2020.11.6

「AMANO SCOPE」―世界に変革をもたらすデジタル化の波―(前編)

 先日、株式会社FAプロダクツ代表取締役会長の天野眞也さんのYouTube番組「AMANO SCOPE」に出演しました。動画が配信されましたので、是非ご覧ください。「政治の世界に変革をもたらすデジタル化の波

放送に先立ち、天野さんと行った事前打ち合わせの内容は対談記事としてまとめました。

■デジタル化社会、Society4.0と5.0の違い

天野眞也(以下天野):デジタル庁の話や、山田さんが感じられている政治面から見た時のDXなんかも面白いなと思ったり、政府はこうしようと思ってるよ、みたいなのも良いと思いますし、逆に僕らはどうやって行ったらいいのか、みたいのも面白いと思いますし、山田さんが考えていることを全部撮りたいなという。

山田太郎(以下山田):テーマとして、Society4.0と5.0の違いをはっきりさせたいと思っている。逆に言うと、天野さんのところのデジタル化やそこでの展示等も含めて、Society5.0としてのものづくりとか、そういうのがどうあるのかというのは、位置づけは考えておいてほしい。
Society4.0と5.0の違いって何となく分かる?

天野:なんとなく分からないです。(笑)

山田:分かりました。最近政府もマイナンバーカードとか、教科書のデジタル化とか色々言ってるんだけど、あれってはっきり言って、ICTの世界なんですよね。要は言っちゃうとSociety4.0の世界。

Society5.0ってどういう世界かというと、データ等を活用して、使っているユーザー、そういう人たちに対しての、余剰というか付加価値を与えるというか、典型的に分かりやすいのは、例えばタクシーでいうとタクシーの配車システムっていうのは、Society4.0の世界。あとは、医療の対面診断とかって、よく言われるんだけど、あんなのもSociety4.0の世界。

じゃあタクシーの場合のSociety5.0って何かというと、今フィンランドなんかでも進んでいるが、例えばAからBに行きたいといったときに、月に5万円払っておくと、タクシーでも電車でも乗り放題。

スマホで入れると、どういうのが最適なルートで、それをどういう風に使ってもらっても、コミコミですよ。

天野:コミコミなんですか(笑)

山田:例えば、あるところとあるところは電車を繋げないからタクシーのほうがいいよねってなったら、タクシーが予定の時間に迎えに来て、電車に間に合うように、または電車から何時に迎えに来るとか全部つないである。だから、とにかく自分は移動が価値、タクシーを呼ぶとかいうのは便利になるだけなんですよ。それがSociety5.0の世界ですね。

医療で言うところの非対面医療なんてのは、Facetimeとかzoomとか、これはICTの世界なんですよね実は。手段でしかない。

だけど、医療においてのSociety5.0っていうのは何をしたいかと言うと、健康体になりたいとか維持したいっていうことなわけだから、例えばデータを使って、いわゆるカルテだったりとか処方箋だったりとか、レセプトが全部一体になってますと。かつウェアラブル化なんかによって、過去一年とか半月でも一ヶ月でも、心電図とかいろんなデータが録ってあって、要は3分間診療をなくそう、ということ。

つまり、お医者さんとの面談なんてのは、血抜いたってその時だけしか分からないわけで、そういうのをデータでもって・・・逆に言うと病気だったらウェアラブル付けてると、「あんた病気だから医者に相談したほうが良い」って勝手に受診のスケジュールが取られて、あるいはもっというとAIでも診断がされて返ってきて「入院したほうが良い」とか、そういうのがセットになってますと。これは5.0の世界です。

もちろんSociety5.0っていうのは、Society4.0を経由しないと行けないから、そういう意味ではSociety4.0は良くないとか大したことないとかは言わないし、Society4.0の世界ですらできてないんだけれども。

その先にある5.0の世界っていうのは何なのか。

例えばマスカスタマイゼーションだったり、人たちがユーザーとしていたとしたときに、例えばものを作るサービスをしているという会社は、どういう風に展開されるのか、世界があると思うんですよ。もちろんそんな事言うけれども、すぐにはできないから、ちゃんとSociety4.0の自動化とかやっていったほうがいいよね。

