2023.1.18

海外視察報告② イスラエル(少子化対策)編

■イスラエルの少子化対策

 イスラエルでは人口が増え続けています。一方1人当たり国内総生産(GDP)は日本を上回り、先進国でありながら、2020年の合計特殊出生率は2・90(日本は1・30)に達しています。2010年から2019年までは3・00以上をキープ、OECDでも2位のメキシコ以下を引き離すトップの数字です。その理由は大きく2つあります。

第一に、宗教(伝統)です。イスラエル人口の約74%以上を占めるユダヤ人は子どもをたくさん持つことは旧約聖書にある神の戒律に従うこと、幸せは子どもが運んでくるとも信じられています。また、子どもをたくさん産むことは自分たちのコミュニティの存在につながる大事なことなのです。イスラエルの特徴として、他の先進国とは異なり、高い教育を受けた女性が多くの子どもを産むという傾向があります。ユダヤ教の超正統派とイスラム教徒の社会では、7、8人の子どもがいる家庭はざらです。

第二に、政策です。人口増加にはユダヤ人の移民政策の影響も大きくありますが、国として子育て政策にも力をいれていることで、安心して妊娠・出産・子育てができるといいます。特に、不妊治療は1980年から開始され、その技術が高いことでも有名です。政府が45歳までの不妊治療に多額の資金を提供している為、保険証を持っていれば薬代の3割負担以外は不妊治療、人工授精、体外受精、出産、全てを初めから無料で行う事が出来ます。1人あたりの不妊治療回数が世界で最も多くなっています。また、子ども1人から6人まで子ども手当が支給されたり、シングルマザーにも手厚いようです。3歳からの公立幼稚園費用は無料。こうした政策の結果、40歳以上の女性が子どもを産む割合も世界で最も多い国のひとつです。

高出生率にはイスラエル特有の社会背景が深く関係することがわかりました。一方で、こどもを育てたい人を国が全力で支援する政策、こどもを社会皆で受容する文化については日本も見習っていくべきだと強く実感しました。

上から

  • 聖墳墓教会(エルサレム旧市街にあるキリストの墓とされる場所に建つ教会堂)
  • 岩のドーム(イスラム教の第3の聖地であり、「神殿の丘」と呼ばれる聖域)
  • 岩のドーム正面
  • 嘆きの壁(ヘロデ大王時代のエルサレム神殿の外壁のうち、現存する部分。神殿はユダヤ教で最も神聖な建物)
  • 旧市街から見た街並み

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