2013.6.17
HACCP支援法について質疑いたしました。
2013年6月13日、参議院農林水産委員会にて質疑いたしました。
議事録
○山田太郎君
みんなの党の山田太郎でございます。
先々週は、実は長岡の棚田の方に手植えを行っておりまして、泥んこになりながら田植させていただきました。先週は、逆に大規模集積農業ということで大潟村をつぶさに見させていただきまして、非常に棚田と大型集積の典型的な違いを勉強したということで、またこの辺の話もいつか質疑させていただきたいと思います。
今日は、HACCP支援法の質疑ということで、少しまた数字で迫りながら、この法律の意義その他について少し議論していきたいと思っております。
今日はちょっと資料をたくさん用意しちゃったんですけれども、お手元の資料の一ページを見ていただきたいんですが、実はこれ、平成十年以降、去年度まで、HACCPの、この法律による融資実績をまとめたものです。特に注目していただきたいのは、例えば平成二十二年一件、二十三年二件、平成二十四年三件といったように、資料を取り寄せてびっくりしてしまったんですけれども、極めて少ないということなんですね。
一方で、この法律の制度の趣旨は、多分約五万社ぐらいある中小の食品製造業のHACCPを促進しようと、しかもその五〇%にHACCPを適用しようという中で、素朴な疑問として、一年に一件や二件しか使っていないこの融資制度でどうやって政策目標を達成するのか、正直さっぱり分からないといったことであります。こんなところを素朴に農水省の担当の方に昨日、以前含めて疑問をぶつけてみたんですけれども、担当者の方は、数は少ないけど、アナウンス効果というかPR効果というものが期待できるんですと、こういうお話でありました。
確かに、HACCP、幾つかのコアをつくってそれに融資をして、周りでこういうやり方でできますよということであればそれはそうかなと思って、企業名等を含めてどんなところがやっているのかということをお伺いしましたら、それは公表できないということで、ぎりぎり公表していただいたのが実は次のページの、二ページ目の資料でありまして、この融資実績のケースということで、平成二十三年、平成二十四年のそれぞれA社、B社ということで資料を提出していただきました。
これまた見させていただいたらびっくりしたんでありますが、何とHACCPで二十億円の対応新工場建設に充てているんですが、事業費は二十五億九千九百万ということですから、二十六億の設備投資に対して何とこの融資を二十億円受けていると、本当にHACCP対応のために使っていたのか疑問でならないなと。
一方で、平成二十四年度のB社に関しても、総事業費三十一億円のうち二十億円。二十億というのは実はこれはぎりぎりの融資の上限だということでありまして、それぞれもう一つ売上げを見ていただきたいんですけれども、A社の場合はこれ売上げが五十二億、B社の場合には売上げが百三十九億ということでありまして、元々この法律の趣旨は売上げ一億円から五十億円の会社のHACCPの振興を図るということであったにもかかわらず、これまた違うところに対して低利の融資を政策的にやっていると、こういうことなんですね。
そういうことを鑑みたときに、本当にこの制度そのものというのは何なのかなと、存続の意義というのは本当にあるのかということを、正直、これまでのこと、去年、おととしのことを見ていると考えてしまわざるを得ないんですけれども、是非、今後のこの特に融資制度の方だと思うんですけれども、存続の意義がどこにあるのか、大臣にお答えいただければと思います。
○国務大臣(林芳正君)
お配りいただいた資料にもありますとおり、平成十年度に始まってから二桁のときもありましたが、直近では今お示しをいただいたような実績でございまして、トータルで百二十四件、総額五百二億円ということです。
中小事業者に限定をした平成二十年十月以降、やはり九件、六十八億円にとどまっているという状況がございます。中小事業者のHACCP導入、伸び悩んでいる要因、今までも議論ございましたけれども、やはりどうしても、専門チームの編成をするとか、それから恒常的な監視体制の構築というのがなかなか難しいということと、それからその導入に至る前段階、衛生・品質管理の基盤となる施設や体制の整備、これがなかなかできないという中小事業者が多いということでありまして、したがって、なかなかこの中小事業者のところが広がっていかないということでございます。
したがって、このまま同じことではいけないということもあって、先ほど来御議論がありますように、前段階のところを高度化基盤整備ということで位置付けまして、これのみに取り組む場合についても本法の支援対象にしようということで、それをやっていただいて、その次の段階でHACCPに行っていただくということもありますよということにいたしまして、先ほどもちょっとどなたかのときに御議論いたしましたが、有効期限も今まで五年単位で延長してきたものを十年間延長ということに変えた次第でございます。
○山田太郎君
それでは、特に融資部分が問題だと思うんですが、大臣としては、来年、再来年度、政策目標で結構なんですけれども、何社ぐらいにこの融資を広げていきたいというふうにお考えなのか、数字だけで結構ですので、お伺いさせていただければと思います。
○国務大臣(林芳正君)
前回のこの法案審議のときに数字を答弁したという記録が残っております。前回たしか一億から五十億で五〇%にするというようなことを言っておりましたが、なかなかそうならなかったと、こういうことでございますので、今回はこういう制度を少し変えて二段階でやっていくということにいたしました。