で、たぶん1つヒントとして、ものづくりにおけるSociety5.0世界があるとすると、コネクティビティって世界があるから、それはたぶん、昔REPACモデル(※1)っていうのを出したと思うんですけれども、上流がERP(Enterprise Resource Planning(企業資源計画)日本語では、統合基幹業務システム、基幹システム)みたいな商流みたいな世界があって、下はものづくり流、実物流、まさにデジタルツインの世界がそうなわけで、でも実際のものをつくるってことよりも、デジタルの世界の中でシミュレーションを全部やって、シミュレーションをやって検討してるだけでは、まだSociety4.5くらいの世界だから。

天野:そうですね、

■政府・自民党で議論されていること

山田:で、政府の方から僕が言うとすると、今実は何をやってるかと言うと、実は政府というか自民党のデジタル社会推進本部、デジ本っていうんだけれど、そこの役員になったんですよ。というのは、司令塔として党の中でいわゆる、日本がデジタル化をどう進めていけば良いかということの、旧に甘利さんが座長なんだけれども、そのもとで実務の責任者になったんだよね、で、政府政府っていうんだけど、政府のデジタル庁って実は手段でしかないから、別にデジタル庁を作っていろんな調整をしていきましょうって世界なので、月曜日に平井大臣とあって、直接党と政府が何を切り分けてくかっていうのを下打ち合わせをやるんだけど、問題点は山で言うと、みんなどういう状態かって言うと、マイナンバーカードの話だけど、あんなもの配布する必要があるのかと思って、今やもう生体認証とかになるでしょ、

スマホとかでも、現場の総務省なんか何やってるかと言うと、スマホ使えないおじいちゃんおばあちゃんがいるから、いろんな携帯電話の販売店では教える教室を作る、とかいう訳わかんないことを言ってる、それはそれでやってくれと。

Society4.0の世界でもICTを通らないと5.0にはいけないからね。

だけど、そんなことの延長線上には5.0はないんだよ。それは僕からすると政府がやってるのってどの程度の話かって言うと、山登りで言うと道具を一生懸命用意しているだけ。もっと大事なのは、どの山に登るとか、どのルートで行くのかとか、他の国で一番デジタル化が進んでいると言われているのはデンマークだったりとか、2位が韓国、3位がエストニアらしいんだけれど、そういう世界ではどんな世界が見えてるのか、とか。

そういう「グランドデザイン」と言われるような、その辺りが全然できていなくて、例えば判子をなくすっていうのもいいんだけど、デジタル化の世界から言うと、判子をなくすって言うよりも、認証をどうするかっていうほうがよっぽど大事で、そこは残るんだよね。

で、要らなかったものがなくなるのは良いんだけれど、最終的に要るものはあるわけで、実印を押していたものであったりとか、責任を取らなきゃいけないものだったりとか、デジタルになればなるほど、よりデータが吸い取られちゃったりするからこそ、関門としての個人認証っていうのは絶対必要なわけで、そうなってくると、〇〇大臣とか判子をなくすっていって一生懸命やってるんだけど、たぶん行き詰まっちゃう。とか。

政府としても進めていく山登りの方法が、間違っているとまでは言わないけれど、修正しなければいけない面はあるよねっていうところを指摘しながら、単に今政府とか行政が何をやろうとしているかっていうところにとどまらず、デジタルの山にどうやって登っていくのか、っていうことを中心に、色々リアルな世界をみなさんにご説明するっていうのがやりたい。その二本立て。そうするとすごく深い議論ができるかなぁと。

