2021.2.20
自民党「孤独・孤立対策特命委員会」発足、事務局次長に就任
2月12日、菅内閣において「孤独・孤立」担当大臣が新たに新設され、坂本哲志内閣府特命担当大臣(少子化対策)が任命されました。それに伴い、自民党内でも「孤独・孤立対策特命委員会」が設置されることになり、私も事務局次長に就任させていただくことになりました。
私は、一昨年からさまざまな活動を通して日本で浮き彫りになっている「孤独・孤立」の問題に取り組んできました。特に参議院自民党の「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」では、現場視察やアンケートなどで多くの国民の声を拾い上げ、専門家とも議論を重ね正面から「孤立・孤独」の問題に向き合ってきました。一昨年・昨年は地方の独居高齢者の孤独・孤立問題、今年は若年層の自殺者の増加や、アンケートでも浮き彫りになったコロナ禍での『ニューフェイス(大学1年生・新入社員)』の孤立・孤独問題などの対策に焦点を当ててきました。
そして、1月からは私も呼びかけ人の一人となり、自民党の若手有志によって「孤独対策勉強会」を発足させました。まさか、これほど早く担当大臣が決まると思っていませんでしたが、より具体的な日本が取り組むべき孤独・孤立対策について議論を深めていきます。
先日2月15日は、第3回目の「孤独対策勉強会」を開催しました。今回は、イギリスの孤独対策について、イギリス政府のラモナ・ハードマンさん(head of tackling loneliness for UK Department for Digital, Culture, Media & Sport)からお話を伺いました。イギリスでは1年をかけて“望まない孤独”についての調査を行い、孤独による経済損失が年間4.7兆円にも及ぶと試算され、2018年に孤独担当大臣が設置されています。
写真)イギリス政府のラモナ・ハードマンさん(Ramona Herdman:head of tackling loneliness for UK Department for Digital, Culture, Media & Sport)
ラモナさんからは、2018年に発表されたイギリスの“包括的孤独対策”の3つの柱(①孤独に対する悪いイメージの払拭、②組織(体制)づくり、③人々をつなげるためのインフラ整備)について詳しく説明していただきました。
①孤独に対する悪いイメージの払拭について
これは日本でも同じだと思いますが、イギリスでも孤独であることが恥ずかしいと考える傾向にあり、周囲の人を頼れない。という実態があるそうです。まずは、孤独が恥だというスティグマを払拭し、周りの人と積極的に話すことができ、他の人を助けることができるアクションをつくっていくことが重要だと指摘されました。イギリスでは孤独についての授業を実施しており、理解を促進していくことに効果があるそうです。そして、孤独について議論するためのキャンペーン「孤独について話そう(Let’s talk loneliness)」も効果があったとの報告がありました。
②組織(体制)づくり
現在イギリス政府は70の組織と協力して孤独対策を推進しているそうです。NPO、チャリティー団体、銀行など幅広い協力体制です。例えば、民間企業でも現場スタッフがお客様をもてなすとき、孤独を察知して助けることができるような研修などをおこなっているとのこと。そして、政府はNPOやチャリティー団体、コミュニティ団体に資金を提供し、このような団体は孤独を感じている人に社会的スキルを鍛える手助けをしたり、集いの場を提供することもできます。NPOなどへの資金提供額は2500万ポンド(日本円で約36億7000万円)だそうです。首相が戦略の旗振りをした影響もあるが、企業としても従業員の孤独、顧客の孤独の問題を認識していたので、企業にもメリットがあり政府との協力に前向きだったそうです。
そして、この孤独対策に政府の権威がついたことで、これまで活動してきたNPOも、市民の態度が大きく変化したことを感じているという大きな効果があったとのことです。
③インフラ整備
