2024.4.23

決算委員会〜AIと知的財産権等について・デジタルアーカイブについて・こども課題に関する相談窓口について〜(2024年4月15日)

〇山田太郎君 自由民主党の山田太郎でございます。

AIと知的財産権等について

早速、ITと知的財産権等についてまず御質問をさせていただきたいと思います。

生成AIが非常に普及しておりまして、いろんな懸念が生じています。文化庁は、一応、AIと著作権に関する考え方という整理しているんですが、一方で、著作権以外の知的財産の侵害についてもいろんな懸念がありまして、知的財産戦略本部ではいろんな検討会等が行われています。

例えばなんですけれども、声優さんの声を無断で機械学習した生成AIなんかも出ていまして問題視する意見も多いんですが、現行法上このような生成AIに歯止めを掛けることはできないのかどうか、内閣府、お答えください。

〇政府参考人(奈須野太君) お答え申し上げます。

内閣府では、昨年十月からAI時代の知的財産権検討会を開催して、知的財産権の観点からリスクへの対応策などについて検討を行っております。

御指摘の声でございますが、これについても検討を行いまして、具体的な事案にもよりますが、著作権法、商標法、不正競争防止法などで声を保護するということには限界があるというような議論になっております。

〇山田太郎君 韓国なんかでは、この有名人の声の無断不正使用に関しては不正競争防止法で対応しているということなんですが、同様の法改正について、これ経産省の方で検討すべきだと思いますが、いかがですか。

〇政府参考人(井上誠一郎君) お答え申し上げます。

委員御指摘のとおり、韓国では不正競争防止法において、商慣行や競争秩序に反する方法で肖像、音声等を無断で使用することにより他人の経済的利害を侵害する行為が不正競争として定められているところでございます。

日本におきましては、判例によりパブリシティー権は認められており、現時点においても、他人に音声等を利用され、専ら肖像等の有する顧客誘引力の利用を目的とするというふうに言える場合には、不正、不法行為法の違法となるものと、こういうふうに理解しております。

現行の日本の不正競争防止法では、周知な他人の商品表示等を使用して需要者に混同を生じさせる行為が規制されているところでございますけれども、声そのものを直接に保護しているわけではないと、こういうふうに理解しております。不正競争防止法の目的は事業者間の公正な競争を確保することでありまして、人格権に由来する著名人の肖像等といったパブリシティーの保護を同法の法体系で規制することは適切なのかどうかについては検討する必要があると、こういうふうに考えております。

また、韓国における不正競争防止法の運用の実態に努める必要があるほか、本人の、他人の音声を利用することによる、生じる問題の実態や、仮に規制による対応を行った場合に関係事業者や社会に与える影響など様々な検討課題があるというふうに承知をしておりまして、まずは現行の不正競争行為との関係におきまして、考え方の整理を行い、必要に応じて不正競争防止法の見直しを検討してまいりたいというふうに考えております。

〇山田太郎君 今お答えの中でパブリシティー権等の話もあったんですが、実は日本はプライバシーとかパブリシティー権に関する、あるいは肖像権に関するきちっとした法律がないんですね。

欧州なんかでは御案内のとおりAI規制が進んでいまして、リスクベースということで特にプライバシーの問題というのは非常に問題だということなんですが、日本の場合にはそういった法律がないということなんですが、今後そういったものに対する歯止めはどういうふうに扱われていくのか、これ内閣府さん、お答えください。

〇政府参考人(渡邊昇治君) お答え申し上げます。

AIに関しましては、議員御指摘のように、プライバシー、肖像権、パブリシティー権等の様々な問題が存在するということは承知をしております。

こうした多岐にわたる問題に関しましては、AI戦略会議を設置いたしまして検討をしております。AI戦略会議の論点整理におきましては、この懸念されるリスクの一例として、個人情報の不適切、不適正な利用やプライバシーに関するリスクが取り上げられているところであります。

また、昨年十月に設置されましたAI時代の知的財産権検討会では、これまでに肖像権やパブリシティー権の判例の考え方につきまして確認を行ってきているところであります。

今後につきましては、内閣府といたしましては、こうした戦略会議やあるいは検討会での有識者の御意見や諸外国の動向を踏まえながら必要な検討を行ってまいりたいと思っております。