天野:最高です。僕らが今どういう状態にあるかっていうと、実は山田さんが4~5年前にロボコムで合宿したりした時に色々語ってくれたことを、リアルにしているっていうのが今の現状で、一例を上げると、中量産にすべての産業は向かっていくっていう。例えば大量生産のところは、それじゃ満足度が上がらないからマスカスに入りますし、一品物を作っているところは、それじゃ効率性が上がらないからモジュール化する。そういうことをやりましょうとか、なので僕らってまだSociety4.0の世界から抜けれてないっていう形で、逆に5.0のものづくりって、FaaSっていわれるような、Factory as a Serviceになるんだっていうような漠然としたのはあるんですけど、さっきみたいな移動手段が、電車もタクシーもごちゃまぜだみたいな、そんなところまではまだちょっとものづくりとしてのイメージが沸かないので、そこはちょっと一回考えてみます。

 

■ものづくり産業への影響

山田:考えてよ。ものづくりも二面性があって、ユーザー(利用者)から見た場合の製造業と言うかメーカーと、メーカーそのものから見た場合のものづくりっていうのはちょっとずれてる。

これはどういうことかっていうと、自動車を作る場合のものづくりの仕方っていうののSociety5.0というのは多分あると思う。つまり僕は究極はスペックのコントロールをどうやってデジタルの世界の中だけで提供できるかどうか、だけど、利用者から見た場合の5.0は、いわゆる所有から利用へとなっちゃうので、いわゆるメーカーだけが提供しているか、メーカーの実物ものづくりというところに絡むのかが疑問なところで、そのあたりの打ち出しは整理する必要があるかなと思っている。

天野:分かりました、メーカーから見るか、ユーザーから見るか[2] によってこれは視点が違う。

山田:そうそう、ユーザーから見る場合の車っていうのは移動手段でしかないから、いわゆる所有から利用へ[3] っていう世界になる。そうするとマーケティング的に見れば、自動車メーカーはどちらかというと所有されるんじゃなくて利用されるような車を提供するかもしれないし、メーカーの提供するものが変わっちゃうかもしれない。

天野:そうですね、たしかに。

山田:逆に言うと、車を作るってことを是としていた場合の、車メーカーにおけるところのSociety5.0の使い方っていうことになるとすると、ファブレスっていうことになるかもしれないし、例えば自分たちで全部生産設備を持つのか。例えばファブレスっていう世界からいけば、前言ったかもしれないけどナイキとか[4] 。ナイキは明らかに靴メーカーであるけれど、靴なんか作っていない。台湾の関連(会社)で作っていて、商社が輸入してきて売っていると。で、管理している究極というのは何かというと、マーケティングと設計開発しかない。ナイキは何をやってるかというと看板マークを整備をしているというのと、ブランドを作っている、それとR&D。靴の中に空気を入れて飛んだり跳ねたりしていいやっていってる。あとは全部協力メーカーが作っている、ということになるかもしれません。

今はTOYOTAなんかは全部自分で作ることをやってるけれど、電気自動車の世界になってしまえば、自分で作ってる部分なんてあるのかなと。いわゆる、エンジンだからエンジンを中心にってなるけど、じゃあ飛行機になっちゃうともう全然世界が今変わってきちゃっていて、エンジンなんて持ってないんだよね。

いわゆるGEだとか、ロールスロイスとかにエンジン出ちゃっているから。エンジンは全部借りてるんだよね、時間で。メンテナンスが大変だからってことで、整備の時は外すんですよ、パンパンパンって。

