2014.5.16

参議院本会議にて安倍総理に農業関係2法案と農協改革について質疑

参議院本会議にてみんなの党を代表して登壇しました。

議事は農業関係の2法案。
1つ目の農業担い手経営安定法は、補助金の交付を当年の品質及び生産量に応じた数量払いに改正するもので、WTOのルールに逆行するものと思われますので、みんなの党は反対です。
この点を安倍総理に質しましたが、WTOとの関係はこれから検討するという答弁でした。
法案が先、検討が後というのは理解できない順序です。

2つ目の農業多面的機能促進法については、法案の対象である「多面的機能」が極めて曖昧な概念で政策効果が不透明なため、みんなの党は反対です。安倍総理には、法案関連の今年度800億円の予算は8兆円の多面的機能をどのように維持・発揮するか質しましたが、その効果についてはっきりした答弁はありませんでした。

最後に、私が取り組んでいる農協改革について。
選挙の際に農協のお世話になっている自民党議員の圧力で本日公表の規制改革会議・農業WG農協改革案が骨抜きにならないよう、安倍総理の決意を聞かせてほしいと迫りました。
本会議の全議員を前にしての質疑ですので、これには野次が飛びましたが、安倍総理からは「農業を成長産業とするために政策面と合わせて農協改革の実行が必要、しっかりと実行していく」という答弁がありました。
今後、この答弁を反故にされないよう、継続して取り組んでいきたいと思います。

