2026.3.6
サーキュラーエコノミーの最前線
3月2日、日本のサーキュラーエコノミーを牽引する企業のひとつ、日本磁力選鉱株式会社の北九州のひびき工場を視察し、金属リサイクルの最前線が直面する可能性と課題について議論しました。
■日本の技術力の結晶:「都市鉱山」を掘り起こす現場
同社は、1949年創業の歴史ある企業であり、特に製鉄の過程で生じる「スラグ」の処理量では国内トップシェアを誇ります。その長年の経験と独自の高度な破砕・選別技術を活かし、現代の「都市鉱山」である廃棄物から貴重な資源を回収しています。
今回の視察で確認した主な取り組みは以下の通りです。
〇家電リサイクル: 2005年に竣工した「ひびき工場」を拠点に、エアコンの熱交換器などのリサイクルを手掛けています。視察時の説明によれば、多段階の選別工程を経て、銅とアルミをそれぞれ純度99%という高いレベルで回収しているとのことです。
〇小型家電リサイクル: 2013年に小型家電リサイクル法の認定事業者となって以降、自治体が回収した小型家電から、鉄、アルミ、プラスチック、そして金などを含む電子基板を効率的に選別・回収し、国内の資源循環に貢献しています。
〇リチウムイオン電池の再資源化: 2018年から本格的に営業運転を開始。熱分解処理によって電池を無害化した後、銅などの非鉄金属と、ニッケルやコバルトを含む貴重な「ブラックマス(電池粉)」に分別し、製錬メーカー等へ供給しています。現在、処理能力の増強とコスト低減を目指す新プラントを建設中とのことです。
■深刻な課題:国内事業者が直面する厳しい現実
しかし、その輝かしい技術の裏で、日本の資源循環は深刻な課題に直面しています。真面目に法令を遵守し、高い技術力を持つ国内事業者ほど、厳しい経済環境に置かれているという構造的な問題が浮き彫りになりました。
〇低すぎる回収率: モバイルバッテリーなど、私達の身近にある小型電池の回収率は、わずか10〜15%に留まります。多くの貴重な資源が、回収されずに家庭ごみとして眠っているのが現状です。
〇海外勢との不公正な価格競争: 中国市場との価格差は、ブラックマスで20〜30%にも及び、経済合理性だけで見れば海外流出が有利になってしまう構造があります。
〇重要資源の海外流出: EV(電気自動車)の使用済み電池など、将来的に急増が見込まれる重要資源が、中古車等と共に海外へ流出し続けています。国内事業者の構造的な不利益: 厳格な環境法令への対応コストや、自治体ごとの規制格差が、国内事業者の経営の重荷となっています。
■なぜ今、サーキュラーエコノミーが「国家戦略」なのか
サーキュラーエコノミーは、単なる環境保護やごみ問題対策ではありません。それは、日本の未来を左右する、経済安全保障そのものです。
〇資源安全保障: ニッケルやコバルトといった重要鉱物の多くを輸入に頼る日本にとって、国内の「都市鉱山」から資源を確保することは、地政学リスクやサプライチェーンの混乱から国民生活と経済を守るための生命線です。
〇脱炭素社会の実現: リサイクル材の活用は、新品の資源から製品を作るよりもCO₂排出量を大幅に削減できます。カーボンニュートラルを実現する上で、リサイクルは不可欠な要素です。
〇国際競争力の確保: 欧州を中心に、製品のライフサイクル全体での環境負荷を問う規制が強化されています。国内で資源を循環させる仕組みを持つこと自体が、国際市場における日本の産業競争力に直結します。
今回の視察を通じ、サーキュラーエコノミーの確立が、資源安全保障・脱炭素・産業競争力を同時に実現する極めて重要な国家戦略であることを再認識しました。
技術開発への支援はもとより、回収率の向上や、国内でリサイクルされた資源を優先的に利用するインセンティブの創出、そして、国内事業者が正当に評価される市場環境の整備など、踏み込んだ政策を強力に推進してまいります。