飛行機に乗ってもらうと、777とか787とかに乗ると分かると思うけど、エンジンなんかGEって書いてあったりとか、またロールスロイスとかって書いてある。

天野:あ、そうですか。買ってもいないんだ。

山田:そうだよ、それでどうしてるかって言うと、何時間か飛ぶと、あるいは効率が悪いってなると、取り替えるんですよ。簡単に。それで使った分だけ課金する。

天野:なるほど、これ結構利用のイメージのほうが強いですね。持ってる必要ないですもんね。航空会社は。

山田:そう。航空会社もリースだしね、全部。所有をするっていうのはバカバカしいので。

計算も全部やっていて、中古で売れたりするけどリースのほうがいいよねって。

航空会社は今チケットも売ってない。とか。

というふうに、リデザインというか、求められてる。そうするとものづくりの本質は、よりスペックマネジメントだよね、という話になるかもしれないし。

でも、そこまで実はデジタル化の5.0の世界っていうのは問われていたりするから、車の作り方だって、かっこいい車だって今は売れないし、どちらかというとECU(Electronic Control Unit)中心に、安全性とか、そこでしょ。制御の部分なんかも、ほぼ新規の開発っていうのはする見込みはないので、どちらかというとECUを中心に自動運転だとか、今度は車の作り方が燃費だったり、持ちだったり、清掃しやすいとか、ユニット交換でもって車体は長持ちするとかというようなモデルとしての提供になる、いわゆるタクシーを提供しているのと同じレベル。車って知ってるかもしれないけど、タクシーで提供している車と、自家用車で提供している車は違うからね。

天野:そうですね、最近びっくりしたのは、テスラは意外とUberとか、そういうことに利用されることを前提に、こういったところに別途に鍵がかけれるとか、そういう共同利用を前提にスペック開発したりしてますもんね。

山田:そう、結局は根本のやり方は変わってくるっていうところまで、逆に言うとFAナビグループとかTXFAが責任を持ってコンサルとか設備とかの問題までやるのかは分からないけど、たぶんそういう時代に急速になっていく。

 

ものづくりが物を作らないいう戦略

天野:そうですね。僕らが今実感として思っているのは、日本の会社さんってBtoBで、簡単に言うと下請けが多いじゃないですか。そうすると、だいたい描く戦略って食品系でも、自動車のサプライヤー系でも、今までは親会社に100%納品してたのを、自分たちの技術を使ってエンドカスタマーに直接売れないか、っていう、いわゆる利益率の向上みたいのを目指してるケースが多いんですね。

例えば今、今日も話してたんですけど、セーレンっていう自動車のシート生地を作っている会社は、BtoCをやりたいって言っているんですけど、それだったら例えばレクサスっていうディーラーに対して、自動車の内装って2色位、下手すれば1色しか選べないので、そういった複数色の内装をディーラーオプションで提供すると。

逆に言うとTOYOTAはこの5月に全車種を共通販売にしてしまったので、もうディーラーのチャネルによる車の差別化はできないと。だったらそのディーラーがセーレンと直接契約して、内装生地とか型は持ってるわけですから、ディーラーオプションで内装を全部カスタマイズしてから納車する、でも+100万円よと。こうなった時に、例えば富裕層だったら、100万円かけてでも全部内装をカスタマイズする可能性があって、セーレンが今まで自動車メーカーに生地として納めてたら、1台分例えば2~3万円にしかならなかったのが、これは技術も要るんですけど、100万円とれたら利益率は爆増するよねみたいな。

このときに、僕はどうするかっていうと、それを売り出す機能はセーレンにはないので、うちのマーケティングチームはそういったマーケティングのPoC(PoCとは「Proof of Concept」の略語であり、日本語では「概念実証」「コンセプト実証」と訳されるのが一般的)ができるように、例えばカタログだとか、HPだとか、ディーラーが開拓のマーケティングができるようなものを目指したいなと思ってるんですね。

ほとんどの下請け企業は、今まで親会社に納めてたものから、直接販売をする時の最初の一歩目を人的に採用できないし、グロースハックなんて知見もないので、そういったところを僕らがお手伝いできると、たぶん下請けからの脱却ができるみたいなことはちょっと考えてるんですね。

山田:それで考える時に、何を考えてほしいかと言うと、消費者余剰と生産者余剰[6] というのの違いというのはデジタル化で大事。どういうことかというと、生産者余剰というのは厳格に売った価格からコストを引いたもの。消費者余剰は感じている対価というのがあって、それをマックスにできるかどうか。今の話でいうと何が起こっているかというと、最大の余剰を取ろうと思っても、もし生産者余剰だったら自動車メーカーに納めてる以上、tax?がかかっちゃうということ、つまり自動車の販売価格以上はとれない。でも、イスと空間の中で、余剰で満足してるかもしれないんだよねもっと。そういうことじゃない?車の売られた価格よりも、高く感じているかもしれないんだったら、そこでお金取れたほうがいいよね。

