。これまでもそういった一部の国連の報告書と闘ってきましたが、今後もしっかりと対応していきます。アニメーター等の待遇改善についてより一層の取組みを進めていくとともに、フリーランス新法施行後に国連の報告書の上記の指摘への対応も検討していきます。