2021.12.3
スコットランドの初代首相、元教育大臣らと「こども政策」について議論しました
写真)左下:スコットランドの初代首相のマコーネル議員、右上:イングランドの元教育大臣トゥイッグ議員
11月23日、スコットランドの初代首相のマコーネル議員(Lord McConnell MP)と、イングランドの元教育大臣であるトゥイッグ議員(Stephen Twigg MP)、ラウトン議員(Tim Loughton MP)と「こども庁やこども政策」に関する意見交換を実施致しました。
私から日本のこども庁構想について説明したところ、みなさん、大変興味をもってくださり、また、こども政策の先進国でもある英国の知見や経験を学び、大変意義深い議論になりました。
私からの3つの質問について、簡単にまとめました。
質問1:
日本は国連の子どもの権利条約を批准しているが、こどもの権利を包括的に守る法律がないので、こども基本法やこどもコミッショナーが必要だと思っている。先日もスコットランドのコミッショナーであるブルースアダムスさんに直接話を聞いたが、英国では、政府はこどもコミッショナーの勧告をどれだけ守らなければいけないのか。コミッショナーの権限について教えてほしい。
回答:
<マコーネル初代スコットランド首相>
私は、2001年から2007年までスコットランドの初代首相を務め、昨日は国会議員に就任し20年でした。教育省大臣も務めた経験もあり、子どもたちの支援と紛争下の国際開発に最も関心を持っています。
私がコミッショナーをつくった経験者を踏まえ、質問について話をしたいと思います。日本での直面している、児童虐待・自殺・産後うつ・いじめ・幸福度等の問題は、先進国でも誰しも抱える問題です。それはコロナでより深刻になっています。課題に共通する要素には、尊重されて取り扱われていない子どもの権利、政府による調整と一貫性の欠如、困難な状況にある子どもたちの不十分な成果です。
スコットランドでは1999年に「子どもの癒しのシステム」をつくっています。これは、すべての政策の判断材料にこどもを中心におく、という制度です。このシステムは現在も導入されており、いくつかの恩恵をもたらしていますが、子どもたちを支援するためには、さまざまなレベルの政府や各省庁にわたって、より幅広いシステムの一部とする必要があります。この制度では地方と政府の一貫性を持たせる必要があります。
私が首相の時には、毎年32の地方自治地を集めたイベントを開催しました。そのイベントでは、社会福祉と教育の責任者、警察等、関係各所のディレクターレベルの人材が一同に参加してもらい、子ども達への支援をどのように統合していくかを話し合っています。
また、こどもコミッショナーも立ちあげました。今はブルースアダムスさんがこどもコミッショナーです。イングランドとスコットランド、ウェールズ、ノーザンアイランドでは、こどもコミッショナーの制度は異なり、それぞれメリットとデメリットがあります。個人的な意見では、最近のイングランドのコミッショナーである、アンロン・フィールドさんがこどもコミッショナーができて以来の最適任者であると思います。私から彼女に連絡をとって、山田さんに連絡するようにするように話を通し、イギリスと日本のカンファレンスで、イギリスの経験をはなす会議を持ちたいと思います。こども庁は素晴らしいイニシアチブに期待します。
<イングランドの元教育大臣トゥイッグ議員>
省庁の縦割り・国と地方自治体の横割り・周産期や就学前後の年代割の問題はイングランドでも同様で、同じ問題を抱えています。
こどもコミッショナーはイングランドなど4つの地域で分けて行っていいます。2004年の子ども法で設立されました。その時私は、ちょうど教育省大臣でした。そして、2014年にこの子ども法が強化されました。これは、コミッショナーを個別の立場で強化すべきであるとの意見を反映したものです。そして、2014年の法律は、子どもたちの権利の保護にさらに重点を置いたものとなりました。その時のポイントは2004年は労働党が主導し、2014年の改正は保守党が主導して成立いるということです。この子ども法案は超党派でコンセンサスをとって幅広く支持される形で進めてきました。
質問2:
政府のこども政策を担う調査権はどこまであるのか?こどもの命に関わる重大案件の際は、政府が地方自治体や個別の事案に調査権を行使できるのか?
