2020.6.9
文教科学委員会〜著作権法改正案〜(2020年6月2日)
〇山田太郎君 自由民主党の山田太郎でございます。
本当に、私も実は去年のたしか二月ぐらいはまだ自民党入りしていませんでして、この法案に反対をしている立場で臨んでいたと、何と因果なものかなと。それから、自民党に入ってから実は実務の責任者としてまとめるという役割をやりまして、ここまで至ったということで本当に感慨深げだと思っています。
そのとき、特に思い出しますのは、今日はまず、赤松参考人とは随分反対のときに一緒に気勢を上げまして、そこからのちょっと御評価をいただきたいなと思いますが、当時、ダウンロード違法化の対象範囲見直しということで声明まで出しました。私もその声明を出した会議にも参加していた身でありますが、今回、どういうふうに変わってどう評価されているのか。それでもまだ、ここはもうちょっと厳しく、又は萎縮に対して緩和するべきじゃないか、それぞれの意見あると思うんですが、是非率直なところの御意見いただきたいと思っています。
○参考人(赤松健君) 確かに、去年、漫画家協会としてはいろいろ問題点は指摘したんですけれども、当時から、批判というよりは前向きに改善を提言するというような声明だったんですね。今回の法案は、私自身が有識者検討会に参加したこともあって、漫画家にとって非常に満足のいく、バランスの取れたものになったと感じています。
昨年あった、大きな網で小魚まで捕ってしまうみたいな表現がありましたけど、創作に萎縮が生じかねない要素があった。新しい要件でかなり払拭されて、ピンポイントに海賊版だけがたたけるというようないい法案になったと承知しております。
以上です。
〇山田太郎君 ありがとうございます。
もう一つ、今回の法案、これもしかしたら参考人に聞くべき話じゃないかもしれませんが、赤松さんにまた代表して聞きたいんですが、結構報道でも間違って報道されるケースがすごく多くて、理由は何かというと、多分この法律が分かりにくいんですね。何が間違っているかと。よくあるのが、無断掲載されたものを使ってと書かれたりするんですが、実は、正しくは違法アップロードされたものでありまして、引用の範囲であれば当然無断掲載でも構わなかったりするわけなんですよね。あるいは私的利用かどうかということも関係したりしています。
そもそも著作権法が非常に複雑で難しいといったところもあるんですが、今回、割とリーチサイトに関しての議論についてはもうちょっと厳しくてもいいんじゃないかというぐらい支持は得られると思うんですが、多分、ダウンロード違法化に関して、侵害コンテンツダウンロード違法化に関してはまだ議論の余地があると思っています。
ただ、是非赤松さんの方から、私も、当初は幾ら違法だといってもダウンロードを違法化するのは非常に萎縮が高いんじゃないかという懸念を持っていたんですが、まさに赤松さんが出していただいた怒りのポイントの二ページのこのサイバーロッカーとの関係ですよね。実はこれは、もちろんアップロードする人間が一番悪いんですけれども、ダウンロードして持ってきてアップロードしているので、そこのダウンロードしているところに関しての違法なものについては何とか制限をしていかないと結局この連鎖を断ち切れないということは、相当実は自民党の部会の中でも赤松さんに主張いただきまして、それで、私もなるほどと思って理解したところでありますが、多分そういうところが伝わらないので、普通の個人がアップロードしたものに関してもしかしたら捕まっちゃうんじゃないかとか、これは違法ダウンロードしたものが対象なのにもかかわらず、何かダウンロードを何でもすると捕まっちゃうんじゃないかとか、こういう誤解があると思うんですが、その辺りの、普通の若者に対して、特に赤松さんは若者に対しても接していると思いますので、どういうふうに宣伝していったらいいかとか、漫画愛好家に対してどういうふうにこの辺を周知徹底していったらいいのか、何かお考えみたいなものがあったら是非いただきたいと思います。
○参考人(赤松健君) まず、ダウンロード違法化に関しては、既に音楽と映画なんかは、海賊版と知りながらダウンロードするのは違法なんですよね。それで、映画が始まる前にCMで映画泥棒はいけないよみたいなのあるじゃないですか、ああいうものですごく国民に対して宣伝はできていると思うんですけれども、今回、音楽や映画は違法ダウンロードは駄目だけど漫画はいいよみたいなメッセージを今出しているような状態にあるので、これはまずやめてほしいと。それに加えて、我々、漫画家、権利者団体と出版社含めて正規版の流通を促進していくような試みを幾つかやっているので、それで宣伝していくということが重要ですよね。
