2019.10.2
マンガ議連総会でDL違法化などについて議論しました
本日(10月2日)、MANGA議連の総会が開催されました。重要な内容も議論されていましたので詳細についてご報告いたします。
議題は「京都アニメーションの現状と支援策」「MANGAナショナルセンター整備運営法案」「著作権法改正(海賊版対策)」の3点です
MANGAナショナルセンター
MANGAナショナルセンター整備運営法案については、全会一致で、以下の内容の緊急決議を行いました。
一.「メディア芸術ナショナルセンターの整備及び運営に関する法律案」の第200回国会における早期成立を実現、MANGAナショナル・センターを速やかに設置すること。
一.同センターの早期実現及び機能の充実に向けて、行政府はもとより、あらゆる関係者に働きかけ、予算確保及び相互調整に努めること。
MANGAナショナルセンターでは、京アニで話題になった作品のアーカイブのみならず、インバウンドも意識した文化発信やクリエイターの育成支援など、今のマンガ・アニメ・ゲーム産業を支えるために不可欠な機能を持つ予定であり、民間の資本や活力を活用する予定です。前国会では政局として扱われ、法案審議自体が流れてしまいましたが、4日からはじまる臨時国会では必ず成立をさせたいと考えています。
著作権法改正(違法DL範囲拡大・リーチサイト)
海賊版対策はもちろん行わなければなりません。その上で私(山田太郎)が、会議の中で文化庁に対して指摘を行ったのが以下の4点です。
- コミュニケーション・プランを策定し、条文ベースで議論を行うこと
- リーチサイト規制についてもしっかりと議論を行うこと
- リーチサイト規制はイノベーション阻害にならないかといった観点からも議論を行うこと
- リーチサイト規制は、非親告罪化である点も懸念され、その点も議論を行うこと
前回の文化庁の法案審査に対する進め方は非常に拙速であったと感じています。与野党に対する事前の調整や漫画家協会からのヒアリングなどのプロセスが十分でなかったことももちろんですが、国民に対して“いきなり”過激な案を提示し、それによってネット世論が反対に向かって動いたことが中止に至った大きな理由です。その点でも、国民に対して広く条文ベースで情報を開示し、議論を進めていくことが重要です。今回、海賊版に対して国が手を打つことができなければ、国は海賊版を許容しているとの誤ったメッセージを与えかねません。
リーチサイト規制について、文化庁の私への当初の説明では「特に反対意見がなかったため、前回の法案通りで進める」というスタンスでした。しかしながら、前回の法案では、ダウンロードの違法化によってスクショまでが違法化されるなど、ひどい内容であり、リーチサイト規制についてはほとんど議論されていない状況だった思っています。リーチサイトについては賛成の声もありますが、ダウンロード違法化の範囲拡大同様に委縮につながらないよう、議論を進めていく必要があります。
特にリーチサイト規制は、インターネットの根幹技術である「ハイパーリンク」を規制するものであるということに最新の注意が必要です。リーチサイト規制を法律で制限することで、過去に著作権法などが日本の技術発展を阻害したという苦い過去を忘れてはならないと思います。国内企業のみに対するイノベーション阻害が生じるおそれはないのか、今後の国家戦略にとって足枷となるおそれはないのか、そういった面からの議論も尽くす必要があります。
前回のリーチサイト規制の法文案は漫画の海賊版サイト以外にも以下のようなサイトも規制されてしまうことを含め、問題が多々ありました。
- 引用要件を満たさないまとめサイト等のリンク集
- 剽窃論文のリンク集
- 素材をライセンス違反して利用しているスライド等のリンク集
- GPLに違反しているソフトウェアをダウンロードできるリンク集
- アニメアイコンのツイッターアカウントのリンク集
また、このリーチサイト規制は非親告罪となっていることも大きな懸念点です。今の著作権法は、海賊版については非親告罪ですが、それ以外の大部分の項目については親告罪です。親告罪とすることで日本の厳しい著作権法は一線を保っていますが、こういったところから、著作権法が実行力をもって文化やテクノロジーを脅かす存在になってしまってはいけません。
リーチサイト規制については、このような書類を文化庁に提出しています
その他
また、海賊版対策については、海賊版によって多額の利益を得ている者がいるため、法定刑の上限である1000万円の罰金が課されても、結果的に“得をする”のではないかとの声もあります。著作権法には経済的利益を保護するという側面もあり、原則的には刑事ではなく民事の中でこういった不当利益については、勘案されるべきであり、直ちに厳罰化をしていくことがいいとは私は考えていません。
また、懲役や罰金刑などの「主刑」以外に、「付加刑」として没収というものがあり、裁判所は「犯罪…によって得た物」の所有権をはく奪することができます(刑法19条1項3号)。この規定が適切に運用されれば、海賊版によって有罪となった者が“得をする”といったことにはなりません。この点、今回の漫画村の裁判では非常に注目をしています。
海賊版対策については、実効性の担保も重要ですが、必要以上の規制を行わないということも重要です。今日のMANGA議連をきっかけに、「著作権法改正」の議論はどんどん盛り上がっていきます。文化庁もパブコメを募集していますので、皆さんの今回のDL違法化範囲の拡大とリーチサイト規制について、多くのご意見を寄せていただければと思います。
パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
※リンク先の「意見提出フォームへ」からではなく、Excelをダウンロードしてメールで意見送付をお願いします
「4日からはじまる臨時国会」の箇所を修正致しました(10/2 23:00)