2021.5.8
内閣委員会 参考人質疑〜デジタル改革関連法案〜(2021年5月6日)
〇山田太郎君 自由民主党の山田太郎と申します。よろしくお願いします。
最初に、宍戸先生、それから三木さんに御質問したいと思っています。
私も、党内の方で、デジタル化を進める責任者の一人としていろいろと議論をしてきたんですが、まさに個人情報の問題とか情報漏えいの問題、これをどうしていくのかということに関して大変この委員会なんかでも議論になってきました。実は党の中でも相当議論になりました。
そんな中で、何を押さえればいいのかというちょっと根本の議論も一つ確認しておきたいと思っておりまして、今日も一つ、例えば一元化が悪いのかどうか、そういう議論もあって、一元的にデータを扱うのはよろしくないというような議論、それから監視は良くないんだと。ただ、言葉も管理とかマネジメントという言い方になると随分ニュアンスも変わってくるんだと思います。
そう考えた場合に、本質的な問題点というのは、実は、この三木さんの資料の中にも、宍戸先生の資料の中にもあったんですが、目的外利用というのがいけないんじゃないかと。目的外利用、そしてもう一つは漏えいの懸念があるんだと。目的外利用と漏えいの懸念を払拭すれば、逆に言うと、一元化とか、まあ監視というのは何をもって目的外になるのかどうかというのは微妙な議論はあるとは思うんですが、その辺り、どのようにお考えなのかということですね。
その前提として、どうしてこんなことを議論するのか。特に、監視、管理に関しては、少し党内でもすごく議論になりましたのが、命の問題を例えばデジタル化で預かる場合にどうなのか。例えば防災があります。救急で運ばれてきた場合に、例えばその人の既往歴みたいなものをどうしても使いたいといった場合にどうなのかという論点。それから、これ前回ちょっと別の場面であったんですが、ライフリンクの清水さん、自殺の問題をすごく扱っていらっしゃる方がいるんですが、その方の発言によれば、実は、その自殺の原因であったり、子供のSOSの問題を市区町村から都道府県に上げにくい状態があるという中でのまさに命の問題に関してはどうなのか。そう考えると、一律に管理、監視が悪いということになってしまうと逆に命も救えないのではないかと、こんなような議論があったわけであります。
その辺り、是非、いろんな議論があると思いますが、御発言いただきたいと思います。宍戸先生、三木先生、お願いします。
○参考人(宍戸常寿君) 御質問ありがとうございます。
私の考えを申し上げたいと思います。
先生御指摘のとおり、個人情報保護法制においては、やはり利用目的をしっかり具体的に特定し、そしてそれを明示し公表するというふうな規律というものがまずもって重要なところと考えております。
他方、一体どのような利用目的が正当なのかといったことは、個人情報保護法制だけでは決まらず、個々の行政サービスのその性質でありましたり、そこで問題になるその国民の権利利益といったものの中から決まってくるものでございます。本来、各省庁あるいは地方公共団体においてそれぞれ行政サービスをされて、言わばそれに対する横からの制約のような形で個人情報保護法制は掛かっているということを先ほど私、形式的、画一的な規律という言い方で申し上げたところでございます。
他方、これは先生御指摘のとおり、そうやって情報を扱う以上、漏えいがあってはいけないであるとか、特定された目的のとおりきっちりやっているのかということをしっかり監視、監督する体制というものが必要であり、今回の改正法について言いますと、個人情報保護委員会の監視権限が公的部門に及ぶということが重要であろうと思っております。
最後に、私申し上げました、その上で最終的にデジタル時代の人格権というものをどう考えるのかということが、その中身として、本来、実体的な権利と、それから政府による監視と批判されることもあるだろうような権限の発動と、仕組みというもののバランスの中でしっかり、それが本当に先生おっしゃるような問題のある許されない監視、監督であるのか、そうではなくて、個人の人格であったりあるいは生命や財産を守るという上で必要な公的なサービスの提供のための情報の管理なのかというものを切り分けていく作業が必要であると。
ただ、これは実は、個人情報保護法制だけでは決まらない問題であると。まさにこういった国会のような場で御議論をしっかり各分野においていただきたいと考えております。
私からは以上です。
○参考人(三木由希子君) ありがとうございます。
まず、何の一元化の議論かというのを明確にする必要があるかなと思っています。