で、逆もありきで、取れなかったとしても別のモデルでセットして売るということもできますと。例えば、一番分かり易いのは、YouTubeとかタダなんですよ。だけど、消費者余剰をすごく感じているわけ、価値を。よく言われるのは、30年間GDP上がってこなかったと。で、一人あたりの自給量が下がったとよく言われるけど、じゃあ、生活が豊かになったかと言うと、豊かになったという人が多いんだよね調査すると。それはなんでかっていうと、プレミアモデルじゃないけれども、金払わなくっても例えば旅行もいけますと。ネットの中で見れますと。昔は地球の裏側とか見れなかったからね。

南極のペンギン見たいと思ったって、お金を払わなきゃ見れなかったわけで。

写真買ってこなきゃいけなかったものが、ネットで見れたりするじゃん。そういうのだったら完全に消費者余剰なんですよ。ただ、消費者余剰はそのままだと、いわゆるメーカーであげて、提供する側がタダだから、広告モデルとかなんとかモデル、あるいはサブスクリプションでもって合理化する。例えば変な話だけれど、シートを年間いくら払ってくれれば、自分の好きなシート3回取り替えられて、立派なものを提供するとかさ。買いたい物は、車の中の豪華な高級感であると。そんなの飽きちゃうから、しょっちゅう変えられるっていうようなサービスもあるかもしれない。

あと、お花屋さんも最近そういうの多いんでしょ。年間で、選ぶのも買って帰るのもめんどくさいから、年間何万か出しておくと全部込みっていう。サブスクリプションモデルというか、そういうもの。いわゆる、満足を、一年間このお金で、考えうる限りにおいては提供する、そうすると、満足をコントロールしながら、原価もコントロールできる。消費者余剰をマックスにしつつ、自分たちの提供原価をコントロールできれば、お客はもっと喜ぶわけじゃん。

だけど、変な形で、いわゆる消費者の価値観と関係ない中でプレミア(車?)を与えて?200万円くらいであると。それにキャップがかかっちゃうから、どうしてもそれ以上の付加価値の提供となると、自分たちがホストになって削っていっちゃうだけなんだよね、余剰が減っちゃうんですよ。そういうモデルからの脱却っていうのは、構造上確かに考える必要があるかなと。

天野:そこが僕最近とみに感じているところで、今先生から消費者余剰っていう単語を頂いたんですけど、顧客価値で考えろみたいなことを言ってたんですけど、これは特に日本の会社は下請けが圧倒的に多いので課題になってるところが多いですね。食料を作っているところも一緒で、例えば小麦粉作っているところは、パンケーキ粉がどうやったら売れるのかって言ったって、ゆるやかに日本の人口は減っていくわけですから、売れないので、だとしたら、消費者に対してどうアプローチしていくのかっていう課題を持っているところが凄く多いです。

山田:クックパッドかなんかと組んでさ、小麦粉を使った美味しい料理をもっと紹介して、満足をまず前提とした上で料理に使ってもらうほうがいいよね。

パン屋の提供っていうのはキャップがかかっちゃうっていう。

天野:そうなんです!でも色んな小麦メーカー見てみると、やっぱりパン屋に提供しているっていうところが圧倒的に多くて8割とか。たぶん、ヤマザキとかそういうところに売ってるんだと思うんですけど。そういうところが、消費者余剰の部分に直接アプローチできるような、満足をコントロールするような目線で、たぶんビジネスを作っていけると、製造業っていうのももっともっと。これたぶんグローバルに展開できたらもっと良いことになりますよね。

山田:ただ、難しいのは、ものを抱えてると今度は、提供する能力とかっていうのを安定させたいから、デジタルっていうのはいいんですよ、コピーだから。なんだけど、リアルなものづくりの世界は、安定的に供給することがもう一つの課題だから、安定的に提供できないとしょうがないよねっていう。

