2026.2.19
海外視察報告②〜養子縁組とこどもの出自を知る権利の保障、韓国から学ぶ〜
🔸児童権利保障院/保健福祉部

写真)児童権利保障院の皆さんと
次に、国の公的な機関である児童権利保障院/保健福祉部を訪れました。
1.主要機関の役割分担
韓国国内では養子縁組制度は複数の国家機関によって管理されています。以下が制度の主なアクターとして挙げられる機関です。
(1)保健福祉部(日本の厚生労働省のような機関)
保健福祉部は制度全体の統括機関であり、養子縁組政策の策定や制度体系の総括管理、ハーグ条約の履行、国際養子縁組の中央当局機能、養親候補者の適格審査を担います。国際養子縁組では、保障院がこどもの報告書作成、相手国の養親調査を経た後、福祉部が適格審査と最終決定を行います。
(2)養子縁組政策委員会
保健福祉部のもとに新設された公的審議機関で、養親候補者の審査やマッチング審議、国際養子縁組の決定を行います。従来は民間機関が行っていたマッチングを公的委員会で行うことが、大きな特徴です。
(3)児童権利保障院
様々な機関が合併して2019年に創設された、制度実務の中核機関です。児童権利保障院は、養子縁組だけでなく、児童虐待の予防、里親家庭の支援、施設を退所した若者の自立支援など、児童福祉政策を統合的に遂行する役割を持っています。
また、国内外養子縁組の手続き運営、養親募集・教育、家庭調査(委託機関活用)、委員会事務局機能、情報公開請求の受付、養子縁組記録の統合管理、マニュアル整備などを行っています。職員は196名、そのうち養子縁組担当は約40名。年間予算は約38億ウォンで、うちアフターケア予算には約17億ウォンが当てられています。
養子縁組が確定した後は、お祝い金として200万ウォン(日本円で約21万円)が支給され、また支援金としてこどもが18歳になるまで毎月20万ウォン(日本円で約2万円)、医療手当など様々な保障の対象にもなります。現在、養親候補者は約500人が待機している現状です。

資料)児童権利保障院提供、和訳は山田太郎事務所
児童権利保障院の各部門の役割やその詳細は下記のとおりです。これら5つの部門に分かれ、こどもの権利を保障するために活動をしています。

資料)児童権利保障院提供、和訳は山田太郎事務所
国外での養子縁組をする際には、報告書を作成し養子の詳細情報をまとめたり、国際養子縁組先を決定するのは児童権利保障院が担当しており、養子先の調査は相手国に任せてはいるが、連携してこどもの安全性に配慮していると伺いました。主に民間の養子縁組機関が担っていたアフターケアや情報の整理などは、児童権利保障院が現在引き受けています。
(4)自治体
自治体は、保護対象児童の決定やこどもの保護責任、養子縁組成立までの養育管理、養子縁組後のモニタリングを担います。こどもの養親が決まるまで自治体が保護責任を持つ点が大きな特徴となっており、養子縁組後のモニタリングを行うことでこどもの安全性や現状を確認することができます。

写真)児童権利保障院における会議の様子
2.養子縁組情報開示手続きについて
2022年に韓国に訪問した際に民間で運営されていた養子縁組の機能が国家に移行されたため、様々な変革を経て制度が強化されたと伺いました。養子縁組の制度が整備されている韓国では、こどもの情報公開のプロセスも法によって定められています。養子縁組関連情報の登録及び移管に関する措置第15条に定められている通り、養子縁組前に保護していたこどもの関連情報を統合児童情報システムに入力し、原本は児童権利保障院に移管し管理されています。この仕組みにより、過去に分散していた約25万件の養子縁組記録は児童権利保障院に一括統合され、児童権利保障院において今後も原本が永久保存されます。
また、法改正に伴って養子縁組情報の開示方法にも変更が加えられました。従来、養子縁組情報の公開請求をする際には、児童権利保障院の他に、民間の養子縁組団体も申請先として挙げられていました。しかし、法改正による養子縁組機能の国家への移行により、新しい体制下では申請先が児童権利保障院に限定され、児童権利保障院の長官が生物学的な両親からの同意を得て情報を公開するという形に変わりました。法改正後の新体制により、情報が児童権利保障院にまとまっているため、情報の取り扱いが容易となり、また両親側のプライバシーも保護しやすくなっている点が顕著です。

