2022.7.26
中国の大学での名誉教授の肩書や講演、講義を行なっていた経緯について
大臣政務官である私が、中国の大学である北京航空航天大学ソフトウエア学院や清華大学深圳研究生院と関係があり、主に民間時代にそれぞれ名誉教授や講師として講演や講義を行っていた事が、日本の外交防衛上や経済安全保障上、適切なのかどうかご心配する指摘がネットなどにありますので経緯等をご説明いたします。
私は、現在、日本と中国が外交防衛上、経済安全保障上、緊張関係にある事を理解しております。そして、政府の持つ機密情報の取り扱いを厳格に行うべきこと、国内外や官民を問わず、様々な関係者との面談や接触は、細心の注意を払う必要があることを、十分承知しています。その為、大臣政務官に就任した2021年10月以降、中国の政府、企業や大学等関係者と連絡、交流や情報交換等は一切行なっていません。
私は、これまで企業経営をする傍ら、東京工業大学特任教授、早稲田大学客員准教授、東京大学大学院工学系研究科非常勤講師等として14年間、技術経営やアントレプレナーシップの授業を大学等で行ってきました。私の専門は、PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)であり、軍事関係やセキュリティの技術を扱った事はありません。そもそも、その分野に関する知識や知見がありません。
北京航空航天大学と清華大学深圳研究生院では、現地で一度(2006年)、日本国内で数回、講演や講義を行ってきました。北京航空航天大学ソフトウエア学院の「名誉教授」の肩書は、2006年11月に同校での記念講演を行った際に付与された称号であり、私自身が同校の教官や研究員、その他メンバーであるといった事実はございません(名誉教授は、称号であり、正規の教官としての身分はありません)。また、両校のいずれとも共同研究やプロジェクトの共同実施等を行った事実はございません。
もちろん、私自身、中国共産党との直接的関係もありません。(中国は全てが中国共産党配下ではないかという指摘があることを承知しておりますので、「直接的」と表現しました)
両大学での講演や講義の内容等について
北京航空航天大学(あらゆる理系分野を扱う総合大学)では北京の本校にて2006年に一度だけ講演し、清華大学深圳研究生院(北京にある清華大学本校ではなく、深圳に拠点を置く一般向けMBAスクール)では2回ほど現地での授業を行いました。その後、清華大学深圳研究生院から日本に派遣されてきた民間企業の会社経営者に対しては、受け入れ授業も数回行ってきました。講演内容はPLMや日本的経営手法等についてでした。
その後、北京航空航天大学との関係は、同校の校友会(日本にいる卒業生関係者)の依頼で、関係者が2017年6月に日本で開催した「AI&ロボット国際フォーラム」の講演会(デンソー、野村総研などの日系企業も登壇した国内で開催されたAIと民生ロボットのシンポジウム)への参加が最後です。清華大学深圳研究生院との関係は、2019年7月に議員に再選された以降はありません。講義の中身は、全てPLMと日本的経営分野についてでした。
名誉教授の就任の経緯
2006年当時は、日本の企業が盛んに中国に進出していた時期です。私が民間時代に創業した製造業向けコンサルティング企業が大手クライアントの中国進出を支援していた際、当時講師等を務めていた東京大学や早稲田大学と北京航空航天大学との間で交流があった事から、同校の関係者からソフトウエア学院での講演の依頼がありました。当時、当該ソフトウエア学院は、ドイツのERP(民間企業の販売・生産管理の統合システム)ソフトであるSAP社と契約をしたばかりで、ERP開発に取り組んでいました。私自身、米国系コンサルティング会社PWC(プライスウォーターハウスクーパース)社にいた際、そのSAP社ソフトを積極的に開発していた事が評価され、ERPや私の専門であるPLM等関連の講演を行い、それを記念して北京航空航天大学ソフトウエア学院から「名誉教授」の称号を頂きました。しかし、その前後で、当該学部や当該大学の関係者として働いたり、共同研究をしたりした事はありません。その後、北京航空航天大学とは、校友会から、日本での講演を数回頼まれた関係しかありません。前述のとおり、最後の講演は、2017年6月のフォーラム参加でのものになります。
経済安全保障と政務官として
北京航空航天大学は、理系の総合大学で幅広い分野の研究や教育を行っており、私の母校である慶応義塾大学や特任教授を務めていた東京工業大学とも、提携や協定等を結んでおります。その他、日本の様々な大学や研究機関と、現在でも、積極的な交流を行っております。また同校は、日本の大手民間企業とも共同し、様々な研究開発を行っており、JETRO等で多くの成果が紹介、発表されています。
一方、同校は、中国の国防7大学と分類される大学でもあり、一部、軍事研究や開発を行っている部門もあるため、安全保障の観点から同校との特定分野での付き合いは慎重でなくてはなりません。特に日本の経済安全保障への影響は非常に重要な観点で、私も自民党の知財調査会のメンバーとして経済安全保障の議論に加わった2020 年以降、その重要性を理解してきました。そのため、2020年以降は、同校や軍事関係ばかりではなく、一見非軍事分野と思われる分野においても、官民問わず、中国との関係には、特に慎重であり続けています。
デジタル大臣政務官としても、中国関連の企業や研究機関とは距離を取り、就任した2021年10月以降、一切の接触をしていません。そして、今後も、そのような考え方や対応を続けていきます。