今回ここで議論されていることというのは、個人情報保護法制の一元化ということだとは思います。それと、あともう一点が、行政がつくるデジタルシステムの標準化のようなものは一元化にやや近いところがあるのかなというふうには思います。さらに、個人情報を一元的に扱うということがありまして、この一元化は、かつては一か所に個人情報を集めるという議論を、今、分散管理されているものを連携して、特定の個人の下で一元的に見えるようにするというようなものを一元化と言うこともあるかなと思います。
ですので、そのそもそも一元化というものがかなりいろんな内容を含み得るというところがありますので、何の一元化の議論をされているのかということが明確に認識できないと、それはすなわち何か気持ち悪いとか怖いという話に簡単につながることだろうというふうに思います。
二点目なんですが、先ほどの宍戸参考人と同じところにはなりますけれども、個人情報保護について、例えば自治体で目的外利用ですとかそういうことについて議論をしておりますと、基本的には、個人情報をどうするかというよりも、その業務として何が必要かということと、それが不可欠かということを丁寧に議論していくということになるんですね。これっていうのは、違法かどうかというよりも、適当かどうかとか妥当かどうかという議論を結果的にしているというところがあります。
そうしますと、その一元化した法制の下でまあ自治体ごとにやってくださいといったときに、その適当かどうか、妥当かどうかという議論がどこまで許されるのかという問題がどうしても出てきてしまうというところでは、住民目線で見ると可視化される範囲がやや狭くなる可能性があるという意味で、一元化という議論が実際に現場に下りてきたときには、やはり個人情報を保護するとか人権保障という観点よりも、利用したいがための制度改正になるんじゃないかということが議論としてどうしても出てくるんだろうというふうに思うんですね。
そういうときに、やはり、先ほども申し上げたとおり、何のためにやるのか、それを行うのかという目的を明確にして、目的外に何かをするときに、それをどうやって民主的に制御するのかという議論とセットにしていただきたいというのがまず第一です。
で、民主的に制御するということは、ある程度説明責任が果たされる状態になっているということになるかと思いますので、そういった議論をきちんと蓄積していかないと、個人情報保護の仕組み自体は法制度もかなりテクニカルで分かりにくく、直感的にも理解がしにくいという法制度にどうしてもなりますので、そういった積み重ねが、本来できることもできなくなりますし、それから本来やっていないものもやっているかのように見えることもありますし、それから、不透明がためにそうやっているんじゃないかという懸念の原因にもなるというところがありますので、そういう議論の蓄積を見えるところできちんとしていただきたいというふうには思います。
〇山田太郎君 また改めて三木さんにお伺いしたい点があるんですが、各条例で個人情報のレベルが切り下がったんではないかと、こういう議論をいただきました。確かに、運用面において、ポジティブに言えば柔軟になったという言い方もできますし、悪く言えばレベルがもう下がったという言い方もあると思うんですが、一方で、お聞きしたいのは、情報の中身そのものですね。特に、要配慮情報とか、実際に各市区町村で本当に決めなければいけないものがあるんだろうかと、各市区町村で決めなきゃいけないものがあるんだったら、本来は国で一律で決めればいいんではないかといった議論もあると思っているんですが、そのハウの部分というかホワットの部分というんですかね、そのデータそのものに関しての市区町村ごとに管理しなきゃいけないレベルの情報というのは果たしてあるんだろうかという辺りの議論を是非お願いしたいなと思います。
○参考人(三木由希子君) 各自治体ごとに個別に決めているものと一般的に自治体として扱うものと両方あるのは確かだと思います。
自治体ごとに、やはり行政サービスの中身そのものが全部一律というわけではありませんので、個々にその自治体の固有の政策とかあるいは取組としてやっている部分というのはあります。そういった場合には、例えばセンシティブ情報の範囲も、こういう自治体としての取組のためにはどうしても必要とか。
実際には、自治体の運用を見ていますと、積極的にセンシティブ情報を収集するという場面やはり少なくて、むしろ、相談業務なんかを多数やっておりますので、そういう中で結果的にセンシティブ情報を収集するということがあるんですね。そうすると、収集するといっても、それを例えば記録にとどめて残すのかとかというところで、それぞれの考え方でどこまで記録残すかというものがあったりとか、あと、過去にあった事例としては、老人ホームのようなところにグループでお部屋が、入所される場合に、ちょっと宗教で対立があるような場合なんかがあるようなことがあるようでして、その場合に、ある自治体は、センシティブ情報としての収集を審議会にかけて、本来であれば入所に関して特定の宗教の信者かどうかという情報はこれは収集必要ないはずなんですけれども、お部屋割りをするためにどうしても必要ということで収集をするということを自治体として決めるという場合もやはりあったりするんですね。