資料)児童権利保障院提供、和訳は山田太郎事務所
さらに、養子縁組情報の開示手続きについても制度化されています。実親の特定情報を含まない情報を請求する場合には、申請後記録審査を経て約15日以内(最長45日)で情報が公開されます。実親の特定情報を含む場合には記録審査を経た後に、実親を特定・その同意を得るというステップが含まれており、申請にかかる時間は伸びるものの(約45日以内、最長75日を要する)、申請者の「こどもの出自を知る権利」とともに実親側の個人情報の保護が徹底されていると言えます。
今回視察した、児童権利保障院が推進する養子縁組情報の取り扱いに関する体制も参考にしながら、国内での整備を検討してまいります。

資料)児童権利保障院提供、和訳は山田太郎事務所
◆医療目的の情報提供について
医療目的の情報提供が必要であるが実親が死亡している場合、またはやむをえない理由で医療目的の情報提供に同意できない場合、医師の診断書または意見書を提出することにより、医療目的で実親に関する情報を受け取ることができます。やむをえない理由の定義も定められており、昏睡状態や認知症、意識不明、またはコミュニケーションが不可能な精神的・身体的障害など実親が同意表明できない場合が挙げられます。
(医療目的の情報提供が必要な具体例:遺伝性または希少疾患、長期治療、遺伝子検査の必要性など)
今後の課題としては、過去の出自情報の精査、医療情報の扱い、二世、三世からの請求にどのように対応するか、施設養護から家庭擁護への転換を進めていくにはどうしたら良いかなど検討していく必要があるとのことでした。
○これまで養子縁組は民間で運営されていたが、法改正により具体的に何が変化したのか?
養子縁組を運営する民間の機関は実質的には存在しなくなりました。名義を残している団体は現在も存在しているそうですが、養子縁組としてではなく児童福祉を始めとする別の業務を担っているとのことです。また養親と養子のマッチングは非常に難しいため、公的機関がどのような役割を果たしているのかという質問に対しては、「公的機関に委託されたことによって、情報の信頼性が高くなり養親になりたいという希望者の関心も高まった」そうです。
⚪︎出自の情報公開に関しての同意は実親の許可を事前に得ているのか?
韓国では、養子縁組に登録する際に実親の許可を得た上で個人情報を登録しており、本人の情報開示請求があれば閲覧することが可能です。また、実親の個人情報も多く含まれる遺伝情報に関して、養子に開示しているかについても切り込みました。韓国の専門委員会の見解としては実親の遺伝情報や医療歴はこどもの遺伝情報であると言えるため、こどもにも知る権利があり開示するべきだという意見が有力ではあるものの、議論をしている段階であるとのことでした。
⚪︎出自情報はどのように収集されているのか?
韓国では出自情報や養子縁組に関する法律が存在しており、その法律に則って出自情報の収集・開示がなされています。しかし、法律で定義されていないような個人情報(法律によって国家へ開示がなされていない個人情報等)に関しては、どのように国家が管理していくのかなど、情報収集・開示に関しては未だに問題も残ります。
〇保管の話 こどもの成長の記録物品などの管理はどのような方法なのか?
こどもが乳幼児のころに着用していた服やへその緒、実親からの手紙などの物品もこども1人分のボックスに保管されています。また情報の種類によってはセンシティブな内容も含まれているため、専用の職員を配置して心理的なケアも行っているそうです。これらの記録物品や個人情報は、国家記録院の保管倉庫を設立し、永久保存となっています。永久保存に関してデジタル化を検討していくとのことでしたが、記録物品などは国家が保管すべき遺産であり歴史であるとの見解を持たれていました。個人に関する記録は、年代によって正しい情報と確約できない場合もあるため、今年3月に情報の精査をすることも予定されています。
〇ハーグ国際条約の批准について
日本もハーグ国際養子縁組に批准すべきだと考えていますが、現状批准できていません。韓国でも批准に至るまで約10年を要したそうです。批准してからは保健福祉部が外務省経由で国際養子縁組に関する法律作成に尽力したそうです。この法律作成に際して、当事者意見を広く反映することが重要だと教えていただきました。
◯民間で管理されていた個人情報を公的機関がどのように集めたのか?
2007年に公的機関である養子縁組情報院を設立し、徐々に情報を集めることからスタートしています。養子縁組者の個人情報を管理するシステムを先に作り、民間の養子縁組に持っている情報を入力してもらうことから始め、一括管理に向けての基盤を作ることに成功したそうです。
担当者は、「社会的養護のこどもたちの情報は国の宝でもある。未来永劫保存し、残していくことは国の責任だと考えている」と明言されました。その姿勢に、私は率直に感銘を受けました。その国の強い意志のもと、法律やハード面の整備を着実に進めている韓国の先進的な取組を、今後しっかりと日本の政策に反映してまいります。

写真)写真ブースにて





