2025.3.28
ベビーライフ事件!国、東京都の最新情報(2025年)
ベビーライフ事件によって海外に渡った日本人のこども174名は、2025年3月の時点で未だ安否確認ができていません。私は一貫して、「こどもたちの安否を早急に確認するとともに、こどもたちの出自を知る権利を保障する必要がある」ということを強く主張しています。この問題は決して風化させてはなりません。
また、最近発覚したミャンマーでの特殊詐欺事件では、日本人の高校生が巻き込まれていました。国際養子縁組を隠れ蓑にして日本人のこどもが海外に連れ去られても、日本政府がその安否すら確認できない現行制度は大きな問題です。日本人のこどもをどう守るのか、まさに政治・政府の姿勢が問われている案件だと考えています。最新情報と私の考えについて、まとめました。
〇ベビーライフ事件とは?
改めて、ベビーライフ事件の概要を振り返ります。ベビーライフ事件とは、特別養子縁組をあっせんする民間団体「ベビーライフ」が2020年7月に突然事業を停止した問題で、団体が2012年から2018年度にあっせんした約300人のうち、半分以上の養親が外国籍だったという事件です。これは、読売新聞がハーグ国際養子縁組条約の締結国のデータをつぶさに調べ上げたことで判明した数字です。
私は、2021年3月の事件発覚当初から、この問題について国と東京都に何度も直接確認してきました。その当時、以下のスライドの通り、国ではどこの省庁も責任を負っていないのが実態でした。
当時、条約や出国を所管する外務省に確認したところ、「ハーグ国際養子縁組条約」を締結しておらず国際養子縁組の件数は把握していない。出国記録も把握していない。」という回答でした。ならばと、法務省と最高裁判所にも確認しましたが、家庭裁判所での国際養子縁組の許可件数を把握していない、という事実が判明しました。

〇最新情報
過去のやり取りの詳細は、こちらをご覧ください。以下からは、2025年2月以降で、関係省庁に複数回確認した最新の情報です。

質問1:
東京都が「ベビーライフを通じて養子縁組された養親・養子への支援について」というページが公表した日時、引き継がれた情報422件のうち養親が外国籍だった件数、情報提供が行われた件数、在留届が出されていたのは何件か。また、こどもの障害の有無は把握しているか?
回答:こども家庭庁(厚労省から所管が移管されています)
令和3年9月から公開され、引き継がれた情報の209件が外国人だった。HPを経由して情報提供された件数は、2月12日時点で37件、外国からの情報提供対応は1件。養親の国別は東京都として把握はしているが、公表していない。在留届については把握していない。こどもの障害の有無も把握していない。
質問2:養親が外国籍だった174人のこどもの安否確認は取れているか?
回答:こども家庭庁
東京都もこども家庭庁もこれまで個別の安否は確認していない。個人情報の問題もあり、なかなか個別には難しい。
質問3:海外にあっせんされた174人の子の国籍はどうなっているのか?東京都もこども家庭庁も養子が日本国籍を離脱しているか、日本国籍のままかも把握していないのか?個別に把握していないということは、連れ去られた日本人の子が海外にいる可能性も否定できない。こどもたちが、安全に暮らせているのか、邦人保護の観点でも確認する責務があるのではないか?
回答:こども家庭庁
現状は個別の状況は分からない。こどもの日本国籍が離脱しているのか、していないのかは把握していないので、ベビーライフによってあっせんされた子が、まだ日本国籍をもった状態で海外にいる可能性はある。しかし、海外の部分はもう、仕方がないとう言い方をしてしまうとあれですけど、なかなか難しい。
外務省:邦人保護の観点はその通り。
質問4:外務省との協議の結果、領事館ウェブサイトに案内文を掲載していたが、具体的に何件、どのような反応はあったのか。
回答:こども家庭庁
海外からの情報提供は1件。内容は、養子縁組をした児童の出自に関する情報提供依頼だった。
質問5:2021年3月、読売新聞の報道でベビーライフの半数超の養親が外国籍だったことが報道されて以降、国(厚生労働省・こども家庭庁)が東京都とやり取りした日時、回数、内容はどのようか。
回答:こども家庭庁
対面打合せを計2回。令和3年3月29日(月)に第1回目を実施。内容は、団体に対しての許可申請の指導の状況、ベビーライフから東京都に引き継がれた文書の整理状況、引継ぎに向けた指導状況等をテーマにして行った。第2回目は4月28日(水)。内容としては、情報公開があった場合の対応、代表の消息について、あっせん機関から協力があったらどのように対応しているのか等について意見交換。当時の厚生労働省内で実施。
対面以外もメールや電話等で事務的な連絡を取っていたようだが、記録が現時点で残っているものはない。
質問6:東京都はベビーライフであっせんされた子の出自を把握できているのか?