〇山田太郎君 まさに、肖像権、パブリシティー権、プライバシー権がない日本、これから法律ちゃんと整備するかどうか、結構大きな話だと思いますので、継続してこれは議論していきたいと思っています。

デジタルアーカイブについて

次、デジタルアーカイブについて質疑したいと思います。実は、今日、新しい国会図書館の倉田館長来ていただいて、国会質疑デビューだということですので、どうかよろしくお願いします。

まず、国会図書館なんですけれども、二〇〇〇年までの書物に関してはいわゆるデジタル化というのを進めているんですが、一方、二〇〇〇年以降の書物に関して、そのめどが立っていないということであります。今までの図書館が所蔵している点数、千二百四十、あっ、一千二百四十万点といううち三分の一が二〇〇〇年までなんですが、実は最近出されたものの方が多くて、三分の二がいわゆるデジタル化されていない。で、一方、なぜかというと、ボーンデジタルということで二〇〇〇年以降は元々がデジタルがあるんだけれども、そうなってくると、これ納本制度みたいなものと、紙でないので、引っかかってしまうので、デジタル納本みたいなことが必要だと、こういうことであります。

いずれにしても、これまで補正を中心に予算措置をして二〇〇〇年までのデジタル化は進めてはきたんですが、二〇〇〇年以降のものをどうされるのか、この辺り、館長の方にお伺いしたいと思います。

○国立国会図書館長(倉田敬子君) 国立国会図書館では、二〇〇〇年までに国内で刊行された図書を中心にデジタル化を進めております。対象となる図書約百七十万点のうち、令和三年度から令和四年度までで約百四十五万点のデジタル化を予定しており、引き続き残りのデジタル化も進めてまいりたいと考えております。

その後の計画や見通しにつきましてはまだ検討段階でございますが、国民にとって広く役立つという観点を考慮しながら、優先順位を付けて取り組んでまいりたいと考えております。

二〇〇〇年代以降に刊行された図書につきましては、出版市場の流通状況や民間における電子書籍化の取組を踏まえ、刊行時期に応じてデジタル化のタイミングを計っていく予定でございます。

また、パッケージ系電子出版物につきましては、過去のサンプル調査の結果を踏まえ、特に刊行年が古く、媒体の電子化が懸念される官庁出版物や学術出版物の光ディスクからマイグレーションを進めていく予定でございます。

〇山田太郎君 これ、政府じゃないんで大臣もいなくて、館長の上には議院運営委員会とか衆参の議長さんとかそういう形なんで、これは国会議員の我々が何とかしないといけないと。多分、国会図書館のデジタル化、誰も反対はしないと思うんですけれども、その責任、音頭を取ってやるのが館長だけでは非常に厳しいということだと思っていますので、これも引き続き質疑、議論続けていきたいと思っています。

ちょっと時間がありますので一問除かせていただいて、漫画の単行本のカバーに関して少し御質問したいと思います。

漫画の方の、漫画家の方が単行本の際に特別に描いたカバーというのは貴重なものなんですね。特にライトノベルなんかのカバーは、カバーそのものが価値があるということでもありますし、いわゆる帯みたいなものもやっぱり必要なんですが、どうしても保管の場合はそれを全部取ってしまって保管されているので、せっかくのそういったものが見れないということになります。

是非、納本された出版物のカバー等についてもしっかり取っておいていただいて、その保管、特にデジタルアーカイブに関しては、しっかりそれをアーカイブすればいいじゃないかというふうに思っておりますので、この辺りの対応もお願いしたいのですが、図書館長、いかがでしょうか。

○国立国会図書館長(倉田敬子君) カバーや帯を本体とは別に保存、保管するためには、どのように管理用データを作成するか、どのような形で保存するか、そしてどのように利用者に提供するかなど、管理から利用まで事業及びサービスの全体について見直しが必要となると考えております。

国立国会図書館におけるデジタルアーカイブ化につきましては、原本の保存を目的として行っているものでございますので、まずは原本であるカバーや帯そのものの保存、保管について検討する必要がございます。

一方、電子書籍にはカバー部分も含まれていることから、今後は電子書籍の収集によりある程度原本のカバーの保存に変えることができると見込んでおります。

以上の状況を踏まえ、カバーや帯の保存、保管の可能性について今後検討してまいります。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

