2021.12.10

子育ての孤立に寄り添う、日本版ネウボラの推進を!

写真)共同事務局を務める自見はなこ議員、私(山田太郎)

11月24日、私(山田太郎)が事務局を務める第25回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。今回は「子育ての孤立に寄り添う」というテーマでお二人の講師をお招きし議論しました。

  1. 「伊達市版ネウボラ事業―妊娠期からの切れ目のない支援、そして親子が笑顔になる架け橋―」(伊達市教育委員会こども部ネウボラ推進課 課長 畠香苗さんより)
  2. 「子育てママが感じる孤立感の実態」(一般社団法人ママの孤立防止支援協会 代表理事 三浦りささんより)

伊達市版のネウボラ事業

まず、伊達市教育委員会こども部ネウボラ推進課の畠課長より、伊達市で推進されているネウボラ事業について、成り立ちや組織構造について、先進事例を発表いただきました。


写真)伊達市教育委員会こども部ネウボラ推進課 課長 畠香苗さん

福島県の県都福島市に隣接する伊達市は、少子高齢化が進んでおり、高齢化率は35.9%、年間出生数は280名、合計特殊出生率は1.31と県内1低い現状があります。

伊達市版ネウボラ事業は、H28年4月より児童福祉部門が主管課となり保健部門と本格的に協議を始められたそうです。この協議が伊達市版ネウボラ事業に与えた影響は非常に大きく、どのようなコンセプトで事業展開をするかということを、保健・福祉の部門の垣根を取りはらい利用者目線で考えることにつながりました。

またこの協議の結果、連携もスムーズとなり、母子保健を担当する保健部門が主管課となった方が良いという判断で、健康推進課が主管課となり平成29年4月に子育て世代包括支援センターを開設し、伊達市版ネウボラ事業をスタートしました。

しかし、保健衛生部門・児童福祉部門のどちらが主管課となるかは常に議論を重ねており、軌道に乗ってきたネウボラ事業をさらにステップアップするために、令和3年4月から組織改変により市長部局から教育部局に移り、且つネウボラ推進室からネウボラ推進課に変化しています。

この組織改編により、子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援拠点を一本化するという国の流れにも沿った形となり、こども庁の考え方そのものの体制となりましたが、「国の流れに沿っていく」という考えの下ではなく、「実際に動きながらやりやすい方法を検討したらこうなった」というような自然な流れであったとのことです。

伊達市版ネウボラ事業の7つの取り組み

①切れ目のない支援を行うための職員の配置

②子育てを社会で受け入れる取り組み

③産後の支援の強化

④きめ細やかな相談機会の充実

⑤こどもの発達を促す取り組み

⑥子育てを楽しむしくみの構築

⑦関係機関のネットワークの構築

これらの取り組みを考える際に大切にしていることは以下の2点だそうです。

“何かある”親子のみではなく、“すべての”親子を対象とすること

・しっかり育った子どもは成人後の健康のリスクも下げるという予防の視点を重視すること

ネウボラは地域の実家になりたいと考えておられ、どんな時でもフラッと立ち寄れる場所・人でありたいとのことです。いつか子どもたちが大きくなった時に、お父さんお母さんが「あの時は大変だったけど、子育てって楽しかったよね」と振り返っていただけるような支援を行なっていくことを目指して取り組んでいるそうです。

また基本的な考え方の2本の柱のひとつ、「切れ目のない支援」には“人の切れ目”を作らない、“事業の切れ目”を作らないという2つの視点があります。
 

①切れ目のない支援を行うための職員の配置は、“人の切れ目”を作らないための職員配置です。

保健師は妊娠期〜0歳児までの支援を強化していますが、一人あたり50〜120名程度を受け持ち、その他小学校就学までの子育て家庭も受け持つようになります。一番大変な乳児期にしっかり関係性を作っておくと、その後は保健師からアプローチしなくても自ら声をかけてくれることもあり、支援をしやすくなっています。

