2025.7.5
クレジットカード会社による表現規制との闘い

~概要~
ここ最近、表現の自由を守る闘いのフェーズが変わりつつあります。従来は、国や自治体といった「公権力による表現規制」との闘いでした。しかし、最近は、社会的影響力の強い「巨大企業による表現規制」との闘いという様相を呈してきました。その一つがクレジットカード会社による表現規制の問題です。
~クレジットカード問題~
2019年8月、決済代行会社からの要請で、COMIC ZINにおいて、成年商材の通信販売が停止に追い込まれるという事態が発生。ここから、山田太郎とクレジットカード会社による表現規制との闘いが始まりました。
2021年には、とある出版社から、マンガのタイトルや説明文に特定のワードが含まれている作品を削除するようにクレジットカード会社が要請してきたという相談がありました。要請に従わない場合は決済を停止する旨の圧力もかけられており、この事実をTwitterで発信したところ、複数の出版関係者から同様の警告を受けているとの連絡が届きました。クレカ決済が停止されると、ネット販売が継続困難になります。クレジットカードの国際ブランドは大手数社による寡占状態にあること、取引の継続のためには加盟店はアクワイアラーの警告を無視して事業を継続することは事実上不可能である場合が多いことから、このようなクレジットカードによる要請は、「金融検閲」だと指摘する声もあります。
~山田太郎の動き~
山田太郎は重大な表現規制問題であるとの危機感を持ち、出版関係者や有識者へのヒアリング、クレカ会社との折衝、関係省庁との打ち合わせ等を重ねてきました。しかし、どんなに調べても、決済停止の判断主体は不明なままでした。
そこで、2024年8月、サンフランシスコのVISA本社を訪問し、本社の担当バイスプレジデントらに直接確認。「取引については、合法、非合法の法的判断は行っているが、合法であるコンテンツ等に対する価値判断は行なっていない」、「VISA本社は、特定の用語(キーワード)を含むコンテンツについて、取扱ってはならない、と言った指示を出した事はない」との回答を、世界最大手のクレジットカード会社から得ました。これによって、”米国VISA本社は、クレカ表現規制を行っていない”ということをVISA本社の公式見解として、世に知らしめることができました。
~解決に向けたの5つのアプローチ~
山田太郎はこの問題について5つのアプローチを考えています。
1つ目は、優越的地位の濫用の一環としての対応です。加盟店にとってクレジットカード会社との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障をきたすため、クレジットカード会社は加盟店にとって著しく不利益な要請等を行っても、加盟店は受け入れざるを得ない状況です。また、一部の案件では、支払留保がなされ、支払遅延も起きていますので、優越的地位の濫用としての対処を公正取引委員会とやり取りしています。
2つ目は、プラットフォーム規制の一環としての対応です。クレジットカード取引は典型的なプラットフォーマー型ビジネスとされており、恣意的な取引拒絶(決済停止)による表現規制を防ぐため、透明性・公正性を高める制度等の構築についても取組みを進めています。
3つ目は、インフラ規制の一環としての対応です。クレジットカードは、サイバーセキュリティ上の重要インフラ、経済安全保障上の基幹インフラに位置付けられています。生活に不可欠な基盤については、民民の契約であっても、契約自由の原則を制限し、正当な理由なく決済を拒否することを禁止すること可能なはずです。この観点からも解決策を検討しています。
4つ目は、金融規制の一環としての対応です。諸外国では、クレジットカード会社は、銀行規制の一環として、認可制・免許制といった強い監督を受けています。しかし、日本は、割賦販売法により登録制という緩い規律を受けているのみです。政府が、クレジットカード会社による不当な取引停止に対して監督権限を行使できるよう、金融規制の対象とすることも金融庁に働き掛けています。
5つ目は、消費者保護の一環としての対応です。リアル(実店舗)では問題なく購入できるコンテンツが、クレカ決済できないためにネットでは購入できないというのは、消費者の利便性を著しく低下させるものです。消費者の利益を不当に害しているのではないかという観点から、消費者庁に対応の検討を要請しています。
クレジットカード問題は、現在進行中の問題ですが、上記の5つのアプローチを中心に、解決に向けて全力を尽くしています