したがって、数字で目標を何%とか何社ということではなくて、段階的に取組を、これをやるというのは初めてでございますので、まずは広げた上で基盤整備をしっかりとやっていくところに注力をしていきたいと思っておるところでございます。
○山田太郎君
もう一つ、この法律の融資の前提となっております高度化計画の認定というのは、実は民間団体の指定認定機関というのが国に代わってやっておりまして、この高度化計画の認定には実は十万円とか二十万円というお金が手数料として掛かるんですね。
その認定機関を少し調べさせていただいたのがこの三ページにある、少し、資料の、関連になるんですけれども、どうもこの民間団体には農水省OBの天下りがたくさんいらっしゃるということであります。HACCP認定の請け負っている団体に農水省の天下りがいらっしゃるということはいろいろ誤解も受けざるを得ないなというふうに思っておりますが、今後、この辺の、認定機関への天下りは見直そうとされないのかどうか、その辺、是非、大臣の方にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君)
今御指摘があったところでございますが、これ、私もかつて党で行革をやっていたときに、こういう団体に結構行かれておられて、そしてこういう仕事を、まず認証制度をつくって、それで人が行くと、こういうパターンもあって、そういうことを順次直してきたところでございますが、今お示しいただいたやつはそうではなくて、元々そういう団体があって、それぞれそういう仕事をやっておられて、その後、平成十年からこういう仕組みを入れましたので、どこか適当なところはないかということでお願いしてきたという経緯がございます。
そういう意味では、二十二、指定認定機関というのがあるんですが、今お示しいただいたところで、総務省から公表済みの、農水省OB受け入れたところが四つということでございますし、それから高度化計画の認定手数料の収入が、それぞれの機関の総収入の割合、すなわち、昔よくあったパターンでいいますと、その仕事が何かもう収入の何割かに上っていてそこに行くということが見られたケースも昔はあったわけでございますが、今回の場合は、これ高度化計画の認定の手数料の収入の割合は一番小さいところは〇・〇三%、一番多いところでも一・六五%、これは平成二十三年の数字でございますから、この仕事をやることによって、天下り若しくはそういう団体をつくっていくということには当たらないのではないかと、こういうふうに考えております。
○山田太郎君
行革をやられてきた林大臣なんで、天下りしないと力強く言っていただければよかったと思うんですけれども、またそれを引き続き期待をして、次に移りたいと思います。
さて、長谷川議員の方からもありましたが、EUに対する水産物の輸出に関して、このHACCPとの関係を私も少し質疑していきたいと思っております。
お手元の四ページ、五ページの資料をちょっと使いながら説明と質問等をさせていただきたいと思うんですけれども、EUに関する諸外国のHACCPの認定状況ということで、EUに対する各国の水産品輸出の状況、それから日本からのEUへの水産輸出状況をまとめたものがこの資料であります。
御案内のとおり、先ほどから出ていますが、EUに対してはHACCP認定というのが必要になってくるんですが、その施設を調べさせていただきましたところ、何と日本はたったの二十八か所ということでありまして、アメリカの九百九十、カナダ六百二十八、驚くべきことは中国で六百二十五、ベトナム等で四百十五と、先ほどの農水省さんの答弁では、いわゆるEUは認定が厳しいからなかなか日本は進まないというようなことを言っていらっしゃいましたが、であれば、日本は中国、ベトナム以下なのかと、こういうふうにも疑ってしまうわけであります。
また、水産物の輸出量を見てみましても、非常にやっぱり日本は少ない。これ、ページ五になりますけれども、要は中国の百六十八分の一、アメリカの八十分の一、何とベトナムの百分の一という、まあ悲惨というと怒られるんですけど、これは何とかしなきゃいかぬということだと思っております。
どうしてこんなに我が国は諸外国に対して後れを取ってしまったのかなということなんですけど、まずこの辺、簡単で結構なので、林大臣の方から御答弁いただければと思っています。
○副大臣(加治屋義人君)
HACCPの認定施設等々については、今先生お述べになったとおりでございます。我が国で、例えば米国HACCPの認定加工場は二百五十四存在するのに対して、我が国のEU・HACCPは二十八ということでございます。
その要因として、我が国の主力輸出品であるサケ・マス、これは中国で加工された後にEUに輸出されることが多くて、EU向けの輸出金額は我が国水産物の全輸出金額の二・四%にとどまっていると、こういうことになっております。また、工場内の区域が壁等で遮断して区分しなければならないなど、EU・HACCPの認定基準が大変厳しい点も認可が少ない要因となっていると、そういうことを今考えております。
○山田太郎君
私の方は、逆に言うと、厳しいんであれば、じゃ、中国とベトナムとモロッコ等が何でこんなに合格しているのかという話になりますので、余りお答えになっていないのかなというふうには思っています。
次に、厚労省の方にちょっとお伺いしたいんですが、このEUのHACCP認定に非常に時間が掛かり過ぎると、こういう指摘もあります。一件認定するのに半年から一年掛かる場合がほとんどだということであります。どうしてこんなに時間が掛かるのかといった辺りを、これも簡素にで結構なのでお答えいただければと思っています。