しかし保健師は健康推進課内で生活習慣病対策も行なっているため、やはりマンパワーの確保が課題となっております。

また、その他課題となるのは専門職の確保です。子ども家庭総合支援を立ち上げたもののまだ本格稼働には至っておりません。全国的にも親子を取り巻く課題が非常に複雑化していることから、社会福祉士、精神保健福祉士、心理士等を確保したいと考えているが地方ではそもそも人材が少なく難航しています。

従事する業務も、寄り添いながらアセスメントを行ない指導ではなく支援をしていくというかなり高度な技術を求められるため、研修の充実が必須であると考えています。

子育て支援というと母親の支援を中心に考えてしまうのですが、やはり父親をどう巻き込んでいくか、参加を増やしていくかというところも課題です。

また最後に、伊達市版ネウボラ事業がスタートして5年目となる現在、見えてきた課題と今後の取り組みについても共有いただきました。

今後は地域の子育て機関との連携を深め、地域全体でネウボラの理念を理解し、親子を支援する考え方の醸成を促していくことで、市全体で子育てを支える地域づくりを目指していきたいと考えているそうです。

子育てママが感じる孤立感の実態

まず、一般社団法人ママの孤立防止支援協会の三浦さんより、「ママの孤立」について現場の目線から実態共有とこども庁へのご期待をお寄せいただきました。


写真)一般社団法人ママの孤立防止支援協会 代表理事 三浦りささん


資料:子育てママが感じる孤立感の実態

まず「ママの孤立」とはどんな要因から発生するものなのか、またそのことが子どもに与える影響について発表いただきました。「ママだから頑張りなさい」「ママなんだからしっかりしないと」「みんなやってきているから」という圧のある社会風潮が色濃く残る日本においては、弱音や不安、迷いを声に出すことができないママがどんどん孤立していきます。

資料:子育てママが感じる孤立感の実態

育児に心理的負担を感じていてもそれを伝えると「母親失格」という烙印を押されてしまう不安から誰にも助けを求められず、必要な支援を受けることもできなくなり虐待等子どもが傷つく痛ましい事件・事故につながる危険性が高くなります。

「ママが弱音を吐いて頼れる社会」として不安なママの声に耳を傾け、手を差し伸べることができる優しい社会形成が子どもの健全な育ちにも良い影響を与えると思います。

三浦さんは、今まで子どもが亡くなった悲しい虐待事件において、ママは大変さを声に出していたが、「お母さんだから頑張りなさい」という声に黙って抱え込むしかできなくなっていった事実から、「ドットリボン」の普及活動を推進してこられました。

資料:子育てママが感じる孤立感の実態

ママの孤立を防止し、苦しいときには「助けて」と声に出すことができる場所、必要な支援につながることができる場所を確立し普及することが、子どもたちを守るために重要だというご提言は、まさにその通りだと思います。

そしてこのドットリボンの想いは、こども庁が掲げる「子どもを真ん中に置いた社会づくり」を実現することができ、子どもたちの健全な育ちを守ることに繋がるというお考えから、こども庁の政策シンボルに掲げてほしいとのご提言もいただきました。

資料:子育てママが感じる孤立感の実態

またママの孤立防止のための実施体制案として、「ママの声を聴く場」を全国自治体に設置し孤立防止の窓口・ママの居場所をつくることを目指していきたいというお話もございました。

この窓口から保健師・助産師やこども支援センターなどとパートナー連携を図り、妊娠中から気軽に話ができる場所を確保し、子どもたちのために子育て当事者を孤立させない社会を作ることの重要性を主張くださいました。

資料:子育てママが感じる孤立感の実態

伊達市のネウボラ事業は、大変素晴らしい先進事例です。このような地方自治体やNPO等の先進的な取り組みをどう横展開していくか、ということは、こども庁の非常に重要なミッションです。予算や人員の部分も合わせて、国が担保していくことが必要だとしっかりと受け止めました。

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