あと、刑事罰に関して山田先生のすごい関門が、捕まるまでに随分関門があって、一番最後に、しかも作者がオーケーなら別に大丈夫みたいな表がありましたけれども、かなりの高い要件、数多くそろっていて、海賊版業者しか摘発できそうにないと。今回は海賊版業者の摘発が目的なので、まさに理想的な状態にはなっているかなと思います。
〇山田太郎君 ありがとうございます。
次は、ちょっと今のに関連して上野教授にお聞きしたいと思います。
上野教授は、当初のこの法案を作ったときに、刑事罰の適用の線引きについて懸念があるということを表明されていました。
今、赤松参考人の方からも御指摘があったんですが、ちょうどこれを刑事罰で議論するときに、侵害コンテンツダウンロード違法化に関しては十個の関門があるということで立てたんですね。逆に言うと、こんなに十個もあると捕まえるべき者が捕まらないんではないかという、もっと逆に、海賊版を阻止するためには、ちょっと逆に、萎縮効果を萎縮し過ぎて、緩和し過ぎているんではないか、こういうようなもしかしたら権利者からの意見もあるかもしれないというふうに思っているんですが、例えば、先ほど、今、赤松参考人から御紹介いただきました十個の関門というのは、著作権法上の著作物であって、ダウンロードした場合であって、私的利用した場合であって、違法にアップされた場合であって、正規版が有償のものであって、軽微でなくて、継続反復していて、違法とアップされたと確実に知りながら、勘違いではなくわざと、そして特別な事情がない場合なんですよね。
という、ほとんど、やっぱりこれで捕まるのは相当悪だなとも思うんですが、その辺り、先生がかつて刑事罰を引くには線引きが必要だということで関門を十個つくってしまったんですが、その辺りの御評価ですね、いい悪いも含めて率直なところ、いただけないでしょうか。
○参考人(上野達弘君) 御指摘のとおり、今回のダウンロード違法化については非常にたくさんの要件があります。そして、刑事罰については更に加重された要件がございますので、これで十分じゃないんじゃないかという見方もあるかもしれませんけれども、それによって確かにこのダウンロード型の侵害サイトができやすくなってしまってはまずいと思います。
しかし、今回の改正は、これはあくまでダウンロードの部分、私的なダウンロードというところですので、やはり私的な領域における自由というものの過大な制約になってはいけないと。そのバランスからやはりこれぐらいの要件を課したものというふうに理解しておりますし、特に刑事罰についてそれぐらい加重された要件が課されているというのは妥当なことではないかと考えております。
〇山田太郎君 最後に、CODAの代表理事の後藤さんにお伺いしたいと思います。
結局、海賊版対策は、確かにダウンロードよりもアップロードした側が悪いだろうということで、実は党内の議論の中でも、何が今回まだ議論できていないかという大きなところは、やっぱり海外に対する対応だろうと。先ほど後藤さんの説明の中にもありましたが、特に海外でのものについてどういわゆるこのアップロードした者の摘発をしていくかというのは相当大変だと。先ほど、CODAの人数、ちらっと二十二名とおっしゃっていましたが、私は、ちょっとこの陣容と特に予算では少ないんではないかなと、こういう指摘をさせていただきたいんですね。
具体的に言いますと、例えばアメリカが、さすがにコンテンツ大国だというふうに思いますけれども、アメリカはACEというアメリカの海賊版対策組織がありまして、会員数はCODAさんと同じ三十五社ぐらいのやつが年間四十五億、運営予算を使っています。一般会員でも二千二百万払わなければいけないということで、特にボードメンバー七社は大きくて、五億円以上の参加費を払っているというぐらい海賊版対策に対して、やっぱりそれだけの被害があるからなんでしょうと思いますが、それだけ一生懸命やっているわけですね。
一方で、CODAさん、民間でメーンはつくられていますが、三十一社正会員がいるんですが、会員費が百二十万円、団体会員でも四十八万とか賛助会員で二十四万円というようなことで、もう全く額が違うと。年間予算三・三億円でやられているようですが、うち八〇%は経産省からの予算で二・三億円ということで、私は、法律がと言う前に、まずは民間が自ら海賊版対策に取り組むというんですかね、自らのこととしてやっぱりやる、それでも駄目な場合、法律でもって政府も乗り出すということの方が、権利の関係からいっても、民間自身の権利を守っていくということなので正常だと思います。そうなると、やっぱりここは、予算も人数も少な過ぎるんではないかなというふうに思っております。
確かに、これまでの実績、非常にCODAさん上げていらっしゃいますので、一生懸命やられているのは分かるんですが、やっぱりアメリカ等々各国のエンターテインメントの海賊版対策における人員や費用からしてみても少ないというふうに思っておりますので、是非その辺りを、お考えというか、今後どうされていこうとされているのか、その辺りもお聞かせいただければと思っています。