交通網の整備で人が集まりやすくなったり、都市や住宅の再設計、雇用情勢の改善で友人をみつけやすくなるという効果があります。また、社会的処方として、孤独の問題以外で病院にかかるときに、孤独対策のアプローチからソーシャルワーカーがほかのサービスにつなぐこともしているそうです。
そして、なによりも大切なことは、孤独問題に対する指標をつくることと、エビデンスを集積すること。何をもって孤独とするのか、標準的な孤独の指標を国が設定することで、研究者や大学が孤独問題について研究できるようにすることが重要だという指摘には、今後の日本においても重要な視点でだと思いました。
〇コロナ禍での状況
イギリスではコロナによって孤独や孤立が深刻な状況になっているわけではないそうです。すでにソーシャルネットワークをもっていた人は、オンラインツールで関係を維持できているからです。しかし、コロナ以前から問題を抱えていた人は、孤立や孤独のリスクが高くなっているといいます。そのリスクが高い人は、すでにデータが集まっており、若い人、収入の低い人、精神疾患を持っている人、仕事がない人のグループです。しかし、コロナが長期化し、家族をなくす、失業などの広がりがあると長期的な悪い影響があると考えているとのことでした。
孤独対策を始めてからの明るい兆しは、「国民が孤独について話すようになっていることと、孤独に対する悪いイメージがなくなってきている。このような流れをつくっていきたいと思う。」とおっしゃっていました。
私からはラモナさんに「ニューフェイスの孤独」やストレスはインターネットで解消できるのか。良いプログラムや解決方法はあるのか。という質問をしました。
それに対し、「デジタルを使って彼らを支援することは政府としてしようとしてます。若い人々の膨大なデータはないが、高齢の人も若い時が一番孤独だったと感じている。というデータはあります。若い人は関係性を築いていくことに自信がなく、これはコロナがなくても問題です。大学と協力して学生へのプログラムは作成したが、新入社員については課題が残っている」ということです。
早稲田大学政治経済学部上田路子准教授からはコロナ禍で見えてきた孤独感について、最新の研究データを報告してもらいました。
なんと、世界的な指標を用いると「日本人の40%が孤独と感じている」という結果がでました。そして日本でも、高齢者ではなく若い人の方が孤独を感じているというのです。若い人においては男女差はないですが、不安定な職の人は孤独感が高い傾向にあます。
図)上田路子准教授提供資料
そして、低所得の人が孤独感高く、高所得は低いという強い相関関係がでました。しかし、社会的孤立がある・ない(家族と同居している、職場で多くの人と働いている)と、精神的孤立は相関関係がないという大変興味深い結果もありました。
また、孤独を最も強く感じているグループは65%ものうつの症状があり、孤独が強いほどメンタルヘルスが悪化しているのはほぼ確実にいえる、という報告にも驚きました。
図)上田路子准教授提供資料
一方、大学生の結果をみると、「いつも孤独を感じる」人は10%、「たびたび」と答えた人は31.8%、「うつや不安障害がある」と推測されるのは37.2%といった大変衝撃的な数値でした。また、「困ったときに頼れるひとはいますか?(家族以外)」(いわゆる仲のいい友達がいるかどうか)という問いには、全体の8.5%は「誰も頼る人がいない」と回答しました。これは、一刻も早く対処しなくてはいけない状況であると強く感じました。
図)上田路子准教授提供資料
〇今後の「孤立・孤独」対策に必要なこと
今後の孤立・孤独対対策を進めていく上では、まず、根拠に基づく政策立案のために、日本全体で大規模調査をすることが重要だと思います。そして、孤独を抱えている人がなにを望んでいるかを検証し把握することが必要です。そして、政府以外の民間含めた様々な組織と協力し、文化的なシフトを起こしていかなくてはいけません。
また、自殺対策ともつながりますが、現状ではうつなどの精神疾患について、高校の授業でしか扱っていないため、義務教育の過程から精神疾患について授業で扱い、子ども本人がうつについて知り、早期発見につなげるというアプローチも必要だと思います。
今後の孤立・孤独対策がしっかりと中身のあるものになるよう党内でも責任をもって議論を進めていきます。