回答:こども家庭庁
ベビーライフからは422件の情報を引き継いでいるが、あっせん法の法規制が及ぶ前なので、情報管理はしていない。平成29年に法律できて、そこからは法令の規定で管理されているので、そこと比較すると不充分かもしれない。その後、行政でも追跡まではしてない。
質問7:得られたこどもの出自に関わる情報は、どのように管理しているのか?
回答:こども家庭庁
出自の管理、情報開示については、東京都の個人情報保護条例にのっとり対応している。
質問8:廃業したベビーライフと東京都との連携体制はどのようになっているか?ベビーライフ元代表とは現在連絡がとれているのか、最新の状況は?
回答:こども家庭庁
令和4年2月、ベビーライフの元代表から東京都に連絡があった。あっせんに係る資料を引き継ぐという連絡だった。その後は分からない。
質問9:現時点で東京都から元代表に連絡を取ろうとした場合、取れる状況か?
回答:こども家庭庁
東京都に確認したが、現時点で連絡が取れるかどうかは不明。
質問10:2021年4月21日の読売新聞の報道で「ベビーライフ海外養親から計2億円受領」との報道がなされているが、この金額については事実か。事実である場合、金額の妥当性についてどのように考えているか?
回答:こども家庭庁
事業活動は法規制前、これについては民間事業者が設定した価格であり、コメント難しい。今は100万円くらいなので、少し高い額だったとは言える。
質問11:空港のイミグレーション(入国審査や出入国管理)で、誘拐など、なにか疑わしい状況がある場合、現行制度で止めることができるのか?
回答:
外務省:現在の制度では、誘拐の場合でもイミグレで止めることはできない。

提供)法務省
法務省:入管庁の方では出入を確認しているのみで、止めることができない。出入国の情報を突き合わせて、日本国民が帰国していないということも、把握していない。
一方で、出国確認の留保はこれまで外国人が対象だったが、日本人も対象となるよう法改正された。しかし、あくまでも、禁固以上の刑に処せられている人が対象です。
質問12:外務省では、邦人保護の観点から言えば、本来日本人であるか、日本人でないかとうことが重要な局面のはず。日本人であれば、どんな事情でも保護する責務があるはずだ。そのためには、海外でその人たちは現地で国籍を取ってるかどうかを把握するのは重要ではないか?
回答:外務省
邦人保護はかなり大事だと思っている。ですので海外に出国する人で3ヶ月以上長期滞在する人については在留届という形で、大使館等に、「今この国にいます」ということを想定で行ってもらうことになっている。
ただ、届け出をされた方が日本に帰ってくるとか、他の国に移動する、あるいは引っ越す時に、場所が変わります、あるいは日本に帰国しますという届け出を最終的に出さずにいる場合もある。国籍変わった場合も別に届け出をされなければ、補足はなかなか難しいところ。在留届を出してないケースもある。
租税の関係で、市区町村が、どこの国にいっていることを把握しているケースもあるが、在留届が前提になっている。在留届のデータベースはあるが、移動や引っ越し帰国の場合もあり、現時点でそこにいるかを保障するものではない。
質問13:外国での申請により、外国籍を取得した場合、日本国籍はどのようになるのか。
回答:法務省
国籍法は、日本国民が帰化等により外国国籍を取得したときは、当然に日本国籍を失うことといている。(国籍法第11条1項)
日本国籍喪失の効果が生ずるためには、外国籍の取得が「自己の志望」によることが必要。「自己の志望」による取得とは、帰化、国籍の回復、国籍取得の届け出その他名称のいかんにかかわらず、外国国籍の取得を希望する意思表示の直接の効果として外国籍が付与されることを意味する。一定の事実に伴う当然の効果として外国国籍が付与される場合には、自己の志望による外国国籍の取得には、当たらず、日本国籍を喪失することはない。
国籍法18条が、15歳未満の者の帰化の申請等については、法定代理人が代わってするものとしていること、戸籍法第140条が、父母又はその他の法定代理人にのみ国籍留保の届け出をすることができるとし、このときの国籍の不留保に子の日本国籍喪失の効果を認めていること等から、未成年者が法定代理人の申請により外国国籍を取得した場合には、自己の志望による外国国籍の取得に当たるものと解されている。
もっとも、法定代理人である父母の一方のみの申請によって子が外国国籍を取得した場合には、適法な法定代理人からの申請とはいえず、自己の志望による外国国籍の取得には当たらない。
質問14:では、15歳以上のこどもが外国国籍の取得しようとするとき、本人が拒否した場合、あとは自己意志が分からない時はどうなるのか?
