2015.6.19
医療制度は患者視点を取り入れるべき!医者視点で消えてしまった「混合診療」の火【第48回山田太郎ボイス】
5月26日、厚生労働委員会で直接総理に質疑を行いました。安倍総理肝いりであったはずの混合診療解禁を成し遂げることはできませんでした。他、医者だらけの厚労委員会の問題点など。
論点となった「混合医療」とはいったい何?
現在の医療制度では、保険対象の医療行為や薬を使った場合、例えば、自己負担3割、残りの7割は国が負担となっています。しかし、難病などの一般的な治療方法が確立していない病気になった場合に、保険で認められていない特殊な医療処置や薬を使います。その際、保険対象内の医療行為や薬と一緒に併用すると、本来は保険対象の医療行為や薬まで全てが自己負担となってしまうのが現在の「自由診療」と呼ばれるものです。
そして、このような状況を変えるために「混合診療」(保険と保険外診療「自由診療」を併用することができる制度)を推進する案が昨年の規制改革会議で検討され、今回の審議に至りました。結果的に「医療保険制度改革関連法案」は可決されましたが、その法案が当初の目的とはかけ離れたものになってしまったこと、そして、総理や厚労大臣が「さらなる混合診療の検討はしない」と発言したことを非常に残念に思っています。
今回認められた「患者申出療養制度」の問題点
今回、結果的に設けられた制度の名称は「患者申出療養制度」というものです。「患者申出療養制度」とは、患者から申し出された場合、まず原則6週間、新しい治療方法やその薬について、指定の特定機能病院が「安全性・有効性のエビデンス(証拠) ・保険収載(保険適用のこと)」に向けて調査を行います。そして、病院から承認がおりたら、その医療行為・薬を使用してもいいというものです。保険適用範囲内の医療行為・薬は保険適用になりますし、新しい医療行為・薬のコストは自分で持つ、いわゆる併用になります。これは困難な病気と闘う患者からの申し出を起点として、 迅速に保険外併用療養を可能とし、治療の選択肢を拡大することを目的としています。
一見、治療の選択肢を広げるためのいい案に見えますが、実は落とし穴があります。このままですと、最終的に保険収載に必要とされる「安全性「有効性」「汎用性」のいずれかを満たさずに保険対象外となってしまうと、それ以降、その薬は一切使えなくなってしまうというのです。一度、汎用性などの理由で、保険収載されないと決まった薬を使おうとする患者は、それ以降一切の医療行為・薬が全額負担になってしまうということです。これでは、ただの早い者勝ちになってしまうし、お金のある人ばかりが優先的になってしまいます。
本当に、今のままの「患者申出療養制度」で難病に苦しむ多くの方を救うことができるのでしょうか。
勤務医は使いたい最新医療。混合診療を反対する「医師会」とは?
「医師会」は、混合診療を認めてしまうことによりに以下の弊害が出ると主張しています。
(1)お金のある人だけが先端の医療を受けられる。命の重みに差が出てしまう。
(2)医師が自由診療行為ばかりを好み、国民皆保険制度が崩れてしまう。
本当にそうでしょうか?自由診療をばかりを好むような医者が出てくるとすれば、それは信用できない医者だと考えます。そもそも、この医師会というのは基本的に「開業医」の団体です。病院に勤務する勤務医は「医師会」とは関係なく、先端の医療を使いたいと思っているといいます。保険認可がおりていない、高額な医療費を払うことができないという理由で、失われた命をたくさん見てきたという報告も受けています。せめて、保険適用内の行為だけでも保険適用にし、最新医療の自己負担と組み合わせることが認められれば、救われる命が多くあるというのです。
日本の医療制度の未来はどうなるのか
最後に私が「日本における混合診療の火は消えてしまったのか。」という質問に対し、安倍内閣として「混合診療を解禁する考え方は持っていない」とのことでした。難病を患いながらも、総理復活を遂げた安倍総理にとっても肝入りだった制度改革ですが、安倍総理をもってしても「混合診療」という制度は諦めざるをえない結果なのでしょうか。
今回の「医者目線」でしか語られない厚生労働委員会には失望させられました。いったい誰のための医療制度なのか、と考えさせられることばかりです。厚生労働委員会にはもっと「患者」の視点が必要です。今後の日本の医療がどうなっていくのか、我々国会議員は十分に考えるべきだと思います。
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●山田太郎略歴(https://taroyamada.jp/?page_id=13)
慶應義塾大学経済学部、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程。
外資系コンサルティング会社などを経てネックステック社を創業、
同社を実質3年半で東証マザーズに上場。その後、参議院議員就任。
東大・東工大・早大などでも教鞭をとり、著書も多数。
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