2013.10.25

様変わりするミャンマーの中古自動車市場と日本の技術戦略

Asia Biz Inside vol.9 参議院議員山田太郎のアジアビジネス・インサイドレポート
~沸騰するアジアビスの現場から~

新たな段階に入るASEAN市場

2013年10月23日

発展するミャンマー。日本企業もビジネスチャンスを求めて次々と参入をし始めている。しかし、本当に日本の製品やサービスが現地の市場に受け入れられるのだろうか?こんな疑問が出てきた。新しい日本の技術のその先に見えるもの、それがミャンマーの中古自動車市場から見えるのかも知れない。

様変わりする自動車市場に落とし穴が

「自動車がみんな新しくなっていますね」

「新車と間違えるぐらいの、新中古車が街中を走っていますよ」

「たった半年ぐらい来てなかっただけなのに、もう数年来てないぐらい変化していますね」

2013年8月末、私は久しぶりにミャンマーの地に降り立った。仕事で毎月の様にミャンマーに訪問していたが、それも議員になる前の2012年11月までのことだ。

2012年末にミャンマーでは、新しい法律が通り、2007年製造モデル以降の車も輸入ができるようになったのである。これまで、それ以降のモデルは新車とみなされ高い関税が課せられ実質、輸入ができなかった。その2007年モデル以降の車がミャンマーの法改正により輸入ができるようになったのだ。

01

2007年モデル以降の自動車

2007年モデル以降というのは、もう一つの大きな変化がある。それは、2007年に世界中の自動車が大きくモデルチェンジしているのだ。

この年、ハイブリットカーが次々と発表、発売されて、ガソリン車と電気自動車の機能を搭載するエコカー元年という状況だ。燃費はリッター30キロ以上が当たり前、日本でもカローラが毎年販売台数でも独占的だった状況から一転、プリウスをはじめとするエコカーにすべてシフトすることになる。

それに伴い、自動車の電子化も大きく進むことになる。

ガソリン主体の車は、内燃エンジンを中心にその動力を車全体が使っていくという、機構系が中心の車の設計となっている。しかし、電子化が進んだ車は、内燃エンジンは残るものの、ECU(電子コンピューター安全運転装置)を中心にブレーキやボディーセンサー、機構制御が連動していて、電子と機構系の部品が共存している状態になった。

これは、一方で、ミャンマーの様な発展途上国においては厄介な問題を引き起こす。それは、メンテナンスが極めて難しいということになったのだ。

ミャンマーの自動車メンテナンスビジネス

これまでの2007年以上のモデルの車は、簡単な機構系の部品の集合体だったので、どのような構成になっているか物理的に確認できれば、メンテナンスの為に車体をばらしても、組み立てなおしが容易に行われたのだ。

実際、ミャンマーの修理工場を見ているとエンジンの中まで機構系部品をバラバラに分解して修理している光景をよく見る。日本から私と同行した自動車のエンジニアが言ったことがあるが、どうもミャンマーの現地の修理工の方が、日本の修理エンジニアよりよっぽど自動車の機構や部品について詳しいという。本当にバラバラにしてしまって、組み立てなおして、その繰り返しを何台も何台もやっているからだという。

しかし、2007年モデル以降の電子制御を中心とした部品はそういうわけにはいかない。電子制御の部品は、一体型のマイクロプロセッサに電子基板として内包され、外部からは全くいじることができない。日本のメンテナンスも専用機械をチップにさして、電子信号をもらいながら修理をしている。いや、プロセッサーは複雑にできているので、その基盤ごと交換の様な修理が実際には多いという。

確かに、日本のハイブリット車のニーズは高い。ガソリンを初めとしたエネルギー費用が高いこの国では、燃費良く走れる車は非常に価値がある。しかし、一度壊れた場合、どのようにメンテナンスしていくのか?

02

日本車のマーケットが危ない?!

今、中古車市場で静かな異変が起こっているという。それは、2007年モデル以降の電子部品に支配されたメンテナンスをしにくい日本車を嫌い、機構が単純にできている韓国車や中国車をメンテナンスの観点から選ぶユーザーが出てきているということだ。

新興市場のマーケットで持続的に勝っていくためには、技術的なイノベーションだけでは難しい。もちろんメンテナンス分野における新たなサービスのビジネスチャンスは広がっていると考える。しかし、ボリュームゾーン(一番売れる、ユーザーのニーズが高い分野)は、あくまでもメンテナンス性という観点も忘れてはならない。

今後、日本の製品やサービスがグローバル・マス、つまり国際的な大きな市場にて売れるかどうかを考える必要に迫られている。技術力任せ、いい製品やサービスを開発すれば売れるに違いないという概念から、そろそろ日本は脱皮しなければならないのかも知れない。

03

関連記事