2015.6.9

盛り込みすぎ!な安保法制の内容を分かりやすく紐解く!【第44回山田太郎ボイス】

安保法制、まずは3つの主要変更点

山田太郎ボイス用画像

他にも多くの変更点がありますが、まずは大きく3つの状態で何が変更になるかに絞ってみました。上から順に、①日本の存立が根底から脅かされている状態、②遠くで戦争が起っている状態、③紛争が終わっている状態の3つで、それぞれ何が変更になるかをまとめてみました。

上記を見て頂ければ分かるかと思います。安保法制=集団的自衛権と考えている方もいらっしゃいますが、重要な論点ではありますが、あくまでも論点の一つでしかありません。

今の議論はこれらがごちゃまぜ

今、国会で議論されているのは、この3つの状況がごちゃまぜに議論されています。たとえば、どこまでの武器保有を認めるのか、どこまで判断の迅速性が判断されるのかなど、それらの前提となる状況によって議論の中身が全く異なります。これらは、きちんと切り分けて議論しなければならないと思います。

また、個別的自衛権と集団的自衛権の切り分けも出来ていません。個別的自衛権とは日本が直接攻撃を受けた際に反撃を行う権利のことですが、個別的自衛権の話をさも、集団的自衛権のように議論されているケースもあります。

私はまず、こういった言葉の細かい問題ではなく、まずは日本にとってそれぞれ3つのケースで何が必要なことなのかを国民を巻き込んで議論し、その上で現在の法体系と見比べて必要な部分を改正するということが必要だと考えています。今回のように1法案10改正案を一括議論することには無理があると考えています。

日本にできる支援策は、集団的自衛権だけではない!

武力行使であれ、後方支援であれ、軍事的にアメリカを支援するということは、日本がテロに巻き込まれる可能性が高くなります。2004年3月に300名以上の犠牲者をだしたスペイン・マドリード郊外の列車爆発事件は、スペイン軍がイラクに於いて、支援を行った結果おこったものです。軍事的協力だけが、本当に日本がすべき支援なのでしょうか。また、現実的な軍事戦略において、アメリカへの従属の姿勢だけで本当に日本を守れるのでしょうか?

私は、日本という国が持つ「非軍事ブランド」と「平和ブランド」という切り札を使うことで、揉めている各国に対して仲裁を行うなど、別の形で支援することが得策だと考えます。たとえば、アメリカとイスラム諸国の間に入って説得することもそのひとつで、日本の場合、このようなスタンスでアメリカと役割分担することも考えられます。

実際、これまで集団的自衛権を実行しなくても、日本は平和を維持することができました。特に、中東外交における日本の役割は、大きかったといえます。日本の非軍事ブランドと平和ブランドを武器として展開していくことも、考えるべきではないでしょうか。

※この部分の詳しい情報は【第45回山田太郎ボイス】「国内でのテロは?国際支援活動は?失われる「非軍事ブランド」の重さ」で記載しています

まずは自国の防衛から

私は、決して何もするなといっているわけではありません。自国の守りはが完全であるとは思いません。防衛面を総合的に強化するべきです。個別的自衛権の範疇の中で、しっかり日本が侵略されないように日本を守るための防衛をすることは、アメリカがどうであれ、きっちりやらなければなりません。

現状の日本の防衛力を見ると、北方の軍備と比べると、南西方面の守りは弱いといわれています。防衛の課題に対応できていない状況です。まずは、専守防衛ができる状況をしっかりつくり、それでも事態が対処できないのであれば、そこで初めて集団的自衛権の議論をするべきではないでしょうか。集団的自衛権について細かいことを掘り下げる前に、自国防衛の必要性について、もっと議論を展開する必要があると思います。

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●山田太郎略歴(https://taroyamada.jp/?page_id=13)
慶應義塾大学経済学部、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程。
外資系コンサルティング会社などを経てネックステック社を創業、
同社を実質3年半で東証マザーズに上場。その後、参議院議員就任。
東大・東工大・早大などでも教鞭をとり、著書も多数。

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