2023.8.30
こどもと保護者が向き合える時間を増やす!荷物のいらない保育園「キートス」にて保育士体験
写真)説明をして頂いたキートス統括園長の日向美奈子さん
7 月31 日、保育士体験と、保育現場からのヒアリングのため、千葉県千葉市の「キートスチャイルドケア桜木」を訪れました。
「キートスチャイルドケア」は、千葉県の千葉市と成田市に合計 11 園開園しています。
こちらの園には、生後57 日〜5 歳児のこどもたち約60 名が在籍しています。
◾️体験・視察に至った理由
保育士体験・保育園視察を行うに至ったきっかけは、ある保育士さんの言葉でした。
「山田さんは、こども政策を推進してすごいとは思いますが、保育士の待遇改善やこども政策について語る政治家のうちいくらの人が、ちゃんと保育の現場に来ているのでしょうか。視察でいいところだけ眺めて帰る議員はいると思いますが、来るなら保育士体験までやってもらわないと現場のことは分からないと思います」と言われ、今回このような体験をすることにしました。
◾️ 保育園の全体的な課題背景
保育の現場には、様々な課題が依然として多くあります。
まず、保育士不足というのが大きな課題として想像しやすいと思います。その中で、保育士さんは、いかに保育以外の負担を減らして、保育業務に注力することができるのか。一方で、仕事と子育ての両立で忙しい保護者目線では、保育園に関わる負担をいかに減らして、こどもたちと触れ合う時間を確保することができるのか。保育士と保護者それぞれが抱える課題を解決して、保育園や家庭などにおいて、こどもが健やかに育つ環境を作るのに重要なのです。
訪問した保育園では、保護者の立場に立った新しいサービス、業務のDX化などにより、上記の課題解決に取り組んでいました。具体的な取り組みは、こちらのブログで詳しく説明していきます。
保育の現場において、保育園自体ができる取り組みは何なのか、国や行政がどのようにそれをサポートすることができそうか。今回の視察・体験ではこれらについて学ぶと共に、こども・保育士・保護者それぞれの立場で実体験に基づいた気づきを得ることができました。
◾️体験させて頂いたこと
まずは、保護者の方との会話をしながら、登園してくる園児をお預かり。アプリを使ってデジタルで登園管理をします。
この保育園では、こどものお便り帳、欠席連絡、お迎え者の登録など、保護者とのやり取り全てがアプリ内で完結します。また、保育の様子も、アプリ内で写真が共有されます。後半で詳しく紹介します。
早速自己紹介をして、こどもたちとお遊戯の時間です。先生の動きを真似していくのが意外と難しく、苦戦しました 。
次は、夏祭り用のやきそば弁当を作ったり、塗り絵をしたり、ブロックで遊んだり。
私は、他の先生のお手伝いもしつつ、こどもたちに混じって一緒になって遊んだり、先生の話をおとなしく聞いたりしていました。
工作ではこどもたちも先生と一緒にハサミを上手につかったり、ブロックで各々クリエイティブなものを作ったり。こどもたちの創作意欲には圧倒されました。
外では、水遊びをしました。特に、暑いこの季節の中でする水遊びに、こどもたちは大はしゃぎ。園庭では熱中症にならないよう、日陰をつくるなど、工夫されています。保育現場での水遊びでの事故があってから、監視だけのための保育士配置も必要になりましたが、動き回るこどもを見ると、現在の配置基準の厳しさを肌で感じました。
全身動かして元気いっぱいのこどもたちです。半日経つと、ようやく私に慣れてくれたようです。
最初抱っこしたら泣いてしまったのですが なんとか腕の中で寝てくれました。
いっぱい遊んだあとはごはんの時間です。栄養満点の給食がこどもたちの健康を支えます。
最近は外国籍のこどもが増え、宗教食への配慮が今後の課題だそうです。
保育園内には見守りカメラが設置されています。後に紹介する「こども見守りデバイス」とともに、事故を未然に防ぎます。
◾️先進的な取り組み
① 「荷物のいらない保育園」
