2026.2.19

海外視察報告③〜養子縁組とこどもの出自を知る権利の保障、韓国から学ぶ〜

写真)大韓社会福祉会のカン・シネさんと

 視察の最後には、韓国において由緒ある社会福祉機関である「大韓社会福祉会」を訪問し、事業本部本部長のカン・シネさんにお話を伺いました。

 児童福祉を専門とする社会福祉法人である大韓社会福祉会は、1954年に朝鮮戦争後の混乱期に親を失ったこどもたちの保護のために創設され、現在では「すべてのこどもは家庭で育つ権利がある」という理念の下、乳幼児、青少年、障がい児、高齢者等に対する支援を行っています。また、韓国政府から認可を得た「四大養子縁組機関」の一つとして、長年養子縁組を主導してきました。

 現在の韓国国内では国外養子縁組、国内養子縁組の両方が行われていますが、70年代以降国外養子縁組の問題(市民権を得られない、虐待、自身のルーツを知ることができない等)が露呈してからは国内養子縁組が重視されるようになり、大韓社会福祉会でも主に国内養子縁組のサポートが行われています。

 また、2025年7月からは国際養子縁組法・また養子縁組特例法が改正され、長らく韓国が批准していなかったハーグ国際養子縁組条約の枠組みに正式に加入しました。これにより、従来民間が主導して行われていた養子縁組の過程が国家主導へと移行され、記録等も保健福祉部や権利保障院といった国家機関へと移行されました。この節ではさらに、条約の批准により韓国での養子縁組の仕組みがどのように変化したかも見てまいります。

写真)1億ウォン以上の寄付で入会できる”Royal Honors Club”の会員手形を背景に

 国内養子縁組の手続きは大きく以下の手順で行われています。

  1. 権利保障院に申し込み
  2. 権利保障院において犯罪履歴がないかの確認が行われ、そのうち基礎教育を受けた人が選ばれ、候補者リストが団体に送付される
  3. 大韓社会福祉会においてアセスメント・面談が行われ、調査書を権利保障院に送付
  4. 調査書に基づき、養子縁組政策委員会で資格審査が行われ、マッチングを行う
  5. 家庭裁判所において一時養育の許可が下され、臨時養育期間中のモニタリングを大韓社会福祉会および自治体が協力して実施
  6. 正式な許可が下りた後は、一年間に6回のモニタリングを実施する

 *子どもが自分の出自を求めて公開請求をする場合は、権利保障院に申し込みをする

  約3か月間の期間、大韓社会福祉会が主体でアセスメントが行われます。書類審査、面 談を通じたアセスメントが行われ、特に動機と養育能力の有無が重視されます。また、  アセスメントのため家庭訪問が2回行われ、事前通知なしの家庭訪問も一度行われます。

  臨時養育期間中には、大韓社会福祉会は権利保障院からの依頼を受け、初回は自治体と ともに一時養育が認可されてから1カ月以内に、また2回目以降は3カ月ごとに家庭訪問 を行い、子どもの安全の確保に努めています。また、養親候補者には権利保障院が提供す る講座の受講が義務付けられています。

  養子縁組の正式認可後には、主に大韓社会福祉会が単独でモニタリングを担い、1年で 6回モニタリングが行われ、そのうち3回は家庭訪問が実施されます。さらに、子どもの 適応状況や健康状態等、家庭からの相談も随時受け付けています。

 →里親は申請をしてから約2か月後に養子と対面をすることができ、権利保障院の管轄の下、子どもが意思表示をすることが可能な場合には子どもの意見(里親との適合性等)も考慮されます。反対に、里親が養子を選択することはできませんが、希望を調査書の作成時に伝えることでより適合性を上昇させることができます。

 →国内養子縁組のプロセスは国の補助のもと行われ、社会福祉団体等には直接の金銭的負担はかかりません。法改正前には民間団体がホームページやネイバー等において広告を展開することを通して里親を集めていましたが、7-8年前にこれが国家主導になり、イメージ改善・啓発活動を行うことで里親を集めています。

  法律では25歳以上で重大な犯罪歴(データベース上に記載がある殺人・性犯罪・DV ・虐待の犯歴)がないことが要件として定められ、独身でも里親になることが可能です。 そのほかの特徴に関しては、権利保障院で個別具体的に審査されます。また、養子縁組を 行った場合でも、特別養子縁組以外の場合では実親との関係性は持続します。

 公務員改革の流れや民間主導の養子縁組の様々な問題(国家の介入の不足、プロセスの不透明性、児童福祉の不徹底等)の露呈により、国家主導の体制へと移行されましたが、自治体間の支援格差等問題は現状でも残っているとカンさんは話します。カンさんによると、「全体としては機能の国家移行は肯定的に捉えるべきだが、行政手続きがより煩雑化してしまって」おり、「被害を被るのは子ども」だと強調しています。データベースの移管は既に完了しており、2012年8月からは統一システムにおけるデータベース入力が行われています。

写真)カン・シネさんとの会議の様子

  大韓社会福祉会での訪問を通して、韓国での養子縁組の最前線を実際に目にすることができました。これらの活動を行う中で、大韓社会福祉会の「どのようにこどもにとって最適な養子縁組を行うことができるか」を追求する姿勢を垣間見ることができました。また、養子縁組機能の国家への移行により、分散していた養子縁組機能を国家が一括して統括できるようになり、透明性や適合性を高めることができた一方で、新たに地域間格差等新たな問題も生じてきていることを体感しました。これら韓国での見分を踏まえて、これからもこども政策を推進してまいります。

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