2021.3.24
虐待サバイバーの声で「子ども家庭庁」が「こども庁」に!
3月9日、私が事務局を務める第6回目の「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会〜子ども庁創設に向けて〜」を開催しました。
写真)会場の様子
今回の勉強会では、虐待をされながらも生き延びた虐待サバイバーの風間暁さん(No More Abuse Tokyo代表)から「現在の児童相談所・社会擁護の課題と子ども庁創設の必要性について」、認定NPO法人代表室の前田晃平さんから「子どもたちを性犯罪から守る日本版D B S実現への課題について」講演をしていただきました。
今回登壇いただいた風間暁さんは、幼い頃に実親から虐待を受け児童相談所に保護され、更生施設でも窮屈な思いを経験されてきました。実際の児童相談所や更生施設における課題と提言を入口/中口/出口の3段階に分けて詳しく説明を伺いました。
図)社会養護の課題整理(入口・中口・出口)(山田太郎事務所作成)
まず、入口の部分にあたる、一時保護所や児童相談所の課題について説明して頂きました。現状として、一部の児童相談所では、守られるべきはずの子どもが、施設内で虐待されるという”負の連鎖”が起きています。風間さんも児童相談所や一時保護所で酷い生活を強いられた1人です。
現在の風間さんは、保護司や子どもの代弁者であるアドボケーターとして子どもを支援する側として活動されていますが、“支援に携わる人(職員など)に対するケア不足が子どもへの虐待につながっている“といいます。子どもは、大人が思っている以上に大人の言動や行動に敏感です。虐待された子どもなら尚更です。子どもたちは、余裕がなかったりイライラして激昂する、不安定になっている職員の顔色を窺いながら生活するようになり、更に心を閉ざしてしまいます。保護を求めて行ったはずの施設が居心地が悪かったり、脱走するような状況であったとしたら、子どもの支援に繋がっているとは言えません。
「職員の待遇改善などの“支援者の支援”は、皆さんが思っている以上に子どもにダイレクトに効果がありますよ」という当事者だからこそ分かる風間さん提言には、大変説得力がありました。
写真)風間暁さん
次に、中口の部分では、虐待サバイバーによるアドボカシー制度の必要性についてお話しいただきました。アドボカシー制度とは、子どもに対する代理人のことで、子どもを最大限に守ることを目的としています。そして、このアドボカシー制度の導入にあたり、アドボケイトは虐待サバイバーが最適だとおっしゃていました。なぜならば虐待された子どもの中には、同じ苦しみを経験した人以外には本音で話すことが難しいと感じる人もいるからです。実際に風間さんも「愛情いっぱいに育ってきた人に、私の何がわかるの?」「いいね。国家資格をとるような余裕を親から与えてもらえて」と、医師・教師・社会福祉士・支援者を前に本音で話すことが出来なかったと言います。だからこそ、型通りのアドボカシー制度ではなく、同じ境遇や同じ言葉を持つ虐待サバイバーによるアドボカシー制度の必要性を強く訴えかけておりました。
図)アドボカシー制度のイメージ
出典)三菱UFJリサーチアンドコンサルティング会社「アドボカシーに関するガイドライン」より
続いて、出口の部分に当たる支援後のあり方についてご指摘をいただきました。今の日本の児童養護のあり方として、可能であれば実親のもとに戻すのが基本原則の政策となっています。しかし、虐待され、親への信用を失った子どもにとっては、親と暮らすことが幸せとは限りません。このように、当事者個々の事情にそわない画一的なゴール設定や、望んでいない支援の押し付けが現状の課題となっています。この課題に対し、もっと一人一人の子どもに寄り添ったゴール設計の必要性についての投げかけがありました。そして、そのためには子どもを主軸に置く「子ども庁」のような機関が必要だとも言っていただきました。
最後に、風間さんは「子ども家庭庁」の名称にも厳しい提言をされました。家庭という言葉で傷つく子ども達もいるからです。虐待を受けている子どもにとっての家庭は、毎日生きることに必死な戦場を指す言葉だからです。また、家庭はあたたかい場所であり、そうでなければいけないという固定観念と現状のギャップに苦しむ人もいます。したがって、「子ども庁」へと名称を変えるべきとご指摘をいただきました。
風間さんの力のこもった言葉には私含め、会場にいた議員や役所の全員が心を打たれました。早速、3月9日より勉強会では「子ども家庭庁」から「こども庁」に名称を変更いたしました。また、当事者である子どもたちも読むことができるように、すべてひらがなで「こども庁」を表記ことにしました。
写真)「子ども庁」に変更の賛同意思を表明してくださった橋本岳衆議院議員
写真)写真)「子ども庁」に変更の賛同意思を表明してくださった杉田水脈衆議院議員
写真)写真)「子ども庁」に変更の賛同意思を表明してくださった木村弥生衆議院議員
写真)宮路拓馬衆議院議員
政治家は話だけを聞いて何かしてる素振りを見せます。実際に風間さんからは「自分たちの発する意見を搾取しないでほしい」と言われました。話だけを聞いて何もやらないのは搾取同然です。
風間さんとはある虐待サバイバーの会でお会いし、そこでの話に非常に感動をしました。そして、「政治に声を届けるために、必ず6ヶ月以内に自民党の勉強会で意見を言ってもらう場を設ける。そして、子ども達のために皆さんのような経験をしない世の中を作る」と風間さんと約束をし、期限内に勉強会に代表者を呼ぶという約束を果たしました。
写真)虐待サバイバーの会で約束する山田
出典)子ども虐待防止対策イベント in 東京 2020 配信 より
しかし、虐待をなくすための仕組みづくりをすることが搾取と言われないための最低限の条件です。「子ども庁」では、虐待された子ども個々人にあったゴールの設定、支援先/事情聴取においての環境改善の仕組みづくりを目指します。引き続き、子どもたちのために自民党有志の議員とともに全身全霊で努力して参ります。
長くなってしまったので、NPO法人フローレンス前田さんの「日本版DBS」についての提言は、次のブログでご紹介したいと思います。