天野:そうですね、この安定感とのバランスが大事なんですよね。

山田:そうそう、だから爆発的に売れても、提供できなくなっちゃうから。そういうところはどうするのかと。

だから、ものづくりは提供しているスペックの多くというか一部を、デジタルとの混合にして提供するっていうことをやらなくては。ただ、自動車はそういう方向に確実に向かっていて、乗り心地だってなんだってバネで提供するんじゃなくて、デジタルでソフトでしょもう。あとはカーナビなんかで付加価値を付けて、とか。

あとは、ものは買わなくなっちゃうので、しょうがないんだろうね。すべてのものづくり企業は、少子化でもあるし、ものも買わなくなるから、あるいは生活様式もよりデジタルによって、今まで提供していた価値を変えられるかどうかというのは勝負だと思います。ものづくり企業こそ。

天野:そういうことですね。やっぱり、サービス化するっていう言い方もありますけど、もっとストレートに言うとデジタル化するってことですね。

山田:そういうこと。

天野:デジタルで満足をコントロールするのか。

山田:ただ、今のまだ、自動車なんかっていうのは、なんかやってるのはさ、そこらへんの駐車場で止まってて借りれるのあるじゃん。

天野:はい、あのシェアリングですよね。

山田:そうそう。あれも、シェアリング っていう世界なんだけど、なんのためにシェアリングするかっていうと、もっとこうしたいとかああしたいっていう、会社行くのに使うとか、レジャーに使うとか、そうしたら、例えば僕だったら、軽井沢で旅行してて、ピピッてやると、勝手に予約が自動に入ってきて、新幹線とシェアリングと全部くっついている、駐車場まで全部連携が取れていて、ここ停められるよ~とか。なんならレストランの予約まで。軽井沢ってシーズンになるとレストランも取れないから。

ただ、それは、ちょっと高めで良いんですよ。例えば、待たない。原価を感じなきゃそれでいいから。あとは総合的にトータルでくっついていけば無駄もなくなるから、相互で共有できるかもしれないし。あるいは、マーケティングっていう費用が、だいたいものの提供の3~4割乗ってると言われるけど、そういうものもなくなったり。もうそこまで考えないと、結構ものづくりはキツい時代に入ってきた感じですね。

そんな中で、現場でFA使って、どういうものを作っていくのかっていうのを、共通化も含めて真剣に考えないと、誰も利益を出せなくなってしまう。劇的にものの値段が下がっていくんですよこれから。デフレなんですよ。デフレって悪いことじゃなくて、経済が縮小しているわけじゃなくて、さっきみたいに消費者余剰が圧倒的に伸びているので、プレミアモデルも含めて結構タダになっていっちゃう。それは消費者からすると悪いことじゃないし、メーカーもシェアを取るために一生懸命価格を下げちゃったりしてるから、まあ流れを変えられないんですよ。そこでも勝っていくと。それは原価を感じさせないことなんですよね。

圧倒的な消費者余剰に対して、どこで勝負をしていくのかっていうような。リデザインしないと、延長上に生き残りがない。

だから、IoTというのはよく言ったもので、もののインターネット繋がるじゃなくて?そのものが全部インターネットになっちゃうからさ。繋がってるだけじゃなくて、付加価値提供しないと。デジタルじゃないと?

ものづくりこそものすごいウケちゃうよね。

天野:そうですね、ウケちゃいますね。パッと答えすぐ出ないですけど・・・

山田:いきなり100年後のことを考える必要はないから、段階段階で、例えばこの5年10年ていうのはこういう変化があるだろうっていうことで、対処していかないとしょうがない。

天野:いやでもすごい面白いですね、どうやってデジタルで満足をコントロールしていくか、リデザインしていかないと、ものづくり企業は生き残っていけなくなっちゃいますね。

――後半に続く――

※1 REPACモデルは、生産プロセスを資材調達から出荷、配送までのサプライチェーンと捉え、その中核に位置するMAKEの部分を、Ready, Planning, Execute, Process, Analyze, Coordinateと分解してビジネスサイクルをまわすモデルとして構成したもの。