新しい長になったんで、少し踏み込んだ質疑になったと思います。今まで、図書館に聞くと、できない、できないの一辺倒だったんですが、一応検討するというところまで来ましたので、是非、新館長の下でこの辺りもお願いしたいと思っています。

次に、国立国会図書館の納本制度というのは出版物向けということで、デジタル化の進展で出版物でない文化的資産というのが次々出ているんですね。特に、インターネット上の資料ですとかオンラインの記録ですとか、例えばニュースなんかも、紙で出されたものは縮刷版ということで全部図書館に保存されているんですが、ネットで出てきたものというのは実は保存されていないケースもあります。

中には文化的価値があるものもあるんですが、これ是非広くデジタルアーカイブを進めていくべきだと思いますが、これ、まず知財の観点から、内閣府さん、いかがでしょうか。

〇政府参考人(奈須野太君) お答え申し上げます。

デジタルアーカイブについては、国立国会図書館始め各分野のアーカイブ機関と関係府省庁が連携して、二〇二〇年からポータルサイトであるジャパンサーチを立ち上げて、それを核としながら取組を実施しています。

このデジタルアーカイブの推進においては、国が保有する文化財、美術、書籍などを主な対象としているわけですが、御指摘のようなネットのみで報道されたニュースや配信映像など、現在は納本制度の対象となっていないコンテンツの拡充についても重要な課題であるというふうに認識しております。

〇山田太郎君 我々政治家がデジタルニュースでいろいろ書かれたときに、新聞、紙の新聞なら検証のしようがあるんですが、もうこれ、例えば何日かたつと消えちゃったりとか、検証のしようもありませんので、非常に重要だというふうに思っていますから、是非その辺りの議論、これから進めていきたいと思っています。

それから、先ほどから御案内しているデジタル時代に対応した根本的というか抜本的な納本制度の見直し、いわゆるデジタル納本というのは必要なんじゃないかと、こういうふうに思っていますが、これも国会図書館長、よろしくお願いします。

○国立国会図書館長(倉田敬子君) インターネット上で流通する情報の収集につきましては、これまでも国立国会図書館の納本制度審議会において審議していただいてきたところでございます。

納本制度審議会での審議において指摘されてきた課題を踏まえた上で、情報流通の変化や情報技術の進展に即して、今後国立国会図書館が収集すべき図書館資料とは何かということを、有識者、関係者等の御意見も伺いながら検討してまいりたいと考えております。

〇山田太郎君 是非お願いしたいと思っていまして、多分新館長の一番最大のこれ私仕事になるのではないかなというふうにも思っています。

いずれにしても、これからの二〇〇〇年以降の書物というのはほとんどがデジタル版を持っていますので、ただ、それが旧来の納本制度では納本されないということになると、今後の図書館というのは、ほとんどの実は書物なり文化遺産が保存されていないということにもなりかねないんですね。そういった意味で非常に大きなテーマだと思っています。

ただ、御案内のとおり、デジタル納本になってしまうと、絶版という発想がありませんので、民業圧迫にもなってはいけないと。図書館経由になると何でもただで見れちゃうというのもまずいわけでありまして、その辺りの保証問題であったりとかいろんな複雑な問題がありますが、是非この辺りを、新しい図書館の在り方、日本は多分すごくこの辺り遅れていると思います。アメリカ等含めてヨーロッパの国々は全部デジタル化で図書館、大学図書館も含めて保存されていますので、この後しっかりやっていただきたいと思っていますので、御検討お願いします。

さて次は、ちょっと一問飛ばしまして、NHKの問題で、公共放送であるNHKの放送アーカイブというのは、私これも非常に重要だというふうに思っております。フランスなんかは、テレビ番組なんかもアーカイブの対象になっているんですね。

そういった意味で、このアーカイブに対して進めていくべきではないか、そして、放送アーカイブに関してはNHKの必須業務とすべきで、放送法の改正等についても検討すべきじゃないか、こう思っております。是非、総務省の方、お答えいただけますでしょうか。