なので、全く固有の要素がないというわけでもなく、それぞれの事情とか実情に応じてやむを得なければ収集するという判断はあり得るというふうには思ってございます。
〇山田太郎君 次は宍戸先生にお伺いしたいんですが、四ページなんですけれども、ちょっと内容が直接、個人情報保護とずれてくる可能性があると思いますが、報道の姿勢として、いわゆる実名報道の問題というのをどういうふうに考えればいいのかということについても御意見いただきたいと思います。
実は、ちょっと私が少し絡んだところとして、京都アニメーションの放火事件があったときに、被害者側の実名をさらすという言い方がいいかどうか分からないですけれども、一方で、知る権利という中から、報道各社は対応が分かれて、かなり多くの報道各社は実名報道に踏み切ったわけでありますが、被害者遺族等の感情等に考えれば果たして実名報道というのはありだったのかなと。こういった報道におけるところの知る権利と、それから個人情報の問題があるんですけど、いわゆる個人法益なのか社会法益なのかという問題もあると思うんですが、そのことがぶつかった場合に我々政治サイドはどう判断していけばいいのかと。
いわゆる報道の自由というのもありますから、なかなか政治家サイドはそこに対して意見を言いにくいと。少しでも意見を言うと、いわゆる報道に関する関与だというふうに言われてしまうけれども、実際は個人法益か社会法益かという極めて法律的な議論を我々はしなければならなかったときに、全く我々国会はあるいは立法府は意見を言えなかったような状況が私はあったんではないかというふうに思っています。
匿名表現の自由だったり、フェイクニュースの問題だったり、これからデジタル化においてやっぱり踏み込まなければならないような議論があった場合に、報道の自由との関係も含めて、実名報道、あるいは匿名表現もそうだと思いますね、ネットの問題なんかでもいろいろ言われていますし、今回のいろんな改正なんかもそこで行われたわけでありますけど、その辺りの御意見是非いただきたいと思います。
○参考人(宍戸常寿君) 御質問ありがとうございます。私の考えを申し上げたいと思います。
まず、何よりも表現の自由は立憲民主制を支える基本的な権利として非常に重要なものであり、また、その際には、その表現が正確であるということを担保する上でも、人間について実名で報道をするということと、あるいは、非常に社会的に批判を浴びそうな、しかし意見を言わなければいけないというときに匿名表現の自由が保障されるということ、これら表現の自由の保障の中で、実名報道であったりあるいは匿名表現の自由というものが保障を受けるということがまず議論の出発点であり、それについてやはり政治あるいは国家権力というものはまず尊重をするというところがまず出発点になるだろうと思います。
その上で、当然ながら表現の自由も絶対無制限のものではございませんので、具体的な法益との調整ということになるわけでございますが、この調整の在り方についても、特に報道の自由が萎縮するという場合あるいは公共的な事柄について匿名の形での表現が萎縮するということは非常に望ましくないという観点からしますと、一つには、ハードローといいますか、直接的な規制を考える場合には、非常に明確で限定した規制ができるかどうかということがその実体的な比較考量に加えて重要な論点になるだろうと考えております。
もしそれがうまくいかなさそうだと考える場合の一つのやり方は、報道機関、メディアと、それから今の例でいいますと、犯罪被害者等の間の調整というものがうまくいっているのかということを見ることだろうと思います。
これまで実名報道をめぐって報道機関と犯罪被害者の方との間でいろいろな問題が起きるというときの一つの在り方は、かつてであればメディアスクラムであったり、報道の在り方というものについて様々な議論があったと。つまり、被害者の方からすると、それは報道機関の側の、いつまでに原稿を出さなければいけないとか、そういったような事情に振り回されるということが、その取材対象者として非常に酷な状況にあるときにそういうふうな取材報道が来るというような問題もあったように思われます。
そういたしますと、その民間の中で、報道機関とそれから犯罪被害者あるいはそれを代表するような方の間での適切な話合いが進むようにすると、そういった環境整備というものを政治、行政の側で御検討いただくというのが一つの建設的なやり方ではないかと考えております。
ひとまず私からは以上でございます。
〇山田太郎君 時間になりましたので以上にします。ありがとうございました。”