こちらの保育園の代名詞にもなっている、「荷物のいらない保育園」。認可保育園でありながら園で使用する荷物を保護者が持ち込みをする必要がありません。
通常、保育園ではオムツ、お尻拭き、エプロン、タオル、歯ブラシや布団などを保護者が準備することとなっており、仕事と育児を両立させる保護者の負担になっていました。
これらの用意を保育園側が行うことによって、保護者の、金銭的負担や毎日の通園準備に使う時間が減り、こどもたちと向き合う時間を増えるのです。
重要なポイントは、保護者負担がゼロだということです!!!家庭の状況に関わらず誰でも利用することができます。これは、SNS だけで採用活動を行うことによって、合同説明会や人材採用でかかる年間コスト3000万円を削減し、ここで浮いた経費を充てているからです。周囲からは、「保育の質を下げて、費用を捻出している」などという謂れのない批判もあったようですが、企業努力の結果によって、よりよいサービスを提供している点は、素晴らしい思います。
また、企画当初は、市の有識者などから「親を甘やかすことに繋がる」との批判もあり苦労されたそうです。私は、「親はこどもためにこれをすべき」というような価値観を押し付けることなく、負担軽減のための取り組みはどんどん進めるべきだと思います。実際に、こどもたちや保護者からも大変高い満足度を得ているそうです。
○コンセプトムービー「ぼくのて」
https://www.youtube.com/embed/Qx7GsiJviu0?si=IlT1ThGAJnnIt09N
② ミールキット
夕食一つ作るのにも、子供達のために栄養のある献立を考えたり買い物に行ったりなど、忙しいお父さん・お母さんたちが限られた時間中で行うには大変な仕事です。
こちらの保育園では、家族で食べられるミールキットの販売を行っているそうです。仕事帰りに保育園にこどもを迎えにきた時に購入できるこのミールキットで、管理栄養士監修でおいしく栄養バランスが取れる夕食を作ることができます。忙しい保護者のみなさんの負担を少しでも軽減することで、これまた「こどもたちと向き合う時間」を増やすことに繋がるのです。
ミールキットによる保育園側の利益はなく、大人1人500円、小人1人250円ほど。
「保護者の方たちがどれだけこどもたちと触れ合えるか。それによって、こどもたちの笑顔を増やせるか」について、こどもたちが保育園にいない間のことも真摯に考えてくださっているのだと感じました。
③ アプリ完結の保護者との連絡
通常紙や手書きのノートで行われることの多い、保育園からのお便り、保育士さんが書くこどもたちの成長記録や、写真。各々がバラバラに配られて整理が大変だったり、忙しくて全てに目を通すのが難しかったりすることもあるか思います。しかし、これらの保育園からの連絡物は、保護者の方が、親元から離れた幼稚園でのこどもの様子を知ることができる大切なツールです。
こちらの保育園では、保護者の方は全てアプリで確認することができます。保護者は、仕事帰りの道中に簡単にこどもたちの様子を確認し、そのままお迎えしたあとに「今日は〇〇をしたんだね」とこどもたちとのコミュニケーションをとることができます。このアプリも、「忙しい中でも保護者の方がこどもに向き合う時間を増やす」手助けになっているのですね。
また、アプリ内の相談窓口から、オンラインで保育士さんに相談することも可能です。電話での連絡とは違うので、空いているスキマ時間にパッと相談できます。
ミールキットも、こちらのアプリから買うことができます。在庫があればお迎え時にその場で買えるところが、保護者目線で素晴らしいと思いました。
このように、コミュニケーションコスト減る導線が作られている工夫は、一つずつは細かいことかもしれませんが、周り周って、健やかなこどもたちを育てる保護者と保育士の良い関係性構築に繋がっていくのです。
④ こどもの見守りデバイス
こちらのデバイス使ってこどもたちのバイタルを測り、体調管理をする取り組みも試験的に行われています。