〇政府参考人(山碕良志君) お答え申し上げます。

NHKの放送アーカイブの重要性についてでございますが、NHKの放送番組は受信料を財源として制作されたものでございまして、その受信料を負担する国民・視聴者にとっての貴重な資産であると考えております。

こうした考え方を踏まえまして、NHKの令和六年度予算に付した大臣意見におきましては、NHKオンデマンドサービスを始め、多様なメディアを通じてその積極的な利活用を図ることを求めているところでございまして、NHKにおいては、大臣意見を踏まえ、引き続き放送番組の適切な保存等に取り組んでいただきたいと考えております。

それから、必須業務化云々の話でございますが、その上ででございますが、御指摘の放送アーカイブを、放送番組をアーカイブとして保存する業務、これについて切り出して必須業務とするか否かにつきましては、NHKが公共放送として果たすべき役割を時代の変化に応じて見直していく中で検討していくべき課題であるというふうに認識をしております。

〇山田太郎君 度々NHKの放送の中身についてもいろいろ議論になったりするんですが、いずれにしても、正しいものが検証をされないというのはまずいというふうに思っています。これまでNHKの放送番組百万本ぐらいあって、そのうち十万本ぐらいがアーカイブされているということを直接NHKから聞いています。で、一万本ぐらいが公開されているということなんですが、この多くをやっぱり国民の、いわゆる放送法で公共放送として位置付けられているわけですから、しかも、諸外国に倣ってしっかり放送もアーカイブの対象としていくべきだと、私はそのように考えています。

この辺り、最後に、大臣にデジタルアーカイブの仕組みについてお聞きしたいと思っています。

昨今、改正博物館法等の個別の法律でこのアーカイブに関しては議論をされてはきたんですが、今日私が質疑したような様々なこのデジタル時代に応じた課題というのはたくさんあるというふうに思っています。

そういった意味で、総合的に、デジタルアーカイブ振興法のようなものをしっかり制定した上で、どうしても縦割りになってしまっているところを、特に高市大臣のリーダーシップの下で、あらゆるこのデジタル化に対応したデジタルアーカイブの在り方を検討していただいて、その法案制定まで是非お願いしたいと思いますが、大臣、よろしくお願いします。

〇国務大臣(高市早苗君) 今日、山田委員から様々御指摘がありましたように、デジタル化に伴う新たな課題ですとか、また可能性もたくさんあると感じさせていただきました。特にデジタルアーカイブは、教育や研究だけではなくて、ビジネスや地域活性化など様々な分野での利活用が期待されております。ですから、その構築ですとか利活用というのは知的財産戦略において重要な課題の一つだと認識をいたしております。

このため、政府におきましては、内閣総理大臣を本部長とする知的財産戦略本部の下で、関係府省庁が各分野のアーカイブ機関と連携をしてデジタルアーカイブの拡充と利活用に向けた取組を推進しております。

山田委員が御指摘くださったデジタルアーカイブ振興法のようなものというのの制定なんですけれども、これは、デジタルアーカイブ学会ですとか、また超党派の議員連盟や自民党の勉強会や様々な場でそういう御議論をいただいているということは承知をいたしております。ただ、政府としてのこの立法性の必要性につきましては、現在の取組の進捗、それから幅広い関係者による議論を見極めることがまず重要だと思っております。

それから、この取組を加速化、具体化するために、本年二月、知的財産戦略本部の下に、知的財産戦略推進事務局長を議長とするデジタルアーカイブ戦略懇談会を立ち上げたばかりでございます。

こうした推進体制の下、今年の六月を目途に策定を予定しております知的財産推進計画二〇二四におきましても、このデジタルアーカイブの構築、利活用に向けた取組をしっかりと位置付けて、積極的な取組を進めてまいります。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

実は、今、高市大臣がお話しになった知的財産戦略のこの内容なんですが、これ閣議決定事項になっていないんですね。なので、しっかりこれ、政府でやるのであれば、政府が責任を持って、私は、閣議決定事項として知財を一括して議論していく、あるいはデジタル化を議論していく、こういうふうにしていただきたいというふうに思っております。