回答:
<イングランドの元教育大臣トゥイッグ議員>
イングランドとスコットランド、北アイルランドと状況違うが、イングランドは個人には介入しません。貧困や生活について取り扱っています。
しかし、イギリスには、オフステッドという仕組みがあります。(注:「Ofsted」=各教育機関が教育の質・生徒のニーズを満たしているか等を公正に評価する監査機関、教育機関はもちろん、保育園等の幼児教育施設から、チャイルドセンターなどの子ども関連施設まで、すべてが監査の対象。監査の結果は公開され、オンラインで全世界から検索・閲覧可能。参考URL: Find an Ofsted inspection report)
いじめは、私が教育省大臣大臣だった20年前、非常にひどい状況でした。対策としては、いじめの認知あげる、先生の教育を徹底し能力を上げる、ガバナンスをあげることです。いじめられた子どもが、どこに相談行ったらいいかが分かるシステムを整えました。オフステッドを活用し、その専門の部門があります。
また、オフステッドは通常、教育の標準監査をおこない、テストや読み書き算数の進捗を見ているものですが、2年前に新しい枠組みを取り入れるようにしました。それは、いじめを含む学生の態度や振る舞いをみる枠組みです。また、個人ではないが、学校がどのようにいじめをどう解決しているか、学校としてどのように効果的に活動をしているか確認をします。学校ではガバナーが教員を管理しますが、オフステッドでも子どもをみるための監査のシステムが出来上がっています。
写真)左下:スコットランドの初代首相のマコーネル議員、右上:イングランドの元教育大臣トゥイッグ議員
質問3:
日本では、デジタル庁と関係省庁が連携し、こども見守りシステムを作ろうとしていいます。各所にある子どもの情報連携する仕組みです。子どもに何か問題起こったときの情報連携はある程度あるが、探知は難しい。こどものSOSを探知するシステムはどうしたらできるのか?現実的に行っている効果的なものがあるか?
回答:
<イングランドの元教育大臣トゥイッグ議員>
これは、非常に重要な視点です。縦割り問題は、イングランドでも大きな問題です。特に、教育担当とソーシャルサービスの縦割り問題です。これを解決するために、子どものサービス部署を地方自治体に置くことを行いました。担当が教育畑か福祉畑かで違いはありますが、その専門性を取り入れることで問題を解決してきました。しかし、保健と教育の縦割りはまだ解決できていません。例えば、自閉症の子どもの学校の入学相談などは、まだ分かりやすくなったとはいえません。
子どもに関する政策や組織は改革が必要だが、同時にリソースと投資が必要です。資金も必要ですが、資金だけでもうまくないので、システムを一緒につくっていくことが必要です。
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イギリスでも、縦割り・横割り・年代割りの課題や、教育と福祉の連携など同じ課題にぶつかり、解決しようとしていることに驚くととともに、各国との連携や経験から学ぶことの必要性も深く感じました。
引き続き、コミッショナーの件やDBSについても学んでいきたいと思います。
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■山田太郎略歴
参議院議員(2期目)。表現の自由を守るために国会内外で活動を行う。表現の自由を守る会代表。
◇経営者として
・ネクステック株式会社 代表取締役社長(CEO・創業社長)
・パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション米国本社副社長(米国NASDAQ上場企業)等
◇教育者として
・東京大学 大学院工学系研究科 非常勤講師
・早稲田MBAスクール客員准教授(早稲田大学 大学院商学研究科ビジネス専攻)
・東京工業大学 大学院社会理工学院研究科 特任教授 等
◇政治家として
・参議院議員(2期目)
・内閣委員会 委員
・政府開発援助等に関する特別委員会 委員
・国民生活・経済に関する調査会 理事
・議院運営委員会 委員
・議院運営委員会委員図書館運営小委員会 委員