○大臣政務官(とかしきなおみ君)
お答えさせていただきます。
委員御指摘のとおり、過去三年間の実績を見ますと、二か月から一年程度の期間を要すると。認定に時間が掛かっております。
こんなに時間が掛かる理由は二つ考えられまして、まず一つ目は、加工施設を改修する等のときにそれに当然時間が掛かってしまうということが挙げられます。あと二つ目に、こちらの施設として、認定に当たりましては、欧州委員会との協議結果に基づきまして、厚労省と地方自治体が審査及び現地調査等を行う必要がございます。ということで、当然、これは自治体とそして厚労省との連携をしなくてはいけないのですが、どうもここがうまくいかないということで時間を要してしまったという例が幾つか見られました。ということで、地方厚生局において随時自治体から進捗状況の報告を受けるようにということで、平成二十三年の三月の二日、これ事務連絡において改善を指示いたしまして、今取り組んでいる状況でございます。
○山田太郎君
今政務官の方からも少し答弁ありましたが、EUへの水産品輸出に必要なHACCP認定は厚労省、それから都道府県の衛生主管課ですか、それから保健所が行っているということであります。
食品衛生を管轄しているところが保健所というところもあって、いろいろHACCP認定ができないと輸出できないので、監督官庁というのがあるとは思うんですけれども、少しは輸出のサービス期間というんですかね、そういった形で後押しをするということで、特に保健所の職員の方々には是非このところを迅速にやるとか、分かりやすく展開するとかということで、この期間を是非短くしていただきたいと思います。
先ほど積極的にという話はあったんですが、是非今日は、業務改善のための指示を地方自治体や保健所に通達していただいて、何としてでも体質を変えていただきたいと。多分そうでないと、今日の委員会で一生懸命予算を付けるだとか、いろんなHACCPの手前の仕組みをつくるとかといっても、その後押しをする認証のところの意識が変わらなければ、多分この数は増えない、そしてEU向けに対する輸出も増えないということになってしまいますので、是非その辺りを厚労省としても認識していただいて、すぐにでも業務改善の指示を通達していただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
○大臣政務官(とかしきなおみ君)
ありがとうございます。
いい御指摘をいただきまして、地方自治体に対しましては認定の手続の迅速化を図るように、強い旨をしっかりと文書で周知していきたいと、このように考えております。
○山田太郎君
ありがとうございます。
これでHACCPも本当に、まず輸出で必要なEUから、それからもちろん国内においても中小で進むことを期待します。
さて、厚労省が通知を出すということですから、農水大臣も、林大臣も是非厚労大臣とよく相談していただいて、このEU輸出に必要なHACCP認定がどんどん増えるということを目指していただきたいと思います。是非、大臣の方からもその辺の所見と決意のほどをいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
○国務大臣(林芳正君)
大変大事なところを今日は御質問いただいて、また厚労省の方からも前向きな答弁いただいたと思っております。
やはりEU・HACCP、なかなか難しいということですが、今後はやっぱり取り組んでいかなければいけないということでございまして、実は、ただ単に厚生労働省から地元に行くという一方向、これも大事ですが、更に言うと、やっぱり実際に取られる方や地元の方も一緒になって、どうやったら行けるのかということも必要だということで、我が方から呼びかけをさせていただきまして、今年の一月と三月にHACCP認定を担当する厚労省と地方自治体と、それから関係業界による連絡協議会というのを開催いたしまして、問題点の解消を図るように取り組んできております。
例えば水産加工施設の場合は、その基礎となる、最初に岸壁に荷揚げをするところの衛生要件と、こんなところもありまして、そういうところをどうするかとか、それから写真付きのマニュアルを作るとかいうようなこともしていただいておりまして、そういうことで、かゆいところに手が届くようにしっかりと支援をしてまいりたいというふうに思いますし、一方で輸出に対応した水産物の供給体制の整備と、これも併せてやっていかなければならないと思いますが、いずれにしても取組が緒に就いたところでありますので、今日は政務官お見えでございますが、田村大臣にも顔を合わせるたびにHACCP、HACCPと私も言っているのですが、しっかりと一緒になって取り組んでいきたいと、こういうふうに思っております。
○山田太郎君
大臣から大変前向きな発言いただきました。先ほどの環境大臣との調整、それから厚労大臣との調整、農水大臣はたくさんやることがあると思っておりますけれども、我々国会の側も是非後押しをしてやっていきたいと思います。
いずれにしても、このHACCPがHACCPのためのHACCPではなくて、産業振興と輸出につながるような、そしてもう難しいから展開しないという答弁は余りいただきたくないので、じゃ、どうすればいいのかといったことを含めて、融資がやれ一件だとか二件だとか、HACCPは五〇%も行っていませんということではない、来年、再来年にこの議論をしたら随分進んだなというところを期待しまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。