デジタルコンテンツ、それからアーカイブに関しては質問ここまでですので、高市大臣と国立国会図書館長はここまでで結構でございます。

○委員長(佐藤信秋君) 高市大臣、倉田館長、どうぞ御退出、結構です。

こども課題に関する相談窓口について

〇山田太郎君 次に、こどもの課題に関する相談窓口という内容に移っていきたいというふうに思っています。

まず、これ、教育委員会の問題というのがすごく大きいと思っていまして、この辺りから行きたいと思いますが、旭川の爽彩ちゃん事件、まあ北海道の凍死事件ですね。それから、福岡での剣道部の顧問の不適切指導、上級生からの壮絶ないじめがありました。札幌市でも、特別支援学校の生徒に暴力を振るって、複数の生徒が不登校になった事例。それから、札幌市において、不適切指導で自死があったにもかかわらず、三年以上も教育委員会が取り扱わなかった事例などなど、本当にたくさんの事故、事件があります。

公的な統計が取られていない一九八九年から二〇二一年までの間で、これは民間団体が調べたんですが、これ、裁判記録とか調査報告書を集めたところ、指導死と見られる自殺が九十三件、未遂と見られるケースが十五件もあり、少なくとも百件以上が判明しているわけでありますが、これらは教育委員会での解決というのは実はなされていません。教職員の多くは児童生徒のことを本当に第一に頑張ってやっている方も多いと信じますけれども、学校のことは学校内部で解決すべきという風潮もありまして、保身を優先してどうしてもないがしろにされている人もいるのではないか、残念ながらその隠蔽体質もあるのではないかというふうに思います。

一方、文科省の方は二十四時間子供SOSダイヤルというのを実施しているということなんですが、その相談窓口を担っているのもやっぱり教育委員会なんですね。で、この件数がすごく今増えておりまして、令和四年度、聞きましたところ、教職員との関係の相談が七千五百件以上、いじめ等の相談が六千七百件以上ということで、教職員との関係で七千件を超えていると。これらの相談に対してどのようなアプローチが取られたかということに関しては、一切把握されていない、あるいは、相談対応のフローも定型化されておらず、それどころか報告書の作成や保管も定められていないということであります。

つまり、文科省が持つ相談体制は教育委員会でとどまってしまっているのが現状だということでありまして、こういった教員による不適切な指導やそれを起因とする自殺、指導死、あるいはいじめ重大事態の事例は大変あるんですけれども、解決されていない状況を打破するためにも、例えば英国のOFSTEDのような独立した第三者評価機関も含めて、教育委員会の抜本的な見直しということをそろそろ検討されるべきじゃないかと思いますが、文科省、いかがですか。

〇政府参考人(浅野敦行君) お答えいたします。

教育委員会は、委員御指摘のように、事案の発生を防ぎ、万が一事案が発生した場合であっても、不祥事を隠蔽することはもってのほかであり、適切に対応する必要があります。また、教育委員会による適切な対応のために、首長による教育行政への積極的な関与の仕組みとして、首長は教育長の任命権を持っているほか、教育委員会だけでは対応が困難となるようなケースを想定して、児童生徒等の生命、身体に被害が生じている場合等の緊急における措置等については、首長が総合教育会議を招集して教育委員会と協議、調整を行う事項とされております。

いじめへの対応につきましては、文部科学省では、昨年度、児童生徒数に対していじめ重大事態発生件数が多い自治体へ課題等について指導、助言を行うため、国の個別サポートチーム、専門家も含めたサポートチームを派遣したところです。さらに、こども家庭庁においては、自治体の首長部局において専門家を活用するなど、学校における対応のほかに、いじめの相談から解消まで関与する手法等の開発・実証事業を行っております。

文部科学省としては、様々な仕組みを活用しながら、いじめ重大事態に係る措置を始めとする緊急の場合に、教育委員会が首長部局等と連携して対応するよう、各教育委員会に促してまいります。

〇山田太郎君 確かに、教育長の任命はその首長があるというのは事実なんですが、ただ、議会の承認を得ているということで、罷免する場合に強く出れるのかと。あるいは、教育、教育長は常勤なんですけど、教育委員は非常勤だったりして、やっぱり事務局が持っている権限がすごく多かったりするんですね。そういった意味で、課題もすごく多いと思っていますので、この辺り、しっかりこれからも議論していく必要があるんじゃないかなというふうに思っています。

