2021.9.15
「こども庁創設へ」経済界からも大きな後押し
写真)完全オンライン開催で実施した勉強会の様子
9月1日、私(山田太郎)が事務局を務める第20回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。
今回は関西経済同友会子育て問題委員会の小坂肇共同委員長(株式会社りそな銀行 シニアアドバイザー)、上田理恵子共同委員長(株式会社マザーネット 代表取締役社長)を講師に迎えました。
企業・経営者というまたこれまでとは異なる視点から、子育て支援を「成長戦略」としてとらえることの可能性という新たな考え方について議論しました。
写真)司会を務める自見はなこ参議院議員と私(山田太郎)
■「子育てと仕事の両立」を阻む要因
現在の日本の世帯構造は、80年代後半以降共働き世帯が主流となりました。しかし、妻・夫の家事・育児関連時間や男性の育休取得率を見ると、世界を比較しでも妻の家事・育児時間が多いことが分かります。
マザーネットの上田さんからも「長く社会問題とされている待機児童問題や、子育て支援の内容への政府支出の低さ(日本GDP比1.9%。OECD平均の2.1%にさえ届かない)が子育てと仕事の両立を阻んでいる要因のひとつだ」とお話がありました。
題名:6歳未満の子どもをもつ妻・夫の家事・育児関連時間(1日当たり)-国際比較、出典: 厚生労働省「雇用均等基本調査」
題名:育児休業取得率の推移、出典: 厚生労働省「雇用均等基本調査」
資料)関西経済同友会
では、企業や経営者がもつ「子育てと仕事の両立」を阻む要因はどうでしょうか。
やはりここでも旧来の価値観によるものが大きく、「子育て支援は女性社員のための施策」としてのみ位置付けられていたり、経営者と働き手に認識のズレ(男性育児参画の考え方等)が生じていたりします。またこの旧来的な価値観は「アンコンシャス・バイアス」として深く根付いていることが大きな課題であると捉えています。
資料)関西経済同友会
働き手にとっても、やはりこの価値観は諸外国と比較しても強いのではないかと見て取れるのが、「男性の育児・家事参画率の低さ、時間の短さ」と「男性が希望しても実際には育休の取得率が進まない(育休取得率2020年:男性12.65%、女性81.6%)」現実に表れています。諸外国と比較した時の育児・家事参画率は極端に低い数値となっています。
資料)関西経済同友会
前述した「6歳未満の子どもをもつ妻・夫の家事・育児関連時間(1日当たり)-国際比較」のグラフからは、諸外国と比較して日本は育児・家事関連に多大な時間をかけているということが読み取れます。
マザーネット上田さんからは「公的サービスや家族以外の人に頼むのではなく、“家のことは自分たちが手をかけて行なうべき”という日本人らしい考え方から来ているのではないか」と推察されていました。
また男性が育休を取得しなかった理由についても、以下のようなデータがあり一般的な浸透・具体的な実践には至っていないことがわかります。
題名:育児休業制度を利用しなかった理由
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(平成29年度)
■「子育てと仕事の両立」実現への糸口
前述のような状況から、「子育てと仕事の両立」を実現する糸口は何か、こちらも日本の社会全体、企業・経営者、そして働き手の三者の目線から分析をされています。
資料)関西経済同友会
資料)関西経済同友会
資料)関西経済同友会
これらは全て、それぞれの家族のwell-being向上に寄与していきます。
■働き手が「子育てと仕事の両立」のために求めているもの
社員が、仕事と子育ての両立を含む「well-being」の達成のため、そもそも何を求め、何に困っているかを明らかにする必要があるとして、関西経済同友会子育て問題委員会では、有識者ヒアリングおよび会員企業社員・管理経営者895人へのアンケート調査を実施されました。
このアンケート調査により、管理経営者・一般社員ともに男性自身が「もっと育児をしたい、育児の比率を高めたい」と回答しました。(育児20%/仕事80%(管理経営者)、育児40%/仕事60%(社員)→ 理想:育児50%/仕事50%)
また管理職・経営層の両立への価値観については、男性の育児参画や女性の社会進出などに関する「進歩的」な考えが普及しつつありました。このことは、意識啓発から具体的実践を推進していくフェーズに変わってきたものだと分析します。
働き手が子育てと仕事の両立で困っていることの上位は以下2点でした。
1位「緊急時(子どもの病気、出張など)に頼れる人やサービスがない」
2位「育児を今より優先したいが(せめて育児50%/仕事50%)キャリアが不安」
こうした結果から、「転勤への配慮」や「テレワーク」、「民間学童保育への利用補助」、「育児サービス利用費用の税控除対象化」などの支援策が必要とされていることも明らかとなりました。
題名:必要とされる両立支援制度、既存の両立支援制度
出典:関西経済同友会「会員企業社員・管理経営者(n=895)へのアンケート調査」
■今後の子育て支援のあり方
関西経済同友会からは「国は「子育てと仕事との両立」の意識啓発ではなく具体的な制度を整えることで、企業の子育て支援策の後押しに取組み、well-being向上の実現を支えていくべきである」との強い要望がありました。
具体的には「育児サービス等を利用した際の料金を企業が負担した分は、働き手本人にとっての課税所得となること」「保育所は4月入所しかできない」という問題についても早急に見直していきます。
また、4月入所問題については、入所できなかったその間の保障をする等の先進的な取り組みをしている高槻市などの先進的な動きも捉えておりますので、先進事例の横展開が必要だと考えています。
緊急時、特に子どもが病気の時や夏休み等の長期休みに頼ることができるサービスの不足は、勉強会でも多数ご指摘をいただき、大きな問題として捉えています。また待機児童問題は保育所のみならず、小学校就学後に学童保育が満員で利用できず行き場を失ってしまい、仕事を辞めざるを得ない方が少なくないという課題も改めて浮き彫りとなりました。
企業のリーダーシップや柔軟性を発揮し、男性の育児・家事参画や女性活躍の推進を目指している活動は大変勉強になり、刺激をいただくものでした。子育て環境を、経営者の目線、子育て中の働き手目線、子どもの目線と多方面から問題として捉え、子どもを守るための仕組みを整えていくことは、ひいては日本経済・社会が持続的な成長をしていくためにも必要不可欠です。
経済界からの大きな後押しを力に、「こども庁」創設に向けた議論を推進していきます。