回答:法務省
親の申請が適法であれば、こどもが拒否した場合や、こどもの意志がわからない場合でも、自己の志望として解釈され、国籍を喪失する。
質問15:
日本人のこどもを守るために、どのように国際養子縁組を把握補足していくつもりなのか?
回答:法務省
積極的に把握はしていない。パスポートを持っていても入管庁で出たことを把握しているだけなので分からない。国際養子縁組でなくても、そもそも届け出しをしていないと把握はできない。例えば、アメリカに国際養子縁組をして帰化したとかも、法務省ではわからない状況。
自主的に在留届と出入国情報を付き合わせることはない。外務省から邦人保護の観点で連絡がこないこともないが、住所を管理していないので、その問い合わせには回答できない。行方不明者の場合は、市町村が警察に行方不明届を出すが、国外にでたかどうかまでは分からない。どういう状況の子かによって対応もかわる。
こども家庭庁:
国際養子縁組の数は把握していない。現行法では、国際養子縁組はこどもの出国日と国籍取得日は帳簿で残してほしいと通知で案内している。記載事項は通知レベルで依頼しているが、法律上の義務ではない。
質問16:
国際養子縁組で不安定な状態になっていることは間違いない。「1993年ハーグ条約」の締結をして、国際養子縁組の情報を国として管理すべきではないか?そうしなければ、国際養子縁組を隠れ蓑にし、15歳未満の子が不当に海外につれていかれる恐れがある。(ベビーライフ事件の174人の子も安否不明のまま)
また、現状の国際養子縁組において、こども基本法第3条3項(すべてのこどもの最善の利益)、4項(家庭と同様の環境確保)が遵守されていると考えているか。
回答:法務省、こども家庭庁、外務省
現在、条約締結を検討する議論はない。
こども家庭庁:
こどもの基本法は理念規定であり、規制のなかで手続きを踏んでもらい養子縁組を結ぶため、環境は確保してやっている。海外養子縁組は法の適用の通則法で養親の方の国の法律が適用される、そこでしかるべき手続きの場合、どんな環境下にいようとも、守られるべき。
海外で生活する子を守るのはどういう風に。各種支援策がある。担保されるように配慮されるべき。どう実現するのかツールが難しい。通則法も海外で暮らす子どももしかるべき手続きで担保されているかチェックするのは重要。→ハーグ国際養子縁組はいらないとできない。
質問17:
条約批准のデメリットはあるのか?
回答:こども家庭庁
条約批准のデメリットはとくにない。
御指摘のハーグ国際養子縁組条約については、国内の権限ある当局に子の出自情報の管理・アクセス確保の取組が求められることに加え、同条約の適用を受ける養子縁組のための要件についても定めが置かれていることから、締結の検討に当たっては、関係者の意見も聞きながら、そのような縁組の成立に関する特則の要否、現行の特別養子縁組の運用等への影響をよく見極めていく必要があり、現時点で直ちに実現可能性をお答えすることは難しいものと考えている。
質問18:
こどもの出自を知る権利を保障するための養子縁組の情報管理の必要性について、どう考えているか?
回答:こども家庭庁
今の日本の現行法では、国際的な養子縁組の場合は、こどもの出国日や国籍取得日は記録として残してくださいとうことは、あっせん団体に対して、通知レベルでお願いしている。帳簿の備え付け自体は法律事項で、後に記録するべき記載事項は通知レベルで団体に対してお願いしている。
質問19:
通知レベルで義務ではないことか?
回答:
帳簿にこう書いてくださいということ自体が法律上の義務となっているわけではない。帳簿の備え付けが義務付けられていて、ざっくりした記載事項は省令に落ちている。省令からさらに細かい記載事項を通知で示している。その記載の責務は罰則も含めて及ばない。
○今後に向けて
上記から、国として国際養子縁組の把握、管理体制があまりにもずさんであること、また、国際養子縁組を隠れ蓑としてこどもを連れ去ることができてしまう、連れ去って国籍を変更されれば、日本政府としてはなにも手出しができないという課題も明らかになりました。国内養子縁組においても、国が、こどもの出自を知る権利を保障する仕組みを早急につくっていく必要があります。
私としては、引き続き、ベビーライフ事件で海外に渡った子の安否確認を政府に求めていくとともに、養子縁組の諸課題の解決に向けて、全力を注いで参ります。