2023.1.18

視察報告⑧フランス(少子化対策・子育て政策)編

写真)フランスの全国家族手当金庫(CNAF)は他の省庁とは独立した単独のビルです。

フランスは、過去に少子化等による人口減少を経験しています。以来、家族への現金給付、税制や年金における多子世帯優遇、妊娠出産での医療費軽減や公共交通サービスでの割引など様々な家族政策を実施してきました。そして、2000年代後半には出生率2.0前後まで上昇し、現在も1.85、希望する子どもの数も2.4人という数字をキープしています。

日本では少子化が喫緊の問題なため、出生率を高く維持している要因を探り、また若者の将来不安の解消のための為の施策としても知見を得る目的で訪れました。

お話を伺ったのは、フランスの全国家族手当金庫(CNAF)国際部長のオリビエ・コルホベックス氏です。

写真)オリビエ・コルホベックス氏との情報交換の様子。部長とともに同席してくださったのは、同僚であり人口動態研究の専門家。全国家族手当金庫の施策は、人口動態やデータに基づいて実施されており、まさにEBPM。

フランスにおける少子化対策・子育て政策

CANAFとは、こどもや家族に関する給付を一手に担う機関です。各県に家族手当金庫(CAF)が設置されており、各種手当の現金給付や保育施設の設置や自治体の補助をし、現物給付をします。

国レベルの役割としては①法的手当の提案、②法的措置以外の提案(例えば、ウクライナ難民のデイケア等法的根拠がなくともCANAFが独自に決定する施策もある)③政治的役割=理事会は従業員側と雇用者側から選出され法案に意見する。3つがあります。

総予算955 億ユーロ(約13兆円)のうち、財源の6割は企業負担という驚愕の数字です。子の総予算のうち、56 億ユーロ (6%) が社会活動プログラム (法外基金) で自治体が独自に使用している金額だそうです。

ニーズに合わせたきめ細かい支援

フランスでは養育費を受け取っていない、又は全額受け取っていない親へ立替払いも実施しています。未払い養育費回収や親子の再会の場も提供しています。これは、カナダから政策を学び導入されたそうです。

主な家族給付は14種類あり家族手当、家族補足手当、新学年手当、育児分担手当、保育方法自由選択補足手当等です。保育サービス・就学前教育は12種類あり保育ママ、複合保育施設、ミクロ保育所等があります。給付の種類と金額は、所得、婚姻、子どもの年齢、居住地等を入力していくと、ウェブ上でシミュレーションができるため、各家庭のニーズにあった手当を簡単に調べることができます。また、地域のサービスも検索することができるため分かりやすい一元的な情報が発信されています。フランスは第2子からだけ家族手当をもらうことができるため、複数の子どもを育てることがインセンティブになります。

■少子化対策に効果的な3つのこと

少子化の原因が複雑で、様々な要因が絡み合っています。私から、その安価でも少子化対策にもっとも効果的だと思う施策をあえて3つあげるとするとなんですか?率直に伺ったところ、あくまで部長の個人的な意見としてですが、3つの示唆をいただきました。

第一に、「社会が、女性が働きたいことを受け入れ、仕事を持てるようにサポートすること」です。働きたい女性の障害を取り除くということは、日本においても非常に重要だと思います。

第二に、男性育休の義務化です。フランスは義務化で100%取得されています。日本でも男性育休の取得を促進するため、法改正をし、男性が子の生後8週間以内に4週間まで休業を取得できる「出生時育児休業(産後パパ育休・男性版産休)」制度が2022年から導入されました。通常の育児休業と合わせると、子どもが1歳になるまで最大4回の育児休業の取得が可能になります。しかし、取得率が上がらない背景の1つとして職場や男性に根強く残る時代錯誤的な意識が挙げられると思います。そういった意識改革も合わせて進めていくことが必要だと考えます。

第三に、養育費の建て替え払いです。離婚やシングルマザーの増加、養育費の未払いは実際に増加しており、それを解決することが重要だと言います。そして、家族政策は人口動態を理解して作られるべきであるという意見にも重みを感じました。私も、昨年まで内閣府大臣政務官として養育費の未払いの解消に向けて取り組んでいましたが、引き続き、日本においても進めていきたいと思います。

全ての施策が人口動態やデータに基づき実施され、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。 証拠に基づく政策立案)が推進されていることも大変印象的な視察となりました。

写真)秘書も含めた集合写真

フランスの連帯保健省の視察は、先方の担当者の体調不良によりキャンセルになってしまい、帰国後オンラインで会議を実施しました。そちらの報告は別途ブログにて報告いたします。

その他、今後の報告予定です。

■タイトル:視察報告⑨イスラエル(デジタル)スタートアップ政策編

タイトル:視察報告⑩ドイツ(デジタル)国立国会図書館編

■タイトル:視察報告⑪フランス(表現規制)文化庁編

■タイトル:視察報告⑫フランス(デジタル)ダッソー編

■タイトル:視察報告⑬フランス(デジタル)デジタル局編

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