2023.5.10

【韓国視察レポート②】韓国の児童養護施設を視察。こどもを大切にした施設の在り方とは?

2022年12月21〜23日の韓国視察で、2つ目に訪れたのがソウル市城東区にある児童養護施設のイドゥン・アイ・ビルです。ここでは、1950 年の設立以来、赤ちゃんポストに預けられた児童や要保護児童などを保護するとともに、養子縁組の支援をしています。なるべく施設でない家庭の雰囲気をつくることに注力しているという施設は、大変先進的で学びの多いものでした。

さっそく、視察の様子を写真とともにお伝えします。

入り口の様子。建物は4階建てで立派でした。「イドゥン・アイ・ビル」は韓国語で〈優しく、善良に生きることを願う>という意味があるそうです。

2022 年1月現在、施設では0~19歳の児童約 46 名を保護しており、学習指導の他、退所後の自立支援、実親との関係維持支援等を行っています。定員は50名ですが、子ども達の快適な生活を第一優先に考え、あえて定員を埋めていません。しかし、ソウルでも待機しているこどものこどもは多いそうです。これまで、施設に入所した子どもは1600名以上と、多くのこども達を救っています。

実際のこども達の部屋の様子です。運営資金の殆どが寄付でまかなわれているため資金運用の自由度が高く、こども一人ひとりに手厚い支援ができています。全席エアコン付きの個室を利用していて、希望者にはPC、テレビ、ピアノやヴァイオリンもついています。ほとんどの個室には電子ピアノがついていました。韓国では音楽に力を入れている家庭が多いそうです。また、学習塾、体育教室、美術教育やメンタル治療等も手厚く行われています。

政府の補助金では建物の運営費くらいにしかならないそうですが、塾代やメンタル治療等は全額寄付で賄っています。それらで、寄附だけでも年間4億ウォン集まるので、塾代等で年間5000万ウォン、精神治療費は6000万ウォンかけていると聞き、大変驚きました。

養子縁組重視はもちろんだが、養子に行けない子ども達の場合はメンター制度があり、それを希望する家庭もあるとのこと。メンターになってくれる家庭も含めて支え合うことに力を入れていました。

クリスマス会の準備の様子です。養護施設にいるこども達だけでなく、毎日一般のこども達に開放している学童に来るこども達にもクリスマスプレゼントが用意されていました。

特徴として、施設長が「とにかくこどもの希望を聞くことを大切にしている」とお話をしていたことが印象的でした。「普通のこども達がしてもらうようなことをしてあげたい」という思いから、クリスマス会を開いてこども達が欲しいプレゼントを用意したり、こどもの声に耳を傾けた結果として、個室を用意するようにもなりました。

また、2階は地域の交流拠点にもなっています。そうすることで、日本に比べて養護施設が開かれた空間になっており、地域の人々からの理解を得やすい仕組みになっていました。大学生もきてこども達に勉強を教えたりと、塾のようにもなっています。もともと外国人の親御さんが多い地域だったため、はじめは託児所として2階を活用し始めたことから、今の形になったそうです。

施設長がとても愛情あふれる方であることがとてもよく伝わってきました。これは、「とにかくこどもたちの希望をきく」という代々の施設長の考え方が今日にも受け継がれている証拠だと思います。

日本でも、このような質に着目した養護施設の在り方について、しっかりと議論・検討し、全国で広げていく必要があると強く感じました。

写真)院長のリソンリョンさんと記念撮影。

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