2021.4.28
教員による「指導死」は調査に含まれない!?こども庁には、現場の調査機能が必要!
4月22日、私(山田太郎)が事務局を務める第11回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。
前回のブログではストップいじめ!ナビの須永さんからのお話をまとめました。今回のブログでは、一般社団法人ここから未来代表理事、指導死親の会共同代表である大貫隆志さんのご講演「指導死」について考えていきます。
大貫さんは当時中学2年生だった息子さんを指導死によって失った当事者であります。
「死にます。ごめんなさい。たくさんバカなことしてもうたえきれません。バカなやつだよ。自爆だよ。じゃあね。ごめんなさい。」
と残された遺書は、同じく子を持つ親として心が張り裂けそうでした。
図)大貫さん提供資料
写真)大貫隆志さん(一般社団法人ここから未来代表理事、指導死親の会共同代表)
息子である陵平さんの命を奪った指導死とは「指導を、教員から受けたり、見聞きしたりすることを原因、あるいは背景要因とした子どもの自殺」と定義づけられています。指導死を招く具体的な指導について大貫さんから10個紹介がありました。
中でも、指導死の32%を占めるえん罪型の「決めつけ」と指導中に子どもをひとりで放置する「安全配慮義務違反」が特に危険な指導としてご説明がありました。
えん罪型の「決めつけ」は子どもに大きなストレスを与えます。また、指導中に子どもをひとりにしてしまう「安全配慮義務違反」は、先生がいない隙に亡くなるケースが多く見られているため、危険と言われています。
図)大貫さん提供資料
平成元年以降の指導死の発生件数は92件、そのうち有形力を伴わない指導死は88%、そして部活動との関連のない指導死は76%となっています。この数は、大貫さんの仲間が判例などを調べた限りの数字で、国などの統計は存在していません。ですから、氷山の一角であるともいえます。
指導死というと、部活動で行われるイメージがありましたが、そのほとんどが日常的な学校生活で行われていることに大変驚きました。子どもにとって学校での居場所を失うことは、生きる場所を奪われることと等しいです。
しかし、現状の日本の制度では指導によって亡くなったり、不登校になった場合は、その原因を調査してもらえません。なぜならば、教師の不適切な言動はいじめの定義から漏れているからです。そのため、教員が関与した出来事に関しては、学校や教育委員会は調査を拒んだり、あるいは先延ばしにするといったことが起きています。
これについて、大貫先生から実際に起こった1例について紹介がありました。”バレーボールの授業中にAさん(小4)が誤ってボールを頭で受けてしまい、兼ねてから仲が悪かった女性担任から「ふざけるなら、やらんでもいい」と怒られました。以降、不登校になり、通学路を見るだけで吐き気に襲われるようになりました。
これに対し、母親が訴えたところ教育委員会は「教員の振る舞いによる不登校は、いじめ防止対策推進法の対象ではない。だから調べる義務はない」と回答が返ってきた”という事例です。このように、教師が関わったものについては調査すら行われないのが現状です。
図)大貫さん提供資料
加えて、指導死再発防止のための提言が骨抜きになっていることについてもご指摘がありました。調査委員会による再発防止提言はほとんど無視され、教育委員会では「一般論」に堕した再発防止策が策定されているのが現状だからです。これに対し、大貫さんは「再発防止とは、自分の子どもの未来、生命と引き換えに手にするもの。これが軽んじられるということは、自分の子どもの未来、生命を軽んじられていることと等しく、耐え難い屈辱だ。」と力強く訴えていました。
このような悲しみを2度と生むわけにはいきません。須永さんと大貫さんからご提言があったように、いじめ問題や指導死に関する調査はまだまだ不十分です。調査がなければ実態も原因も分からず、対策が打てません。そして、自治体がいじめ問題を調査する調査委員会の人材不足も深刻ですから、人材の強化とともに専門的な人材を育成するような仕組みも必要だと思います。
そして、こども庁では関係各所と連携しながらエビデンスをもとに政策立案が出来るよう、可及的速やかに調査の拡充と情報共有の環境整備を行っていく必要もあります。今回の内容を重く受け止め、引き続き最大限努力をして参ります。
写真)奥:牧原秀樹衆議院議員、中央:私(山田太郎)、手前:自見はなこ参議院議員(共同事務局)