○参考人(後藤健郎君) 先生、どうもありがとうございます。
今、ACEの御紹介がございましたが、ACEのボードメンバー、これの主要がMPA、アメリカのハリウッドの映画会社、ネットフリックス、アマゾンです。彼らのビジネスモデルを御覧いただきますと、いわゆる国内が四割、海外が六割、それが三対七とか、いわゆる海外でお金もうけているんですね。で、マーケットも非常に大きゅうございます。一例としましてディズニーを挙げて、コンテンツの売上げ、日本の映連四社、東宝、東映、松竹、角川、これの大体十倍です。ということで、マーケット規模が大きい、全然隔世の感があると。日本の場合はやはりドメスティック、国内で深掘りをするというビジネスモデルですから、そもそもそれが違うということが言えます。
ただ、先生が御指摘のように、とはいえ、キラーコンテンツである漫画やアニメ、これは世界全域で侵害されているということがあります。これに対しては、やはりCODAとしても、今後、違法アップローダー、それとサイトの運営者等々を確実に潰していかなきゃいけないというふうに思っております。
先生が御指摘のとおり、経済産業省の支援を受けているところでありますが、今後、我々メンバーも再度仕切り直しということも今後していく必要があろうと思いますし、御指摘のとおり、二十二名という人数も世界に対応していくに当たっては少ないというふうに思っておりますので、これを機に、CODAの再構築というのも検討してまいりたいというふうに思います。
以上です。
〇山田太郎君 最後の質問にしたいと思いますが、これは赤松参考人と後藤参考人に併せてお聞きしたいんですが、結局、海賊版を一番防ぐ最大のやり方は、もしかしたら正規版の流通ではないかなというふうにも思っています。
音楽業界、御案内のとおり、前回著作権をかなり厳しいものを作りましたが、実際には、ストリーミングの時代になりまして、余りダウンロードする人というのはいなくなっちゃったわけですよね。非常に課金の仕方も便利になってということだと思います。ただ、漫画やアニメの場合は、御案内のとおり、その放送が見れないとか、すぐデジタルで買いたいのに買えないと、そういったところもあると思っております。
そういう意味で、実は最大の海賊版対策は、正規版流通をどうやってもっと促進するのかということにも懸かっているんではないかと。特にデジタルの時代に入ってもきていますから、その辺りをこれからどう強化していくかということもあると思っております。そういった意味で、正規版流通に関して、本来CODAさんはそれがお仕事で、海賊版対策のためにつくった組織じゃなかったはずなんで、正規版流通促進というところでありましたし、一方で、漫画家の赤松先生もやっぱり正規版が出るということが一番うれしいわけでありますから、その辺りどういうふうにしていけばいいのか、御示唆いただければと思っています。
○参考人(赤松健君) 漫画村で当サイトは合法サイトですみたいなのが書いてあって、読者からすると正規版と海賊版の区別が全く付かないという問題があるんですよね。それで、出版社が中心となって、ユーザーに正規版コンテンツと分かりやすくするためのABJマークというものが作られました。これが、マークが普及すれば海賊版との区別が分かりやすくなると、それ勝手に使うと違法なので。それに対して漫画家協会も協力していくと。
今、紙の単行本も売れているんですけど、電子版がすごく売れています。これはSNSとかで、今LINEマンガが一番と思うんですけど、SNSで若者にすごく正規版が届けやすくなっていると。一巻無料キャンペーンとかもすごく好評ですし、こういうようなABJマークとかSNSでの正規版流通が二つ重なってくれば、読者、作者、出版社の三方で全てよしになると考えております。
○参考人(後藤健郎君) 先生の御指摘のとおりでありまして、正規流通を伸ばすということが一番でございます。
先ほども申したように、日本のコンテンツの場合はドメスティック、国内中心のビジネスモデルでありますから、海外のビジネスを余り考えていなかったというのが現況であります。とはいえ、正規流通が一番海賊版対策に資するということは当然でございますので、今後その辺のビジネスモデルの在り方というのも個社に検討をいただきたいというふうに強く思っております。
さらに、CODAの活動の中で海賊版対策をして、相手方が大きなUGCサイトであったりします。そうすると、彼らも違法はもうしたくないから正規流通したいということも話しかけがありまして、この違法対策から転じて正規流通ということで、今中国の大手プラットフォーマーと正規流通について話合いをしているというところでございます。
以上です。
〇山田太郎君 時間になりましたので、ありがとうございました。