一方で、じゃ、法務省の人権擁護機関ではどうなのかということで、実際には、令和四年度の相談内容で、教職員関係で体罰が二百九十六件、その他が七千、あっ、ごめんなさい、三千七百八十三件、いじめが五千八百八十五件というふうになっているんですね。ただ、こういった体罰やいじめ等の重大事案であったとしても、告発、通告、勧告等の措置はほとんど行われていなくて、援助、支援で終わっちゃっているということで、人権擁護がほとんど進んでいないんじゃないか、こういうふうに思っています。

これまで、法務省の人権擁護機関と教育委員会の連携ということについては、この決算委員会にも委員をされている赤池先生がずっと衆議院時代からやっていらっしゃったということでありまして、私も大変同じ問題意識を持っております。そういった意味で、私からもこの辺りしっかり質問させていただきたいんですが、この法務省の人権擁護機関がとった措置について、人権擁護機関から教育委員会への連携、情報連携も行われていないという説明も今回受けたんですけれども、間違いないかどうか。法務省としても、許可、相談者が同意した場合には、文科省と連携して、情報を共有することで踏み込んだ措置と問題解決を図ることができるスキームを整備すべきだというふうに思いますが、この辺り、法務省、文科省、いかがでしょうか。

〇政府参考人(柴田紀子君) お答えいたします。

人権侵犯事件の処理結果を第三者に情報提供することは関係者のプライバシーへの配慮から慎重に検討する必要があり、学校を相手方とする人権侵犯事件において、法務省の人権擁護機関から関係者である教育委員会等へ直接処理結果を共有することは行っておりませんでした。もっとも、現状においても、人権侵犯の事実が認められた事案については、相手方たる学校から教育委員会等に対して処理結果の情報共有がされているものと承知しております。

この点、様々な先生方から学校における人権侵犯事案について積極的に対応するよう御指導いただいていることや、人権侵犯事件の処理結果を教育現場におけるいじめや体罰の防止に役立てるべきではないかとの御指摘があったことも踏まえ、文部科学省とも協議の上、今般、学校を相手方とする人権侵犯事件の調査において関係者として教育委員会等から聴取を行い、調査の結果、人権侵犯の事実が認められた場合に、当該教育委員会等から処理結果の情報提供の求めがあったときは、当該情報を提供することといたしました。

今後も、文部科学省との連携を深めつつ、子供の被害救済に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

〇政府参考人(浅野敦行君) 文部科学省といたしましても、今の法務省の御答弁のとおり、今後、教育委員会等に対して、法務局等からの人権侵犯事件の処理結果の情報提供について、先週、周知をいたしたところであり、引き続き法務省と連携して取り組んでまいります。

〇山田太郎君 ありがとうございます。

本当に赤池先生なんかの粘り強いここまでの働きかけもありまして、本当にやっと動き始めたという感じがします。

最後に、加藤大臣の方にお伺いしたいんですが、こういった教育委員会がなかなか問題を解決できない、人権擁護機関がなかなか解決できないということで、いよいよこども庁の出番かなというふうに思っております。自治体任せにせずに、あるいは行政の縦割りにせず、横割り、縦割りを打破するというのがこども家庭庁のいわゆる設置の目的だったというふうに思っておりますので、是非こういった問題に関するこどもに対するこの利益を守るための相談の機関をしっかりこども家庭庁としても位置付けて設置すべきではないか、その辺りの御見解いただきたいのですが、いかがでしょうか。

〇国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。

子供の権利が侵害された場合の救済といった個別事案の対応は、一義的には地方公共団体において行われるべきものと考えてございます。現に幾つかの地方公共団体においてそうした機関が置かれている例があると承知をしてございます。

昨年末に閣議決定したこども大綱におきましては、子供の権利が侵害された場合の救済機関として、地方公共団体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関の実態把握や事例の周知、これらを行い、取組を後押しすることとしてございます。

こども家庭庁としましては、まずは地方公共団体における取組が広がっていくよう、しっかりと進めてまいりたいと考えております。

〇山田太郎君 ちょっと私は残念な答弁だと思っておりまして、自治体任せではなくて、しっかりこども家庭庁が主体となってこどもたちに伴走してもらいたいというふうに思っていますので、引き続きよろしくお願いします。

私の質疑は以上です。ありがとうございました。

関連記事