「脈拍」「血圧」を測ることによって、睡眠中の事故や(保育士さんはお昼寝中もこどもたちに異常がないか、8分おきに記録を取っているそう)、熱中症などの、「体調の変化」に、いち早く気づくことができます。また、ストレス値を計測して、ストレスが高い時はどのようなことが起こっているかを把握することもできます。さらに、これから継続してデータを取っていくことによって、お子さんの発達障害の早期発見や、未だされていない乳幼児突然症候群の原因解明にも活用できるのではということでした。
こちらのデバイスは、こどもたちだけではなく、先生方がつけるメリットもあります。例えば、ストレス値が少し高い状態の時、自分でそれを把握することによって、こどもたちとの接し方を気を付けることができます。客観的なデータで自分の状態を自覚することが、働き方の改善に繋がったりもするのです。
⑤ 情報発信(SNS採用、ブログ)
こちらの保育園では、TikTok などのSNS を活用した採用も行っています。すでに30 名以上の方がTikTok 経由で働いているそうです。動画を通して、職員の自然のやりとりが見れたり、リアルなやりとりを現職員とすることで、「自分もこういう職場で働きたい」とイメージすることができるようです。
⑥ありがとうメッセージを送り合う社内SNS
感謝や称賛を気軽にシェアすることができる「Unipos(ユニポス)」というサービスを導入したことによって、離職率が低下したそう。「この先生こんなことあったんだ!」と同僚の働きを知り、「良い仕事をした」という感謝や称賛の気持ちを共有し合うことで、働くことへのモチベーションに繋がります。
◾️国で解決すべき課題
現場の保育士の皆さんによる「国にこれをやってほしい」という声も直接いただきました。視察・体験前には見えていなかった、現場にいるからこそ見える、新しい視点の課題を共有して頂きました。
① こどもに関する手続きのDX化
これまで勤務した実績のある全ての各保育園から在職証明書を紙で毎年取り寄せる必要があったり、役所との書類送付をFAXで行なったり、給付金の申請を紙で行なったり。定員の空き情報が透明化されていないことによって、希望の保育園への入園が遅れたという事例もあります。
保育園施設と役所と保護者のコミュニケーションには、メールや郵送のやり取りが中心であり、DX化よって手間を省ける点がまだまだたくさんあります。また、煩雑な書類の作成に追われることで、こどもたちと接する時間が削られる現状もあります。
神戸市で行われた調査では、各就学前施設における各種申請業務は月に20時間、各施設から市に対する問い合わせは年間4000件、市における各種申請にかかる審査業務が年間7400時間にも及びます。
私も党内でこどもDX小委員長の責任者として議論を進めていましたが、具体的な手続きひとつずつをしっかりと見直し、改善していく必要があると、改めて感じました。
②巡回指導の代わりの窓口設置
抜き打ちで役所から巡回指導が来る際に、通常の保育業務の行う中で対応することが難しかったり、来る担当者によって指導内容が変わったりということがあるそう。「巡回指導を何度も行うのではなく、専門家がいる相談窓口を自治体に設置し、保育園側がいつでも専門家に相談をできるようにした方が、現場の状況改善に繋がるのではないか」という声をもらいました。
③ 保育士の離職率低下に向けて
こどもたちの成長を見守るという「やりがい」のある仕事の一つともされる保育士さん。しかし、やりがいがあるからお給料は低くても良いよねということではありません。未来を担うこどもたちを育てる保育士さん、社会のエッセンシャルワーカーが気持ちよく働けるよう、給与アップや働きやすさ改善を目指して参ります。
今回、こどもたちや保育士さんと1日過ごすことで、これまで永田町では見えていなかった多くの気づきを得ることができました。「こどもは永田町や霞が関にはいない。地方自治体の現場にいる」そのことを、改めて強く感じた1日となりました。今後も、積極的に現場にでかけ、政策反映をしていきます。
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