議事録

○山田太郎君

 みんなの党の山田太郎でございます。
 私は、ただいま議題となりました農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに関連事項につきまして、みんなの党を代表し、安倍総理に質問をさせていただきます。
 まず冒頭、本日の両法案による政策推進に大きな影響を及ぼすと思われるTPP交渉の状況と評価について、日米首脳会談の当事者である安倍総理に伺いたいと思っております。
 外交や通商交渉は一定の秘密を守るということも重要ですが、事内政に大きな影響を与えるテーマにつきましては、交渉の局面では正確な情報を政府が提供しないと国民は混乱してしまいます。
 最近のTPPに関する報道は、交渉内容が報道機関によってかなり差が出ています。例えば、TPPについて、日米両政府は基本合意したという報道がありますが、この基本合意はあったのでしょうかなかったのでしょうか。また、基本合意の結果、豚肉の関税は一キロ当たり最大四百八十二円から五十円に引き下げる、牛肉関税は現在三八・五%を九%に下げることになったとする報道もあります。これは正しかったのか間違っていたのか、お答えください。
 この共同声明には、日米両国はTPPを達成するために必要な大胆な措置をとることにコミットしているとあります。この大胆な措置とはどんな措置なのでしょうか、具体的にお答えください。
 さらに、同じく共同声明には、二国間の重要な課題について前進する道筋を特定したとありますが、どんな道筋を特定したのか、具体的にお答えください。
 加えて、安倍総理は、連休中に出席されたOECD閣僚理事会で、TPPの日米協議は最終局面と発言されています。一体どのような状況なのか、いつまでに日米交渉を終わらせるのか、五月十九日からシンガポールで予定されている閣僚会合ではTPP交渉の大筋合意を目指すのかどうか、明確にお答えください。
 では、本日の本題であります担い手法案と多面的機能法案について引き続き質問をさせていただきます。
 担い手法案についてお伺いいたします。
 私たちみんなの党は、農業の担い手の経営が安定することに異を唱えるつもりはありません。そして、担い手の経営安定は経営規模の拡大や経営の質の向上を通じて達成されるべきものと考えております。
 しかし、この法律の対象となる農業の担い手は近年減少を続けております。認定農業者は、平成二十二年三月の二十四万九千三百六十九人をピークに、平成二十五年三月には二十三万三千三百八十六人へと減ってしまっております。これまで経営安定のために交付金を交付しているにもかかわらず、なぜ担い手は減少するのか、その理由をどう分析されているのか、お答えください。
 その上で、担い手の規模要件を外す今回の改正は、担い手を増やすことになるのか、また担い手の規模拡大は進むのか、法改正の効果をお答えください。
 これまでの現行制度が、WTOドーハ・ラウンドの合意により、生産刺激的な補助金は控えるという観点から、過去の生産面積に応じて交付する面積払いを中心とした制度でありましたが、今回の法改正では、WTO交渉が膠着状態であることを踏まえ、当年の品質及び生産量に応じて交付する数量払いを基本にする制度になると伺っております。
 私たちみんなの党は、日本が国際貿易ルール標準づくりを主導することをアジェンダに掲げております。ですから、総理、TPPや日欧EPAなどに意欲を示す一方で、WTOという世界貿易の根幹を成すルールに逆行する法改正を行うのは、外国から見れば羊頭狗肉と批判されるおそれはないのでしょうか。今回の改正が世界に胸を張れる法改正なのでしょうか。明確にお答えください。
 次に、多面的機能法案についてお伺いいたします。
 私たちみんなの党は、この法案の大きな問題点は、そもそも多面的機能という法案の対象が極めて曖昧な概念であることだと考えております。美しい棚田の風景を守るという情緒的な感情論も結構ですが、総理が御自分のお金で棚田を守られるのではなく、国民の税金を使うわけですから、政策の目的や効果をしっかり検証しなければなりません。
 そういう意味で、この法案にある農業の多面的機能について農林水産省にお尋ねをしたところ、こうした機能は年間八兆円の貨幣価値があり、今度の法案はこの金額を上回る農業の多面的機能を維持、発揮促進するものという説明を受けました。
 では、この法案による今年度予算約八百億円は、農業の多面的機能八兆円のうち何兆円を維持ないし発揮促進するのでしょうか。同じように分かりやすくお答えください。
 また、森林の公益的機能は七十兆円あると伺います。どうして、今回、七十兆円の公益的機能よりも八兆円の多面的機能の方を優先して、維持、発揮促進のための措置を法案により講ずる必要があるのか、総理、その理由を明確にお聞かせください。
 次に、米の減反政策についてお伺いいたします。
 二〇一二年の農業総生産額は八・五兆円で、この二十年間で二割も減少しています。酪農、畜産、果樹、野菜は、経営改革、生産性向上が現場で進み、生産額の減少に一定の歯止めが掛かっております。しかし、米の生産の落ち込みは深刻です。
 米生産の落ち込みは、市場に見合わない米の高価格維持を行う生産調整、つまり、いわゆる減反の影響が大きいと考えております。農地の所有や利用制限を行い、優遇税制も行う。これらの過度な米の保護政策を続けた結果、小規模零細な兼業農家が維持され、経営規模の拡大が進まずに来ています。これらの米の高価格維持政策や過度な保護政策を総理はどのように認識されているのか、今まではこの政策に意味があったのか、これからは見直していく方向なのか、明確にお答えください。
 今回の担い手経営安定交付金の制度見直しは、当初、米の生産調整、いわゆる減反政策の見直しとセットで進められることを期待していました。しかし、交付金の条件とする飼料米や加工米への転作奨励と主食米との差額補償の政策は、まさにこれまでの減反政策と何も変わりません。総理は、今回の法案を含めた一連の農政改革を減反の廃止だとおっしゃっておりますが、どこが減反の廃止なのか、お答えをお聞かせください。
 また、これまで主食米を作ってきた農家が安い飼料用米や加工米などを作ることを奨励する政策は、これまでプライドを持って主食米を作ってきた農家の担い手に新しい農政の未来を予感させるものなのかどうか、この点も総理、御見解をお示しください。
 最後に、農協改革に関する総理の御認識を伺います。
 日本の改革は、生産側ばかりの改革では進みません。販売、購買などを担う農業協同組合の改革も併せて、農政改革の両輪として考えていく必要があると思います。
 ちょうど本日、政府の規制改革会議農業ワーキンググループによる農協改革案が公表されると聞いております。この農協改革案では、全中の指導権廃止や全農の株式会社化といった大胆な方向性が示されるということです。
 そこで、総理にお伺いしますが、総理は、現在の全中を中心とした農協組織の農業、農家に対するプラス面、マイナス面をどのように考えられておりますか。良い面、また改善していかなければいけない面をそれぞれ具体的にお示しください。
 また、六月は、政府としての農協改革案がまとまると聞いております。規制改革会議がまとめた農協改革案が、各方面からの反対運動、特に自民党内部で、選挙で農協からお世話になっていらっしゃる議員の方々の圧力で骨抜きにならないよう、全中、政府内・与党との調整を信念を持って進めていただきたいと思っております。総理の御決意をお聞かせください。
 本日は、政府二法案並びに関連する国政の重要課題について、安倍総理に幾つかの質問をさせていただきました。
 安倍総理には、明確に御答弁いただき、国民に対する説明責任をしっかり果たすという、政府関係者の規範を示していただけることをお願いいたしまして、質問を終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

○内閣総理大臣(安倍晋三君)

