2022.12.12
参議院本会議:消費者契約法、法人寄附不当勧誘防止法(2022年12月10日)
(以下未定稿です)
自由民主党の山田太郎です。
私は、会派を代表して、「消費者契約法及び国民生活センター法改正案、並びに法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」に対して、賛成の立場から討論をいたします。
今回の法整備は、旧統一教会による不当な寄附の勧誘による被害の深刻さが明らかになる中で、被害者を救済するとともに、その防止を図るために必要なものです。
もっとも、これは、被害者救済に向けた大きな前進ではありますが、あくまで、困惑した状態、マインドコントロールが解けた後の人の財産的被害の救済を主とした法律のつくりとなっております。
私は、2020年頃から、旧統一教会等の信者を親に持つこどもたち、いわゆるカルト宗教二世に対する宗教虐待問題を児童虐待の一類型として取り上げ、これまで15名以上の二世たちから直接話を聞いてまいりました。親の⾏き過ぎた信仰でこどもの権利が侵害されている状況を目の当たりにして、児童虐待、児童労働、養子縁組の濫用等、これらの実態から、このこどもたちを守るために何ができるかと議論を重ね、提言を行い、具体策を政府に働き掛けるなど、積極的に活動を進めて参りました。
その結果、本年10月、旧統一教会問題に関して設置された「関係省庁連絡会議」において、重要な申し合わせが行われました。そして、その申し合わせに基づき、「児童相談所等が各種相談に応じる際、その内容が宗教に関係することを理由として消極的な対応をしないこと」を要請する通知が、全国の地方自治体や教育委員会等に発出されました。カルト宗教による虐待を解決するための着実な一歩であります。
勇気を出して声をあげた当事者たちによって、カルト宗教の家庭のこどもたちは、家庭に居場所がなく、交友関係も制限され、精神疾患を患い、生きづらさを抱え自殺未遂をするケースも多いという実態が判明しました。この様なこどもたちの救済は、児童相談所だけでできることではありません。被害にあうこどもたちが容易に相談し、繋がることができる支援機関が必要であり、それらと児童相談所が適切に連携できる体制を構築することが重要です。また、カルト宗教や親の虐待から緊急避難できるシェルターの整備やその法的な担保、財政的な支援、全国的な拡充が直ちに必要だと考えています。
来年4月には、こども家庭庁が創設され、こども基本法も施行されます。これらは、全てのこどもについて「個人として尊重され、その基本的人権が保障されること」、「適切に養育されること」、「生活を保障されること」等を基本理念としています。こどもを単に保護の客体として扱うのではなく、人権・権利の主体として捉えて、日本の政治・社会を変えていかなくてはなりません。独立した人格としてこどもの意見が尊重され、その最善の利益が実現されるためには、どのような状況にあろうとも、こども本人が意見表明できること、自己選択・自己決定できることが重要です。
改めて、これまで以上にこども本人の意見に耳を傾け、何が被害の本質なのか、それに対して社会や政治には何ができるのか、私は、児童福祉法の改正等も視野に入れながら、引き続き真摯に向き合っていきたいと考えております。
その上で、両法律案に賛成する理由を申し上げます。
第一に、今回の法案では、旧統一教会による被害に苦しんでいる方々の救済のための措置が拡充されている点です。
不安をあおられたことなどで困惑させられ、その状態で献金した場合、困惑状態から脱するには時間を要することが多く見受けられます。そのため、正常な判断ができる状態に戻った時点では、すでに取消権の行使期間が過ぎている事例もあります。今回の取消権行使期間の延長は、そうした実態を考慮した被害者のための救済措置であると考えます。
また、こどもや配偶者等の扶養債権に基づく債権者代位権に関する特例など、これまで以上に、被害者側の実態に即した措置が整備されています。そもそも、現状では、債権者代位権を行使する場合、その債権の履行期が到来している必要がありますが、今回の法整備では、特例として、家族の生活費用やこどもの養育費については、将来発生する分について寄附の取消や返還請求ができるようになり、被害者の家庭の救済に対応することができるようになります。
さらに、不正な寄附の勧誘行為の実態が様々であることを踏まえて、規制する対象も広げることで、被害の防止に対応した措置も強化しています。不当な勧誘行為で寄附者を困惑させる禁止行為には、いわゆる霊感商法とともに、霊感等による知見を用いた告知による寄附への勧誘を加えています。また、借り入れ等による資金調達の要求も禁止しています。
旧統一教会では、寄附の勧誘に際して、被害者を困惑させるとともに、不安をあおったり、不安に乗じたりして、現実感や価値観を変えさせられ、精神的に自由な判断ができない状況にした後に、むしろ進んで寄附するようしむける、いわばマインドコントロールが行われているという指摘があります。更に、旧統一教会であることを明らかにしないで近づく正体隠しや、身ぐるみをはがし、生活の維持を困難としてしまう寄附の勧誘等の実態の指摘もあります。このような、社会的に許容しがたい悪質な寄附の勧誘行為の禁止については、これに対する勧告、命令等の行政上の措置を導入するとともに、行政処分に違反した場合の罰則も設けております。
加えて、寄附の勧誘に当たって、多額の寄附で本人や家族の生活の維持を困難にすることがないよう配慮する義務も措置されております。
これらの措置等によって、不当な寄附の勧誘による被害の未然防止機能が強化されるとともに、不当な勧誘が行われた場合の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、債権者代位権に関する特例と相まって、被害の事後救済機能も強化されます。
それ以外にも、不当な勧誘により被害を受けた寄附者等への支援のために、法テラスや関係機関・関係団体等の連携が推進されます。
法案に賛成する点として、第二に、まっとうな寄附勧誘を行っている団体が持つ懸念等に対応した点です。憲法上認められた財産権や信教の自由を侵害することを避けつつ、宗教教義等を隠れみのとして財産を巻き上げるような悪質な寄附等を対象とする内容となっており、懸念を払しょくするものになっています。
第三に、見直し規定が置かれている点です。もっとも、施行後2年を目途とした見直しに修正をした規定となっていますが、法案成立後直ちに、カルト宗教2世問題の実態の調査と新法による救済の実効性の検証を開始し、必要な見直しに関しては、2年を待たず、可及的速やかに措置する必要があると考えております。
以上、両法律案に賛成する理由を申し述べました。
もちろん、今回の法的な措置が被害者救済に対して、けっして完璧なものではないかもしれません。必ずしも全ての被害者の声を救い上げられていないかもしれません。しかし、今回、限られた時間の中で、与野党が真摯に向き合い本法案をまとめることができたことは、被害者救済に向けた大きな一歩であると思います。
これまで、この問題を放置した政治の責任は大きいと思います。そして、今回、被害者の方々の現在進行形で進む凄惨な実態を知れば知るほど、被害の救済と防止のために、一日も早く、今回の法案を成立させることが必要だと考えます。そして、法案成立後、直ちに施行され、また、被害実態に即した執行ができているか検証と見直しを行い、しっかりとフォローアップしていくことが重要です。
今回の法律を成立させた後も、冒頭に述べました、虐待に合うカルト宗教2世のこどもたちの被害救済に向けたあらゆる策を誠実かつ真摯に取り組んでいかなければなりません。そのためにも、まずは、この法案を成立させることが大切だと考えます。
最後に、議員各位に本法案への賛成をお願い申し上げまして、私の討論といたします。ありがとうございました。