2025.7.3

新サイバー犯罪条約に関して 政府の見解を確認

新サイバー犯罪条約に関して、
“現行のサイバー犯罪条約(ブダペスト条約)とバッティングするので、ブダペスト条約を脱退しないと締結できない”、
“日本はブダペスト条約を締結しているのだから、わざわざ露中が主導してきた国連の新サイバー犯罪条約を批准しないはず”
などといった複数のご意見がありました。

これらに間違いの部分がありますので、これまで山田太郎事務所で外務省と交渉してきた事、本日外務省に改めて確認した事を、外務省から提供された資料と共にご説明いたします。

上記の言説が本当であれば、表現の自由にとってどれほどよかったかと考えています。

まず、以下の点は、外務省に確認済みの政府見解です。

Q1
共通する事項に関する複数の条約は締結できないのか?
A1
そのようなことはない。

Q2
ブダペスト条約を締結している日本は新サイバー犯罪条約を締結できないのか。
A2
そのようなことはない。
ブダペスト条約を締結したまま新サイバー犯罪条約を締結できる。

Q3
日本は新サイバー犯罪条約を締結しないのか。
A
そのようなことはない。
現在、締結に向けて検討中である。

私は、新サイバー犯罪条約について、第1回アドホック委員会が開催される前から、表現の自由が失われることのないよう、外務省への働き掛け等を行ってきました。

添付画像は、新サイバー犯罪条約の条約策定交渉開始にあたって、外務省から提供された資料です。

そこには、「新条約が、賛成派のためだけのものとなる場合、国際社会全体で統一的な協力が困難となり、犯罪者を利する結果となりかねないため、反対派であっても支持できる内容とするよう対処することが重要(例:ブダペスト条約と整合性のとれた内容とする等)」であるため、「我が国は、…ブダペスト条約派と連携して新条約策定交渉に積極的に参加する必要がある」と記載されています。

以上の記載は、ブダペスト条約を締結していても新サイバー犯罪条約を締結できることが前提ですし、日本政府としても新サイバー犯罪条約を締結することが必要だと認識しているという内容です。

国際的なサイバー犯罪対策を進める観点から、犯罪データの共有の考え方の違いのほか複数の課題を含めて、新サイバー犯罪条約が、ブダペスト条約と整合性のとれず、およそ締結できない条約にならないよう、条約交渉の場で調整が行われてきました。

そのようにして、マンガ・アニメ規制を阻止し、留保規定を死守したのです。当初は、留保規定が必要であると主張する国が極めて少ない状況でした。しかし、アドホック委員会の再開最終会合で行われた留保規定の削除についての事前採決では、賛成51対反対94となり、厳しい条約交渉の中で留保規定を勝ち取ったのです。

新サイバー犯罪条約は、ブダペスト条約と整合性がとれないものではなくなりましたが、留保規定を使わずに締結した場合は、創作表現や文章・音声まで犯罪化の対象となる、そのような内容の条約です。

留保規定を使わず、創作表現等も犯罪化すべき、そのような主張をする国会議員や団体の声が大きくなっている今、新サイバー犯罪条約は表現の自由にとって危機的なものであると考えています。