2023.1.18

視察報告⑥ イギリス(こども・若者) Ofsted/オフステッド(教育水準局)編

写真)Ofstedはロンドン市内中心のオフィスビルの中にある。コミッショナーが教育省内にあり、Ofstedが独立した場所にあるとは意外だった。

今回のOfsted(オフステッド/教育水準局)はコミッショナーと並んで、私が最も直接訪問したかった所の1つです。オフステッドとは、独立した第三者監視機関で、子どもに関わる施設を全てモニタリングの対象としています。

私が事務局を務めるChildrenFirst勉強会で実施したこども政策アンケートでは、「公教育と保育の質の向上」が最も多い要望でした。また、社会的養護下にある子どもの養育環境、性的虐待の実態等の現状透明化されておらず構造的な問題があります。英国の独立した監査システムがどのように機能しているかを調査し、日本型のあるべき姿を探るために、訪問しました。

写真)Amanda局長と同僚のHelen Humphreysさん。局長は金融分野出身という異色の経歴。局長からの大きな視点からの話に加え、現場を見ているHelenさんからは、社会的養護 施設の監査について、より具体的な現場の話を聞いた。職員は監査時には出張し、それ以外はリモートワークがほとんどだそう。オフィス内は職員がほとんどおらず静かだった。

写真)ロンドン視察の移動は地下鉄。ロンドンの地下鉄はクレジットカードのタッチで乗車できるので便利。

英国でのオフステッドは、1948年に自治体児童サービス部の評価制度としてスタートし、2007年に現在のオフステッドになりました。独立した第三者機関で、局長は国王に任命されます。年間1.5―2万件の監査を実施しています。監査の対象は、以下の図の通り、学校、就学前施設だけではなく、フォスタリング機関や養子縁組あっせん機関、刑務所その他の矯正施設における教育等、税金が一部でも使われている、こどもに関わる機関はすべてモニタリング対象です。

オフステッドは独立した機関です。しかし、英国で子どもに関することは教育省の所掌なため、教育省との連携はあります。また、オフステッドは質の高い仕事と健全性で国民から信頼されている機関の一つです。96%の現場が「監査が役に立った」と回答しており、詳細なフィードバックをもらえることで現場は改善しやすいとのことです。苦情などは窓口で受け入れ、それにより再調査を行なった上で評価を変えることもあるそうです。監査結果は全文、ウェブに公開されます。

オフステッドの評価方法は以下の通りで、監査の結果は①優秀、②良好、③良姜にあるには要改善、④不十分・至急要改善の4段階で評価されます。

オフステッドが独立した経緯としては、ピンダウン事件(1989年)が児童ホームで発覚した際に、自治体監視で発見できなかったことから自治体の施設を自治体で監視することの限界を感じ、独立性が必要不可欠であると考えられるようになったそうです。

私は日本においても、オフステッドのような文科省から独立した児童社会サービス監査国家機構が必要だと思っていますが、与党で賛成する議員はほとんど存在せず、素地がない現在から一足飛びに実現することは相当難しいと思っています。英国でそのあたりの難しさはなかったのか、率直に質問してみると、

「英国はどの国よりも独立した組織の数は一番多いです。現在も20の組織が政府から独立している。そして、オフステッドの説明責任は議会と女王にあり、大臣には報告義務はありません。どのくらいを中央で、どこまで地方であるかという議論はあるが、英国では中央に集中しすぎているという話もあります。しかし、過去20年間にこどもの大きな事件があり、政府にプレッシャーがかかったこと。高い質の仕事と、健全性があるから国民から敬意をはらわれていること。政府はオフステッドのエビデンスをもって自分たちを正当化できるし、うまくいかなかったら自分たちの責任から逃れられるので、オフステッドのことを助かっていると捉えています」

という回答でした。

■視察を終えて

こどもに関わる施設を第三者が監査し、それを全国民に公開する。という制度は、話を伺う前から優れているとは思っていましたが、詳細を伺い、非常に感動しました。日本と英国で環境は違いますが、一歩でも前に進むよう取り組んでいきたいと思います。

英国番外編(エリザベス2世女王陛下の崩御)

私が、英国を訪れた翌日に、英国エリザベス2世女王陛下が崩御されました。9月9日、バッキンガム宮殿の沿道には別れを惜しむ国民とメディアが押し寄せていました。ウェストミンスター宮殿を始め、あらゆる施設で半旗が掲げられておりました。

新聞、テレビ等のマスメディアだけでなく、ロンドンの街中のメディアで追悼の意が表されておりました。

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