 山田太郎議員にお答えをいたします。
 TPP交渉に関する報道の真偽についてお尋ねがありました。
 先般の日米首脳会談及び閣僚協議を通じて、日米間の重要な課題について前進する道筋を特定することができ、合意へ向けて交渉が前進していることは事実であります。個々の報道の真偽や交渉の具体的な中身についてはお答えを差し控えさせていただきますが、個別の品目について日米間で合意をしているわけではありません。
 TPP交渉の日米共同声明についてお尋ねがありました。
 TPPが目指すのは、物品市場アクセスだけではなく、サービス、投資、政府調達などの市場アクセス、知的財産、電子商取引、国有企業、環境など、幅広い分野で新しいルールを作る包括的で野心的な二十一世紀型の協定であります。日米共同声明における大胆な措置とは、これらの幅広い分野全体としてTPPの目指す高いレベルの合意を達成するために、今後も、日米両国が最大限の努力を重ねていくということであります。
 また、どんな道筋を特定したのかとのお尋ねがありました。これは、二国間の市場アクセスを改善するための様々な考慮要素、それぞれの関係などに関して、解決のための方向について共通の認識を得ることができたということであります。
 TPP交渉の状況と今後についてお尋ねがありました。
 先般の日米首脳会談及び閣僚協議を通じて、TPP参加国のGDPの八割を占める日米の重要な問題について解決の道筋が見えました。これは、TPP交渉におけるキーマイルストーンを画するものであり、日米交渉は新たな段階に入ったと言えます。こうした状況の中、来週シンガポールで開催される閣僚会合の機会も活用して、日米が連携して、他の参加国との協議を加速し、早期に交渉を妥結できるよう努めてまいります。
 農業の担い手についてお尋ねがありました。
 認定農業者については、高齢化の影響等によりその数は減少してきているものの、認定農業者等の担い手が利用している農地については、この十年間で農地面積全体の三割から五割に増加しております。
 今回の法案においては、小規模経営であっても、収益性の高い作物との複合経営や六次産業化により、所得を上げていこうとする農業者もおられることから、経営所得安定対策の対象者には規模要件は課さないこととしています。これにより、担い手の経営安定を図るとともに、農地集積バンクを活用してこうした担い手への農地利用の集積、集約化を進めることにより、担い手の大規模化を進め、今後十年間で担い手の農地利用が全農地の八割を占める農業構造を実現したいと考えています。
 経営所得安定対策の見直しに関して、WTOの補助金ルールとの整合性についてのお尋ねがありました。
 今回の制度改正は、食料自給率の向上に寄与する麦、大豆等の生産拡大を図る観点から、強い農業構造を確立するために行うものです。
 なお、WTOルール上、国内補助金について削減対象とされる政策の経費の合計額は近年の我が国においては六千億円程度であり、WTOルールで許容されている水準である四兆円に比べると相当の余裕があります。今回の法改正後の御指摘の交付金のWTO上の位置付けについては今後整理していくこととなりますが、いずれにせよ、WTOルールとの整合性は確保し得るものと考えています。
 多面的機能法案についてお尋ねがありました。
 農業の多面的機能は、農業生産に関わる様々な活動が直接的、間接的に作用して発揮されるものであり、日本型直接支払の予算による作用のみを取り出してその効果を算定することは難しいと考えております。
 我が国の農林水産業の活性化は待ったなしの課題であり、昨年末に取りまとめた農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、農地集積の促進を始めとする農政改革に政府を挙げて取り組んでおります。担い手の負担を軽減し、構造改革を後押しする本法案は、一連の農政改革の一環として法案を提出したものであります。また、林業についても、新技術による新たな木材需要の創出などにより成長産業化を図ってまいります。
 米の生産調整の見直しについてお尋ねがありました。
 従来の米政策については、これまで米の生産調整を始め様々な施策を展開してきましたが、農業生産額の減少や高齢化の進展等の構造的な問題は顕在化したままであり、我が国の農林水産業の活性化は待ったなしの課題となっております。
 このため、農地の集積などに取り組んだ上で、米の生産調整を見直し、これまで行政が配分する米の生産数量目標に従って農業者が作物を作ってきたものを、農業者がマーケットを見ながら自らの経営判断で作物を作れるようにするとともに、需要のある麦、大豆、飼料用米、米粉用米等の生産振興を図ることによって、いわゆる農地のフル活用を図り、食料自給率、食料自給力の維持向上を図っていくこととしています。このように、経営マインドを持ったやる気のある担い手が安心と未来への希望を持って活躍できることを目指し、農政改革を着実に進めてまいります。
 なお、施政方針演説などにおいては、こうした政策の内容を一般の方々が理解しやすいよう、いわゆる減反の廃止と述べてきたものであります。
 農協改革についてお尋ねがありました。
 農協は、農業者の協同組織として、農産物の共同販売や資材の共同購入を行うことにより農業経営を支援してきましたが、担い手農業者と小規模な兼業農家の二極化が進展し、また農産物の需給や流通構造が変化する中で、担い手農業者等の期待に十分応えられるようにしていくことが重要と考えております。
 したがって、農業を成長産業とするためには、政策面の改革と併せて農協改革を実行することが必要であると考えています。農業者、特に担い手農業者から評価され、生産現場を改善し、農業の成長産業化に資する農協改革となるよう、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)